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ArtSaltのサイドストーリー

音楽、フリーウェア、WEBサービス、食べものなどに関する日記。トラックバック、コメント歓迎。

定冠詞 the が必要な最上級と不要な最上級

英語の形容詞と副詞には最上級がある。一般的に最上級は定冠詞 the を伴う。しかし稀に the が欠落した文も見かける。なぜ最上級は the を必要とするのか? そして、なぜ the を必要としない最上級があるのか?

grammar
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定冠詞 the が必要な事例。

  • (1 a.) That's the highest mountain in the country.
  • (1 b.) He was the eldest of the three siblings.

(1 a.) は「形容詞の制限用法」と呼ばれるもの。この文の形容詞の最上級に the が必要になる理由は、形容詞の直後に名詞が来るからだ。定冠詞 the を使って "the highest mountain in the country" と記述することによって「同国で一番高い山」が特定される。

では (1 b.) はどうか。これは「形容詞の叙述用法」なので "the eldest" の直後に名詞が来ない形だ。言い換えると、定冠詞 the が形容詞 eldest を修飾している形だ。英語を学んだ者なら誰もが一度は疑問に思うはずだが、なぜ冠詞が形容詞を修飾できるのだろうか? 考えてみれば不思議な話だ。

しかし (1 b.) の eldest の直後に名詞 sibling を置いたらどうだろうか? これなら定冠詞 the は eldest を修飾するのではなく sibling を修飾する格好になる。

以下にまとめよう。

  • (2 a.) He was the eldest of the three siblings.
  • (2 b.) He was the eldest sibling of the three siblings.

通常の形である (2 a.) は冗長な形である (2 b.) から eldest 直後の sibling を除去した形であると考えればよい。こう考えれば、「なぜ最上級は the を必要とするのか?」という本記事冒頭の疑問に答えることができる。

定冠詞 the が形容詞の最上級に付くのは形容詞の後ろに名詞が来るからである、という理屈がわかれば、以下 (3 a.) の文で the が不要になる理由もわかる。

  • (3 a.) The lake is deepest here. (湖はこの部分が一番深い。)
  • (3 b.) *The lake is the deepest lake here. (この湖はこの地域で一番深い湖だ。)

他方 deepest の後ろに名詞を置いた (3 b.) は文法的には100%正しいが (3 a.) とは意味が全く異なる。

(3 a.) のような形について「表現のための実践ロイヤル英文法」は以下のように説明している。

叙述用法で同一人[物]の性状を比較する場合は、ふつう the をつけない。

「表現のための実践ロイヤル英文法」(綿貫陽、 マーク・ピーターセン著、旺文社)

「ふつう the をつけない」ということは、 the を付ける英語ネイティブも大勢いるということだ。つまり「湖はこの部分が一番深い。」という意味で "The lake is the deepest here." という形を使ってもいい。

これは小さな補足だが、名詞の所有格及び代名詞の所有格 (my, your, his, her, their, its) は限定詞の範疇に入るので、同じく限定詞である the と並ぶことができない。よって下記 (4 b.) の "his the most boring …" という箇所は文法的に誤りであり、 (4 a.) の形だけが正しい。

  • (4 a.) According to her, Prof. Johnson's lecture yesterday was "his most boring ever."
  • (4 b.) *According to her, Prof. Johnson's lecture yesterday was "his the most boring ever."

ここまで形容詞の最上級だけについて述べてきたが、副詞の最上級についてもふれる必要がある。一般的に言って、副詞の最上級に定冠詞 the は不要である。あってもなくても良い。以下の (5 a.) と (5 b.) は両方とも正しい。

  • (5 a.) I like Bach the best.
  • (5 b.) I like Bach best.

副詞の最上級に the が不要である理由は前述した形容詞の叙述用法で説明した理由と同じだ。副詞の最上級の後ろに名詞が仮想的に存在することがありえないからだ。にもかかわらず副詞の最上級に the を付けるネイティブが多い理由は明確ではないが、おそらく形容詞の最上級に the が伴うルールに引きずられる形で定着してしまったのかもしれない。

これは副詞の最上級の問題に関連する小さな補足になるが、 "at least", "in the least", "at most" などの least と most は副詞の最上級ではなく名詞である。ゆえにこれらの無冠詞あるいは定冠詞付きの形に関しては本記事で考察しない。

最後に、本記事を書くにあたって参考にさせていただいた「表現のための実践ロイヤル英文法」から引用。

第19章 比較

228 B 最上級と the

(1) 形容詞の最上級

1. 限定用法の最上級には the をつける。

  • The Sahara is the largest desert in the world.
  • This wrench is the most useful of all my tools.
    ・ useful の次に tool を補って考える。

2. 叙述用法で同一人[物]の性状を比較する場合は、ふつう the をつけない。

  • Venus appears brightest just after sunset.

(2) 副詞の最上級

the はつけても、つけなくてもよい。

  • I remember him [the] most vividly of all my students.

「表現のための実践ロイヤル英文法」(綿貫陽、 マーク・ピーターセン著、旺文社)

229 絶対最上級

最上級を very (とても) の意味で用いることもできる。形容詞を修飾する場合、その後の名詞が単数形であれば、つける冠詞は the ではなく a(n) になり、複数形の名詞であれば冠詞はつかない。また、 most が副詞を修飾している文では、その意味は「とても」なのか「最も」なのかは文脈で判断するしかない。

  • Laurel is a most useful hedging plant because it puts up with dry sites.
    [単数形の名詞]
  • The boys were most eager participants in the training.
    [複数形の名詞]
  • The boys participated in the training most eagerly.
    [副詞を修飾]

「表現のための実践ロイヤル英文法」(綿貫陽、 マーク・ピーターセン著、旺文社)

時制の一致の例外を考察してみる

英語の「時制の一致」とは何か? 大前提として主節の動詞が過去、過去進行、過去完了、または過去完了進行なら従位節の動詞は以下のように変化する。

  1. 現在→過去
  2. 過去→過去または過去完了
  3. 現在完了→過去完了
  4. 過去完了→過去完了

注目すべきは #2 だ。主節の時制が過去なら従位節の時制は過去完了になるのが原則だが、変化させず過去のままでもいい事例があるということ。興味深い問題なので後で詳しく考察する。

時制の一致の例外
不変の真理などを強調する場合
今も当てはまる事実を言う場合
比較を表す場合
歴史上の事実を示す場合

上記のうち、「今も当てはまる事実を言う場合」の具体例。

  • (1 a.) I was told that eventually I would have to have surgery.
  • (1 b.) I was told that eventually I will have to have surgery.

(1 a.) は時制の一致。医者から説明を受けた時点では「将来手術を受けなければいけない」という事実があったわけだ。そして語り手が "I was told…" と語った時点で手術を既に終えているなら、この例文がふさわしい。

(1 b.) は時制の一致の例外。語り手が "I was told…" と語った時点でも「将来手術を受けなければいけない / 手術をまだ済ませていない」のなら、この例文がふさわしい。

以下は最近見かけたロイターの記事。 "will expel" という形が見られる。この記事が書かれた時点では外交官がまだ国外退去していないので記者は時制の一致の例外ルールを適用したのだろう。

Russian Foreign Minister Sergei Lavrov said on Friday Russia will expel British diplomats in response to London's decision to expel 23 staff at the Russian embassy in London.

(Russia's Lavrov says Moscow will expel British diplomats | Top News | Reuters)

上記のうち、「比較を表す場合」の具体例。

  • (3 a.) She said that in the late 1960's crossing the roads of London had not been as perilous as it was then.
  • (3 b.) She said that in the late 1960's crossing the roads of London was not as perilous as it is now.

(3 a.) は、語り手が "She said…" と言った時期と、「昔と違ってロンドンの道を横断するのが危険になった」時期がかなり離れている場合に使う表現。もっと具体的に言うと、語り手の発言が2018年で、彼女の発言が1970年代である場合など。2018年に発言している人から見ると1970年代の発言は "now" ではないので "as it was then" になるわけである。

(3 b.) は、語り手が "She said…" と言った時期と、「昔と違ってロンドンの道を横断するのが危険になった」時期がほとんど同じである場合に使う表現。もっと具体的に言うと、語り手の発言が2018年6月20日で、彼女の発言が2018年6月19日である場合など。2018年6月20日に発言している人から見ると2018年6月19日の発言は "now" なので "as it is now" になるわけである。

時制の一致ルールを適用するべきか否か迷ったら主節の時間と従位節の時間の違いを意識すれば答えを導き出せるかもしれない。

Clocks
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ここまで例文は「表現のための実践ロイヤル英文法」(綿貫陽、マーク・ピーターセン著)に頼ったが、同書の説明だけでは理解が難しい事例も多いのでさらに考察を続けよう。以下の3つの例文はすべて「ロイヤル」の演習本「表現のための実践ロイヤル英作文法 問題演習」(綿貫陽、マーク・ピーターセン著)に掲載されているもの。すべて文法的に正しい。

  • He told me he bought that car for $18,200.
  • He said that whoever arrives late should be fined twenty dollars.
  • If you were to hear him speak, you might think he's a rich man.

まず以下の例文を考察してみよう。

  • (4 a.) He told me he bought that car for $18,200.

これの直接話法は、

  • (4 a'.) He told me, "I bought this car for $18,200."

…である。これを間接話法にするなら従位節を過去完了にして、

  • (4 a''.) He told me he had bought that car for $18,200.

…とすべきであるのは誰でもわかるだろう。だが (4 a.) でも間違いではない。もちろん (4 a''.) でも構わない。もっと正確に言うと、どちらも意味はほとんど同じだ。なぜか? これを理解するために以下の例文を詳しく見よう。

  • (5 a.) He told me, "I loved her."
  • (5 b.) He told me he had loved her.
  • (5 c.) He told me he loved her.

直接話法の (5 a.) は「以前は彼女のことが好きだった」、つまり「今は違う」(彼女が既に亡くなっている / 嫌いになった)ことを暗にほのめかしている。「今は違う」ということを間接話法でほのめかすには時制の一致が起きる (5 b.) が適切である。(5 c.) は「今は違う」感じが伝わらないが、「今は違う」感じを出さずに済む便利な表現であるとも言える。

上記の (5 a.), (5 b.), (5 c.) を下記の (6 a.), (6 b.), (6 c.) と比較してみよう。

  • (6 a.) He told me, "I bought this car for $18,200."
  • (6 b.) He told me he had bought that car for $18,200.
  • (6 c.) He told me he bought that car for $18,200.

「彼は自動車を18,200ドルで購入した」事実は1秒後も1万年後も変化しない。この点が上記の (5 a.), (5 b.), (5 c.) との決定的な違いである。ゆえに (6 b.) と (6 c.) は意味がほとんど同じであり、(6 c.) は正しい「時制の一致の例外」として認められるわけだ。

この事例は以下に引用する「表現のための実践ロイヤル英文法」の解説で説明可能かもしれない。

過去→過去完了

改まった言い方では、原則として過去は過去完了にするが、口語では、意味が混乱しなければ過去のままでもよい。

表現のための実践ロイヤル英文法

次の例文。

  • He said that whoever arrives late should be fined twenty dollars.

これも時制の一致の例外として認められる。これを、直接話法、時制の一致、時制の一致の例外、の順に並べてみる。

  • (7 a.) He said, "Whoever arrives late should be fined twenty dollars."
  • (7 b.) He said that whoever arrived late should be fined twenty dollars.
  • (7 c.) He said that whoever arrives late should be fined twenty dollars.

まず従位節の中にある "should" に関して言うと、これは広い意味での仮定法であると解釈できる。つまり例文は、主節が直説法であり従位節が仮定法である、という構造になっている。よく知られているように、従位節の仮定法は主節側の時制の一致の法則に支配されない。よって "should" は直接話法でも間接話法でも変わらない。

残された問題は "arrives" なのか "arrived" なのか、である。換言すると、動詞は原形のままなのか、それとも過去形にするのか?

(例文の "arrives" は原形ではなくいわゆる「三単現」だが、話をわかりやすくするためにここでは広い意味で動詞の原形と考える)。

動詞の原形には過去、現在、未来を問わない感覚がある。例文で彼が主張しているのは、「いついかなるときであろうと遅れた者は罰金を払うべきである」ということだ。この感覚を強く出すには (7 b.) よりも (7 c.) のほうが優れている。"arrived" よりも "arrives" のほうがふさわしい。

最後に、仮定法に関係する例文。

  • If you were to hear him speak, you might think he's a rich man.

時制の一致、時制の一致の例外、の順に並べてみよう。アスタリスクを付けた (8 a.) は文法的に間違いかもしれない。

  • (8 a.) *If you were to hear him speak, you might think he were a rich man.
  • (8 b.) If you were to hear him speak, you might think he's a rich man.

なぜ (8 a.) ではなく (8 b.) が適切なのか? 以下の「ロイヤル」の解説で理解可能かもしれない。

仮定法の動詞の後にくる従位節中の動詞の時制を決めるときは、話し手が話している現在から見た時をそのまま表し、前の仮定法とは無関係に決める。

I wish I had the information that you need.
「君が(ある情報を)必要としている」のは現在のことなので、need は現在形のままにしておく。
If I had known that you were ill, I would have gone to see you.
「君が病気である」というのは、話している現在から見れば、過去のある時点での状態なので、直説法の過去形にすればよく、過去完了に一致させる必要はない。

表現のための実践ロイヤル英文法

イギリスの地名の大半は第1音節に第1ストレスがある

イングランドにマンチェスターという有名な都市がある。英語の Manchester は何と読むのだろう? ふと疑問に思い、辞書で調べて驚いた。正解は /'mæntʃistə:/ である。ストレスが置かれるのは第1音節なのだ。てっきり第2音節にストレスを置くのだとばかり思っていた。

(注意: ストレスが置かれる場所をアポストロフィー (') で示す)

Manchester
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言語学的に言うと、アイスランド語、ドイツ語、スウェーデン語などゲルマン系の諸言語は第1音節にストレスを置くのが基本だ。英語はこのグループの中にあって例外的にストレスの位置があっちこっちに移動する。これは、イギリスの教養ある人たちが11世紀に始まるノルマン・コンクエスト (Norman conquest of England) の時代にラテン語やフランス語などから思想または神学に関わる語彙を外来語として大量に英語に持ち込んだ結果だ。

古フランス語やラテン語からやって来た高尚な外来語は当初は教会の祭事や学者の論文や役人の書類や政治家の演説などで使われるにとどまっていただろう。それが次第に庶民の日常会話の中に入って来るようになる。だが人名や地名などの固有名詞は外来語から何ら影響を受けない。結果的にイギリスの地名には古い時代の英語の発音と綴りが化石のように生き残ったのだと思われる。

City Mayors: Largest UK towns and cities というWebサイトに人口が多い順にイギリスの都市が並んでいる。ここから上位100都市の地名を抽出し、すべて辞書で参照し、第1音節にストレスを置くタイプがどの程度あるのか調べた。

結果は以下のとおり。

第1音節にストレスを置くタイプ
91都市
第1音節以外にストレスを置くタイプ
5都市
Carmarthenshire, Kirklees, Northampton, Southampton, Wolverhampton
複数の読み方があって、第1音節にストレスを置くことも、第1音節以外にストレスを置くこともあるタイプ
4都市
Aberdeen, Aberdeenshire, Caerphilly, Dundee

100都市のうち91都市の名前が第1音節にストレスを置いて発音される。これは圧倒的な数字と言っていい。

このうち Leeds とか Fife とか Bolton などは第1音節にストレスを置くのが自明な事例だ。それに対して、冒頭の Manchester のように、第1音節にストレスが置かれることが意外に感じられる事例をいくつかあげてみよう。ご覧のように綴りが難しいものが多い。
Gloucestershire, Renfrewshire, Huntingdonshire, Lincolnshire, Manchester, Macclesfield, Middlesbrough

綴りが難しいだけでなく、そもそも読み方がわからない。いや、それ以前に、「こんな長い綴りの語を第1音節にストレスを置いて発音してしまうと、最後のほうまでリズム的に美しく(?)発声できないのではなかろうか?」という疑問が湧いてくる。だがイギリス人たちはそんなことを気にせずに先頭の音節のみを強く発声し、それ以後は弱い声でダラダラと発声するのだ。

これを言ってしまうと実も蓋もないが、英語と日本語はリズム感が全く異なる言語だ。ストレスが重要な働きをする英語。それに対してピッチ・アクセント (pitch accent) が重要な働きをする日本語。この違いと言ってもいい。日本語ネイティブが英語を習得するにはこの違いを理屈としてしっかりと理解する必要があると思う。(体感的に知るのも重要だけど)。

それから、奇妙な発音と言うか、今日の感覚から見ると綴りと発音が一致しない事例をいくつか。
Edinburgh /'edinbərə/, Derby /'dɑ:bi:/, Leicester /'lestə:/
今日の感覚から見ると綴りと発音が一致しないように思える英語の単語は一般的には15世紀から17世紀にかけて起きた大母音推移 (Great Vowel Shift) で説明できるが、ここに並べた事例はそれ以前の問題だ。イギリス人が実際の発音の変化に合わせて綴りを変えるという面倒な作業を怠ったせいでもある。まあ、普通名詞と違って固有名詞の綴りは安易に変えるべきではない、という素朴な感情は理解できないでもない。
あと、イギリス人がアメリカ人にイギリスの地名を読ませる動画(4分27秒)。綴りと発音が対応していない例がたくさん出てくる。これが面白い。アメリカ人でさえ正しく発音できないのだ。これなら日本人がイギリスの地名を読めないのも仕方ない。英語のリスニングが苦手な人でもこの動画の面白さを理解できると思う。
How to Pronounce UK Place Names - Anglophenia Ep 23 - YouTube

イギリスとは対照的に現在のアメリカ合衆国の大半はかつてフランスとかスペインの植民地だったわけで、地名を表す語がフランス語とかスペイン語由来になる。ゆえにストレスの位置が第2音節以後に置かれることが多い。ただしドイツ系やスウェーデン系移民が多く定住した土地の名はイギリスの地名の綴りと酷似しており、歴史学的に興味深い。

地名の読み方に関しては以下のWebサイトを参考にさせていただいた。

このうちYouTubeの WordBox というチャンネルは人口音声なのか本物の人間が発した声なのか判断できない。それぐらい自然な声だ。

「表現のための実践ロイヤル英作文法」の例文をデジタル処理した

「表現のための実践ロイヤル英文法」(旺文社)という有名な本がある。付録として「英作文のための暗記用例文300」なるものがあるらしい。英語を学ぶ人たちならご存じだろうが、この300の例文がJSONファイルとしてWEBで公開されている。(元のデータはPDFとして旺文社のWEBサイトで数年前まで公開されていたらしい)。
300文覚えれば英語がスラスラ喋れる!「英作文のための暗記用例文300」とそのデータ

この「表現のための実践ロイヤル英文法」には姉妹本として「表現のための実践ロイヤル英作文法 - 問題演習」というのがある。文法書ではなく英作文の演習をやるための本だ。実はこちらにも付録があって、約600の例文が収録されている。本家(?)の2倍の量だ。文が少し長い。そして少し難しい。反面やりがいがある。百人一首を覚える要領ですべて暗記したらかなり実力がつくだろう。

この600余りの例文をすべて手動でデジタル処理(?)と言うかデータ入力した。OCRとか使わずに。完全に目視でパソコンで人間(つまり私です)が入力。完全手動による600個の例文データ入力。かなり時間を費やしたけど、まあ、PCのキーボードをパチパチ叩いて書くことも英語学習の一部と言えないこともないので…

表現のための実践ロイヤル英作文法

最終的には汎用的なCSVファイルにした。4番目の列にあるコメントは著者(綿貫陽、マーク・ピーターセン、池上博)によるものもあるけど、自分で書いたのもある。

彼が、仕事を手伝おうか、と言ってくれた。 He ___ help me with the work. He offered to help me with the work. 「…してあげてもいい」の意味を表す場合 offer は to 不定詞を取る。
彼の文体は磨く必要がある。今のところ粗雑すぎる His ___ing ___ needs ___ - ___ present it is too ___. His writing style needs refining - at present it is too rough. need, want, deserve などに to 不定詞が続くと「能動」、動名詞が続くと「受動」になる
来週の月曜日までに宿題を終えたいと願っている I hope ___ my homework ___ next Monday. I hope to finish my homework by next Monday.
少年のうち1人が少女の頭を叩いたと認めた。 One of the boys admitted ___ the girl ___. One of the boys admitted hitting [having hit / to hitting / to having hit] the girl on the head.
アメリカでの体験についてお話したいと思います I'd like to ___ my experience in America. I'd like to talk about my experience in America.
彼はアニーに電話してみたが彼女は電話に出ようとしなかった He tried ___ Annie, but she ___ the ___. He tried calling Annie, but she wouldn't take the call. 'try to call' は「電話しようとする」。
この問題について話し合うのをやめて結論を出すときだ。 It's time to stop ___ about this matter and make ___. It's time to stop talking about this matter and make a decision. 「何かをするために、今やっていることを中断する」と言いたいときは 'stop to VERB'
忘れずに6時に起こしてください。7時までに駅に着かなければならないのです。 Don't ___ to ___ me at six. I have to ___ the station ___ seven. Don't forget to wake me at six. I have to be at the station by seven.
彼女は私に借金していて、私に会うのを避けようとした。 As she ___ money, she tried ___ me. As she owed me money, she tried to avoid meeting me.
猫は車に轢かれるのをぎりぎり免れた The cat ___ ___ing ___ by the car. The cat narrowly escaped being run over by the car.
革命以来多くのことが改善されてきたことは否定できない There is no ___ that many things have been improved since the revolution. There is no denying that many things have been improved since the revolution. 'There's no VERB-ing' (…することはできない)
よく考えた末にメグはケンに2度と会わないことにした。 After ___ it ___, Meg decided ___ to ___ Ken ___ again. After having thought it over, Meg decided not to see Ken ever again.
もっと早くお話しなかったことをお詫びします。 I apologize ___ not ___ing ___ you sooner. I apologize for not having told you sooner. apologize は他動詞で使われることはないので 'I apologize you' の形はありえない
私はドイツに行った、そこで医学を勉強しようと思って。 I went to Germany with ___ to ___ there. I went to Germany with a view to studying medicine there. to 不定詞を使った 'with a view to study' の形にしてはいけない
彼の受賞を祝福した I congratulated ___ winning the prize. I congratulated him on his winning the prize. 'congratulate X on Y' の形。on の代わりに upon も可能だが of は使われない
忘れずに傘を持っていったら彼も濡れることはなかっただろうに He ___ not ___ wet if he ___ to take his umbrella ___. He would not have got wet if he had remembered to take his umbrella with him. take に「持参」の意味を与えたければ前置詞 with を忘れずに
新学科の増設は無期限に延期されているが学部長は来年やってみる価値があると思っているらしい。 ___ of a new ___ has been ___, but the ___ seems to think it would be worth ___ next year. The creation of a new department has been indefinitely postponed, but the Dean seems to think it would be worth trying to do next year. creating には「増設という行為」の意味が強いのでこの文脈では creation のほうが良い。
明日時間があったらハワイ旅行の手配をします。 If I have time tomorrow, I___ ___ the Hawaii trip. If I have time tomorrow, I'll make arrangements for the Hawaii trip. これは仮定法ではなく直説法
地図を持っていたら彼女に貸してあげるのだが。 If I ___ a map, I ___ lend it to her. If I had a map, I would lend it to her.
もしもその店に濃紺色の同じセーターがあったら買ったのだが。 If the shop ___ the same sweater ___ navy blue, I ___ it. If the shop had had the same sweater in navy blue, I would have bought it.
もしも僕が君だったらまずはグレート・バリアー・リーフを訪れるんだけどね。 If ___ you, first I ___ the Great Barrier Reef. If I were you, first I would visit the Great Barrier Reef. 'If I were you' の形は「助言」表現で頻繁に使われる
もし雨が降り出さなかったら野球の試合は1時半に始まったんだよ。 The baseball game ___ at 1:30 if it ___ started raining. The baseball game would have begun at 1:30 if it hadn't started raining.
もしも宝くじで500万円が当たったらヨットを買うんだけどなあ If I ___ five million yen ___ the ___, I would buy a sailboat. If I were to win [If I won] five million yen in the lottery, I would buy a sailboat.
もしも奨学金を受給するなら彼女はたぶんもう1年留学できるのに。 If she were ___, she could probably ___ for ___ year. If she were to receive a scholarship, she could probably study abroad for another year.
もしも証拠がもっとあれば彼を告訴しているよ。 If there were ___ evidence, we ___ him. If there were more evidence, we would charge him.
もう一度挑戦していたら君は成功していたかもね。 If you ___ again, you ___ succeeded. If you had tried again, you might have succeeded.
もし彼女の助言を聞かなかったらたぶん僕はまだカナダに住んでいるだろう。 If I ___ her advice, I ___ probably ___ still living in Canada. If I hadn't listened to her advice, I would probably be still living in Canada. 「もし彼女の助言を聞かなかったら」は過去に対する言及だが、「まだカナダに住んでいるだろう」は現在に対する言及なので帰結節は 'would have been' ではなく 'would be' になる。「助言を聞く」は 'hear…' ではなく 'listen to…'.
もしも急いでいたら最終電車に間に合ったかもしれない If I ___, I ___ have ___ the last train. If I had hurried, I might have caught the last train.
その電車に間に合っていたら今ごろ家にいるだろう。 If I ___ caught the train, I would ___ at home now. If I had caught the train, I would be at home now. 「その電車に間に合っていたら」は過去に対する言及だが、「今ごろ家にいるだろう」は現在に対する言及なので帰結節は 'would have been' ではなく 'would be' になる。
あなたの電子メール・アドレスを知っていたらメールを送っていたのですが ___ we known your e-mail address, we ___ you an e-mail. Had we known your e-mail address, we would have sent you an e-mail.
問題が起きた場合すぐに我々に知らせてください。 ___ have any problem, let us know at once. Should you [If you should] have any problem, let us know at once. 条件節に should があるときは帰結節に命令表現を使える
彼の話すのを聞くと金持ちの人と思うかもしれないね ___ him speak, you might think he's a rich man. To hear him speak, you might think he's a rich man. 'To hear…' で「もしも…を聞けば」という条件節になる
もう少し運が良かったらチャーリーは失業しなかったかも。 ___ luck, Charlie ___ not ___ lost his job. With a little more luck, Charlie might not have lost his job. 'with…' (もしも…があったら) を使った仮定法
コンピューターがなかったならあの問題を解決するのは不可能だっただろう ___ a computer, it ___ probably ___ impossible to solve that problem. Without a computer, it would probably have been impossible to solve that problem. without… (もしも…がなかったら) を使った仮定法
そのテレビゲームを買うお金があればいいんだけどなあ I wish I had the money to buy that ___ game. I wish I had the money to buy that video game.
砂浜がきれいでしたよ! もっと長くそこに滞在できれば良かったのですが。 The beach was beautiful! I wish I could ___ there longer. The beach was beautiful! I wish I could have stayed there longer.
懐中電灯を持ってきていればなあ If ___ we had brought a ___. If only we had brought a flashlight. 'If only' = 'I wish'
そろそろ子供たちが寝る時間だ It's ___ the children ___ to bed. It's about time the children went to bed. 'It's about time that…' を使った仮定法。類似表現 'It's high time that…' は苛立ちがほのめかされる感じ
天気がもっと良かったらスキーに行けたのにね。 If the weather ___ better, I could have gone skiing. If the weather had been better, I could have gone skiing.
200年前だったら手紙がニューヨークに着くのに数ヶ月かかったはずだ ___ ago, it would have taken months for ___ to reach New York. Two hundred years ago, it would have taken months for a letter to reach New York. 'Two hundred years ago' がif節の機能を果たしている
この机はまるで使われたことがないかのように見える This desk looks ___ it has never been used. This desk looks just as if it has never been used. 仮定法に限らず直説法でも 'as if' を使える。 'just' の位置に注意
彼女が社長になったら喜ぶ人が多いだろう。 Probably many people would be happy if she ___ become president of the company. Probably many people would be happy if she were to become president of the company. 社長になる確率が高いと思うなら直説法、確率の高さを問わなければ仮定法にする
そのローンがなかったら我々は破産しただろう If it ___ for the loan, we ___ have ___. If it had not been for the loan, we would have gone bankrupt. 'If it had not been for…' (もしも…がなかったら) という仮定法過去完了の慣用句。仮定法過去なら 'If it were not for…' になる
万が一誰かが訪ねてきたら会議中だと伝えてください。 If anyone ___ ask ___ me, tell them I'm ___ a meeting. If anyone should ask for me, tell them I'm in a meeting. 条件節に should があるときは帰結節に命令表現を使える
その会議に到着するのが遅かったらどうなるかわかっていたはずだ You ___ have known ___ happen if you ___ late ___ that meeting. You must have known what would happen if you arrived late for that meeting.
「仕事の進み具合はどうですか?」「この上なく順調です」 "___ is your work ___ing ___?" "It ___ better." "How is your work coming along?" "It couldn't be better." 'Couldn't be better' は「最高です」を意味する慣用表現
「お茶を1杯いかがですか?」「いただきます」 "Would you like to have a cup of tea?" "Yes, ___." "Would you like to have a cup of tea?" "Yes, I would." 'Yes, I would' と省略するのが普通
もしも探す時間がもっとあったらもっと良いプレゼントを見つけたかもしれない。 If I ___ time to ___, I ___ a nicer present. If I had had more time to look, I might have found a nicer present. 過去の事実に反する仮定を表す条件節だから 'had had…' である
もしも電車で読む本が欲しいと思っていたら自分のものを持ってきたのだが。 If I ___ a book to read on the train, I ___ one of my own. If I had wanted a book to read on the train, I would have brought one of my own. 過去の事実に反する仮定を表す条件節だから 'had wanted…' である
どうしてあなたは考えが変わったのですか? What ___ you ___ mind? What caused you to change your mind?

「表現のための実践ロイヤル英作文法 - 問題演習」のデータは「表現のための実践ロイヤル英文法」と違って旺文社の公式WEBサイトで公開されているわけではないので引用はごく一部に限定しておく。Quizlet とか Anki でこっそりシェアするつもりもない。

あとはスマホで動くフラッシュ・カード(単語帳)系のアプリで隙間時間を活用して毎日学習あるのみ。

フラッシュカードのスクリーンショット

フラッシュカードのスクリーンショット

フラッシュカードのスクリーンショット

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abbreviation, acronym, initialism の違い

GoogleでWEB検索しても要領を得ない説明が多いので abbreviation, acronym, initialism の違いを自分で分類して説明する。絵で描いたほうがわかりやすい。

abbreviation, acronym, initialism の違い

  • 「省略形」を英語で abbreviation と言う。
  • abbreviation という大きな括りの中に acronyminitialism という2つのグループがある。
  • Acronym: 1個の語として発音する省略形。例としては OPEC など。
  • Initialism: 複数の語の先頭1文字を並べてそのラテン文字ひとつひとつを発音する省略形。例としては CIA など。
  • abbreviation ではあるが acronym にも initialism にも含まれない省略形もある。例としては Dr. など。
Abbreviation
省略形の総称
例) PA, Dr., NASA, COBOL, scuba, radar, U.S.A., FBI, GPS, NHK
注) ここで言う PA は Pennsylvania の省略形である。
Acronym
1個の語として発音する省略形
例) NASA, COBOL, scuba, radar (/'nɑ:sə/, /'koubɔ:l/, /'sku:bə/, /'reidɑr/)
注) COBOL は common business oriented language の省略形、 scuba は self-contained underwater breathing apparatus の省略形、 radar は radio detecting and ranging の省略形である。
Initialism
複数の語の先頭1文字を並べてそのラテン文字ひとつひとつを発音する省略形
例) U.S.A., FBI, GPS, NHK

蛇足になるかもしれないが、 UFO (unidentified flying object) は英語圏では /ju: ef ou/ と読む。「ユーフォー」ではない。ゆえに UFO は acronym ではなく initialism である。

オーストラリア訛りは大母音推移とは正反対の方向に進化したもの

最近気づいたことがあるのでブログに書いておく。英語のオーストラリア訛り (Australian accent) 。もっと広く言えばニュージーランド訛りを含むオセアニア訛りと言ったほうがいいかもしれない。具体的には以下のような母音の訛り。

  • エイ -> アイ (e.g. day -> die)
  • アイ -> オイ (e.g. bay -> boy)
  • イー -> エイ (e.g. meet -> mate)
  • オウ -> オイ (e.g. row -> Roy)
音声の実例を貼っておく。男性はいわゆるアメリカ英語だが女性のほうはおそらくニュージーランド英語を話している。 "Where shall we meet?" が "Where shall we mate?" のように聞こえてしまう。(この音声ファイルは以前「 EIGODEN 英語伝」に置かれていたが現在リンク切れになっている)。
ニュージーランド英語の例 (MP3)

で、ふと思ったのは、オセアニアの英語の母音変化は14世紀にイングランドで始まった大母音推移 (Great Vowel Shift, GVS) とちょうど正反対であること。

vowel tongue position
Courtesy of Wikimedia Commons

ここで大母音推移を大雑把に整理しておこう。

英語において1350年頃から1600年頃にかけて起きた長母音の変化。最も舌の位置の高い/iː/ /uː/は/ei/ /ou/と二重母音化した。他はそれぞれ舌の位置が一段階高い位置に変化し、/eː/→/iː/, /ɛː/→/eː/, /oː/→/uː/, /ɔː/→/oː/, /aː/→/ɛː/に変化した。

大母音推移(だいぼいんすいい)とは - コトバンク

name, house などの語尾の -e は大母音推移が始まる以前に黙字になっている。言い換えると2音節の語が1音節になり、数百年後さらに大母音推移したわけだ。たとえば name は /na:me/ → /na:m/ → /nɛ:m/ → /neim/ 、 house は /hu:se/ → /hu:s/ → /həus/ → /haus/ とそれぞれ変化。

  • 長母音 [aː] →二重母音 [eɪ] (e.g. name 「ナーメ」→「ネイム」)
  • 長母音 [eː] →長母音 [iː] (e.g. feel 「フェール」→「フィール」, keep 「ケープ」→「キープ」)
  • 長母音 [εː] →長母音 [iː] (e.g. eat 「エート」→「イート」)
  • 長母音 [iː] →二重母音 [aɪ] (e.g. time 「ティーメ」→「タイム」, find 「フィーンド」→「ファインド」)
  • 長母音 [ɔː] →二重母音 [oʊ] (e.g. home 「ホーメ」→「ホウム」, goal 「ゴール」→「ゴウル」)
  • 長母音 [oː] →長母音 [uː] (e.g. fool 「フォール」→「フール」, food 「フォード」→「フード」)
  • 長母音 [uː] →二重母音 [aʊ] (e.g. now 「ヌー」→「ナウ」, house 「フース」→「ハウス」)

大母音推移を表にすると以下のようになる。

Word Vowel pronunciation
Late Middle English
before the GVS
Modern English
after the GVS
bite /iː/ /aɪ/
meet /eː/ /iː/
meat /ɛː/
mate /aː/ /eɪ/
out /uː/ /aʊ/
boot /oː/ /uː/
boat /ɔː/ /oʊ/

Great Vowel Shift - Wikipedia

大母音推移を解剖学的に一言で説明すると、舌の位置が上に少し移動する現象だ。オセアニア英語に見られる母音の変化はそれとはちょうど正反対。舌の位置が下に少し移動するわけだ。もう一度オーストラリアとNZの人たちの母音の訛りを見てみよう。

  • エイ -> アイ (e.g. day -> die)
  • アイ -> オイ (e.g. bay -> boy)
  • イー -> エイ (e.g. meet -> mate)
  • オウ -> オイ (e.g. row -> Roy)

一般的に言って母音が訛って変化するときは舌の位置が下がるほうが自然である。舌の位置を高くするというのは舌の筋肉を緊張させ、酷使することであり、逆に舌の位置を低くするというのは舌の筋肉を弛緩(しかん)させることだからだ。よく知られているように大母音推移は英語の歴史を研究する人たちにとって最大の謎である。というのも、舌の位置が下がるのではなく自然の摂理に反して上がるほうに母音の発音が変化を開始したからである。言い換えるとオセアニアの人たちの訛りのほうが通常の変化なのだ。

different than という形の優位性

"different than" という形は文法違反かもしれないが "different from" よりも便利な場合もある。 from は前置詞なので後ろに節(せつ)が来ない。だが than は接続詞なので後ろに節を置ける。比較対象が節なら than のほうが形としてすっきりしていて理解しやすいのだ。

The Book Of Strange New Things: A Novel

よく知られているように、英語の形容詞 different の後ろには from が来るのが普通だが different than, different to の形もある。ただし文法的に正しいのかどうか議論がある。 different than という形の由来に関しては、 differ の語尾が形容詞の比較級の語尾と同じであることに影響を受けて different の後ろに than が間違って(?)来るようになってしまった、という本当か冗談かわからない噂を聞いたことがある。

この噂の真偽はともかく、 different from, different than, different to という3種類の組み合わせに関しては国によって好みが分かれるんだとか。イギリスやオーストラリアなどに比べてアメリカでは different than の形を認める人が多いらしい。

だが、国によって from, than, to の使用頻度が異なるというトリビアを知っただけで満足してはいけないと思う。というのも different than の形のほうが different from よりも適している事例が明らかに存在するからだ。

最近読み始めた "The Book Of Strange New Things: A Novel" (Michel Faber) という小説の中に different than の形が出てきた。これは地球から遠く離れた惑星に牧師として派遣された男を描くSFだ。(日本語版が出版されているかどうかは不明)。

I once read a Science Ficiton story in which a young man traveled to an alien planet, leaving his wife behind. He was only away for a few weeks and then he returned to Earth. But the punchline of the story was that Time passed at a different rate for her than it did for him. So when he got back home, he discovered that 75 earth years had sped by, and his wife had died the week before. He arrived just in time to attend the funeral, and all the old folks were wondering who this distraught young man might be.

若い男が妻を残して他の惑星に飛び立つSFを読んだことがある。男はわずか数週間後に地球に戻る。だがこの話のオチは、時間が男と妻に対して異なる速度で進んだことだ。男が帰還すると地球では既に75年という時間が経過していた。そして妻は先週に亡くなっていた。男はなんとか葬儀に間に合うものの、そこにいた老人たちは彼を見て戸惑うのだった。この取り乱した若い男は誰なのだろう、と。

The Book Of Strange New Things: A Novel by Michel Faber

"Time passed at a different rate for her than it did for him." という文。これは厳密に言えば文法違反だろう。文法至上主義者は言うかもしれない。 different の後ろには than ではなく from が来るべきである、と。

だがこの文を正規の(?)文法に従って from を使って書き直すとなると意外に厄介であることに気づいた。あえて言い換えるなら下の #2 のように "the way" を使って書き直すしかないと思う。まあ、もちろん他にも言い方はあるんだろうけど残念ながら自分の英語の実力ではこれ以外の言い換えは思いつかなかった。

  1. Time passed at a different rate for her than it did for him.
  2. Time passed at a different rate for her from the way it did for him.

なぜこんな面倒なことになるのか? 理由ははっきりしている。#1 の than が接続詞であるのに対して #2 の from は前置詞だからだ。接続詞は直後に節(せつ)を置くことができるが前置詞はそれができない。前置詞の目的語は名詞または代名詞でなければならない。あるいは「限定詞 + 名詞または代名詞」という組み合わせでなければならない。ゆえにここでは way という万能な便利屋さんの出番となるわけだ。

the way を使って言い換える行為にはある種の強引さがある。この強引さが何かに似ていると感じないだろうか? そう、これは語尾に "-ly" が来る形容詞を無理やり副詞っぽく変えてしまう手法の強引さとそっくりだ。語尾に -ly が来る形容詞というのは具体的に言うと friendly, lively, lovely, early など。これらを副詞のように変えるには "in a friendly manner" のような手の込んだ表現にするしかない。(いや、他にも表現方法はあるのかな?)。そしてこの、居心地の悪さ、あるいはぎくしゃくとした感覚は "Time passed at a different rate for her from the way it did for him." の "from the way..." と非常によく似ていると感じる。

もう一つ事例を出す。

  1. Her behavior was different from what I expected.
  2. Her behavior was different than I expected.

これは単純な文なので different than の形が特に理解しやすいとは感じられない。ただし意味が微妙に違う。微妙な違いだが大きな違いだ。

"Time passed at a different rate for her than it did for him." という文は文法に反しているかもしれないが from を使った形よりも直感的に理解しやすく馴染みやすい。つまり different than の形のほうがはるかに便利だと思われる事例が明らかにあるのだ。だが不思議なことに different than のこの優位性に言及している人を日本語Webサイトの中ではあまり見かけない。

Oxford Dictionary が私の問題意識に応えていた。引用しておく。

It has the advantage that it can be followed by a clause, and so is sometimes more concise than different from: compare things are definitely different than they were one year ago with things are definitely different from the way they were one year ago.

Different than は後ろに節を置くことが可能である点で有利である。そして different from よりも簡潔になることもある。 "things are definitely different than they were one year ago" と "things are definitely different from the way they were one year ago" を比較してみよう。

different | Definition of different in English by Oxford Dictionaries

(日本語に比べて)英語は論理的である、とよく言われるけれど、論理性を追求すると難解で複雑になることもあるんだなあ、というのが私の感想。文法的な正しさ云々よりも理解しやすさを選択したアメリカ人たちに感謝したい。

バイキングが来なかったら英語はユーザー・フレンドリーにならなかっただろう

ジョン・マクウォーター (John McWhorter) の "Our Magnificent Bastard Tongue: The Untold History of English" を読んでいる。 Avery という出版社から2009年10月27日に発売された英語史の本。

マクウォーターの主張は以前このブログ「英語が奇妙奇天烈な言語になったのはケルトとバイキングが原因」で少しふれたが、ここで簡単にまとめておこう。英語に強い影響を与えたのはラテン語とフランス語であることはよく知られているが、それに先駆けてケルト語と古ノルド語が文法を大きく変えた、というのが彼の見解だ。ちなみにケルト語というのはウェールズ語、スコットランド語、アイルランド語など、イギリスとアイルランドとフランスのケルト系諸民族の言語であり、古ノルド語というのはスカンジナビア半島などのゲルマン系諸民族が使っていた言語である。たとえば、疑問文の先頭に「意味のない do 」 (meaningless do) を加えるというアイディアは他のゲルマン諸語には見られない英語独自のものだ。マクウォーターによれば、これはケルト語の影響を受けて誕生したルールだとされる。 "Do you really believe him?"

疑問文と否定文における「意味のない do 」がいかにしてケルト語から英語に入ってきたのかを検証する作業も興味深い。だがここでは、バイキングの古ノルド語が英語の動詞または名詞の格変化に影響を与え、最終的には動詞と名詞の格変化をほぼすべて奪ってしまった経緯を中心にマクウォーターの考えを紹介したい。さらに、たびたび他民族に征服されたにもかかわらず他の言語の影響をあまり受けなかった中国語と、他の言語の影響を強く受けた英語の比較。そして「大陸から隔絶された島嶼の言語」という共通性がありながら運命が大きく変わってしまったアイスランド語と英語の比較に関する合点が行く説明も引用しておく。

Our Magnificent Bastard Tongue: The Untold History of English

英語の文法に与えたラテン語の影響

「文末を前置詞で終えるべきではない」という規則が考案されたのは17世紀である。ラテン語は文末を前置詞で終えることがないのだから英語もそれに倣うべきだという理由による。

"Hey, what are you looking at?" 文末を前置詞で終えることが許される言語は非常に珍しいらしい。

「不定詞を作る前置詞 to と動詞の間に副詞などを挿入してはならない」とする考えは19世紀の盲目的崇拝である。これもまた、ラテン語は不定詞を分割しないという事実に基づいていた。ラテン語では不定詞はわずか1個なのだ! つまりこういうことだ。英語の不定詞 "to end" をラテン語で言い表すには terminare という1語で済む。説明終了! 原子がかつてそう信じられていたのと同様に分割不可。

これも意外なのだが、前置詞 to と動詞の間に何か別の語を挿入することが許される言語は珍しいとのこと。

英語の文法は他の印欧語と大きく異なるだけでなく他のゲルマン語ともかけ離れている

フランス語では英語で言う名詞の copy は copie である。動詞の copy は copier 。だが英語のように屈折語尾の大半を失っている言語では名詞を動詞に変換するには何ら特別な道具を要しない。というわけで copy は 単に copy のままでよいのだ。

中国語ほどではないが、動詞が変化せずにその形のまま名詞化したり、逆に名詞が変化せずにその形のまま動詞化する英語の柔軟な点。

"Do we eat apples?" をフリジア語で言うと "Ite wy appels?" だ。これを語順を変えずに英語に変換すると "Eat we apples?" である。意味のない "do" は置かない。噛み跡がついたリンゴを手にしているフリースラントの人たちがいるとしよう。その場面で「何をしているのですか?」と尋ねられるとフリースラント人は "Wy ite appels." と答える。単純に1語ずつ変換すると "We eat apples." である。彼らフリースラント人は英語ネイティブのためにわざわざ「私たちは今この瞬間リンゴを食している過程にある」などとは言わない!!!! 必要とあらばこう言う - "Wy binne oan't iten." (We're on the eating.) 。

フリジア語 (Frisian) というのはオランダのフリースラント地方 (Friesland) で使われている言語。現存する言語の中では英語に最も近いとされる。ここでは疑問文の作り方の違いが言及されている。英語では文頭に意味のない助動詞 do をつけ加えるが、フリジア語では主語と動詞を倒置させるだけ。それからいわゆる「進行形」。フリジア語だけでなくドイツ語でも現在進行形とか過去進行形は明確な形を取らない。これが明確な形を取って表れるゲルマン語族の言語は英語だけらしい。

進行形という相は、インド・ヨーロッパ語族にもともとあった相の形態ではない。現在、インド・ヨーロッパ語族の言語のうち“be+現在分詞”が進行形の意味を持つのは、英語、イタリア語、スペイン語など、ごく少数の言語に限られるし、これらの言語にしても、最初から進行形を使っていたわけではなかった。英語で、“be+現在分詞”が進行形として使われるようになったのは、1800年前後である。“be+現在分詞”という形態そのものは、古英語の頃からあったが、その使用は稀で、かつ、意味も現在の進行形とは異なっていた。

進行形はなぜ使われるようになったのか | 永井俊哉ドットコム

かつて正当とされた表現が今では間違い、かつて下品だとみなされた表現が今では正しい

19世紀の時点で既に英語の文法は完成し、現代のものとほぼ同じだろう、と考えている人は多いだろう。だが当時の文法学者たちは以下のような表現を低級とみなしていた - all the time (上品な人なら always と言いましょう), born in ("born at" と言うのですよ。知らないのですか?), lit (私が何と言ったかわかる? lighted と言ったんですよ), washtub (なぜ washing tub と正しく呼ばないのでしょうね) など。 standpoint は今日の私たちにとってはどちらかと言うと洗練された語のように響くが、19世紀では唾棄されるべき語だった。理由はおそらく「あなたはどこに *立って* いるのですか?」という違和感。

信じようと信じまいと、"have a look" を "look at" の意味で言うのは少し下品であると考えられていた。"the two first" の代わりに "the first two children" と言うのも同様に下品。

上品な言葉遣いが要求される場面では "The house is being built." のような胡散臭い表現は控えることが求められた。19世紀までは "The house is building." が正しい形だったからだ。"stacked, fixed" を現代の私たちが発しているように発音すると語尾を短縮しているとみなされた。正しい発音は /stækt, fikst/ ではなく /stækid, fiksid/ だった。

現在時制で動詞などの接尾辞が3単現に限って活用する言語は極めて稀である。

例外的に、スコットランドとアイルランドの一部では "am not" の省略形 "amn't" が使われている。

英語はヨーロッパの中では性 (gender) を放棄した唯一の印欧語である。

古い英語から新しい英語に変わるにつれて "hithers, thithers" が消滅しつつある。 "Come hither, go thither," そして "stay here, stay there" 。 "Hither, thither, whither" は「動き」を示す動詞と組み合わさって使われた。それに対して "here, there, where" は「動き」を示さない動詞との組み合わせに限定されていた。英語で発せられる質問 "Where's the coffee?" に対してドイツ語で答えれば "Hier." である。だが "Come here!" はドイツ語で "Komon her!" だ。 "Komm hier." などと言ったら非ドイツ語ネイティブであることがバレてしまう。ドイツ人が英語話者の間違ったドイツ語を真似するとしたらこの言い方をするに違いない。ドイツ語には英語の thither に対応する hin, そして whither に対応する wohin がある。加えて、方向を指示する副詞と場所を指示する副詞についてこの種の区別をしないゲルマン語は存在しない。英語を除けば。

わかりにくいと感じる人もいると思うので少し補足。現代英語の here には "in this place" と "to this place" という2つの意味がある。だが昔の here は "in this place" の意味に特化していた。 "to this place" の役割を担ったのは hither である。英語を除くすべてのゲルマン語系の言語は現代でも両者を融合させずに共存させている。

英語は総称人称に特化した語を失った非常に珍しい言語である

ヨーロッパの諸言語は総称人称に特化した代名詞がある。(…中略…)例外的にアイスランド語では「男」を意味する madur が総称人称として代用されるが、同様のことは他のゲルマン語についても当てはまる。つまりゲルマン語では人称代名詞が細かく分かれているわけだ。以下はスウェーデン語の人称代名詞である。括弧内は対応する英語。

jag (I)vi (we)
du (you)ni (y'all)
han, hon, det (he, she, it)de (they)
man (one) 

対照的に英語ではスウェーデン語ほど細かい区別がない。

Iwe
youyou
he, she, itthey
you 

スウェーデン語には総称人称に特化した代名詞 man があるが、英語では you を引っぱり出してきて無理やりその仕事をさせている。たとえば "You have to be careful with these big corporations." というふうに。古英語にも man という総称人称専門の代名詞があった。だが中英語の時代に入ってから数百年後 man は消失してしまった。

総称人称の代名詞と言えば one, we, you, they だが、英語の駄目な点は、それらが総称人称として使われているかどうか曖昧なところ。 "You must come in here." の you が目の前にいる相手のことなのか、それともこの発言は一般論として「あらゆる人はここに入らなければいけません」と言っているのか、区別することが困難な場面がある。英語では総称人称に特化した代名詞 man が消失したが、他のゲルマン系諸語では健在だ。

生き残った have-完了 (have-perfect) と死滅した be-完了 (be-perfect)

ヨーロッパのほとんどの言語では動詞 have と組み合わせて完了の文を作る。たとえばドイツ語で "Ich habe gesprochen." (I have spoken.) という具合に。と同時に少なからぬ言語において動詞 be と組み合わせて完了の文を作る。たとえばドイツ語で "Ich bin gekommen." (I am come.) という具合に。これは古英語の "Lār āfeallen wæs." とちょうど同じだ。これを現代英語にそのまま変換すると "Learning was fallen away." だが意味は "Learning had fallen away." である。

英語でも be-完了はほんの少しだけ生き残っている。 "They're gone!" ただし be に続く動詞は自動詞に限られる傾向があるようだ。他動詞が使われることはないと思う。さらに言えば、 "They're gone!" の gone は動詞の過去分詞ではなく形容詞であると主張する人もいるかもしれない。

Verb-second のルールを失ったゲルマン語は英語だけ

もしも "Yesterday I saw a movie." という意味のドイツ語を言いたければ動詞 saw は文頭から数えて2番目に置かなければならない。よって主語 I はその後ろである。つまり "Gestern sah ich einen Film." (Yesterday saw I a film.) という語順になる。「動詞は文の先頭から2番目に置かなければならない」という規則は全ゲルマン語に共通する。(…中略…)この奇妙奇天烈な語順を言語学者は verb-second または V2 と呼ぶ。この法則は世界各地の諸言語の中では決して一般的とは言えない。ゲルマン語の系統を特徴づけるものである。

ドイツ語は全くと言っていいほど知らないので迂闊なことを言えないのけれど、ドイツ語の構文には SVO だけでなく SOV という日本語そっくりの語順があると最近知って驚いている。それどころかゲルマン語族すべてで SOV とか OSV などの奇妙奇天烈な形があるんだとか。逆に言うと SVO の語順に頑なにこだわっている英語のほうが少数派なんだね、ヨーロッパの中でも、世界の中でも。

一般のイングランド人と離れて生活していたノルマン人、積極的にイングランド人と共に生活しなければならなかったバイキング

英語はノルマン人 (the Norman French) の手によって単純な言語になったのだとする意見がある。この考えは魅力的だがありえない。イングランドの地にはそれほど多くのノルマン人がいたわけではない。ある試算によるとグレート・ブリテン島民100万ないし200万人に対して1万人だ。ノルマン人は日常的に英語を話す普通の人々の大群衆の中にまみれていた少数のエリート層だった。従って、仮にノルマン人が間違った英語を話す傾向があったとしても英語を話す人たちがそれを真似するわけがない。イングランド人がノルマン人に会う機会があったとしても、だ。

時代は11世紀から15世紀。当時のロンドンにもアテネフランセのようなフランス語の学校があったかもしれないが、一般の庶民がそこに通う事例は少なかっただろう。テレビもラジオも映画もなかった時代なので大半のイングランド人がノルマン人に会って古フランス語というかアングロ・ノルマン語を実際に聞く機会は限られていたはずだ。とすると、フランス語が英語の文法に影響を与えたとしても、その影響力には限界がありそうだ。

フランス語は普通の民衆から距離を置いて生活していた支配者が話していたエリートの言語である。これに対して、バイキングはイングランドの地に定着して生活し、英語を話す女性と結婚することも頻繁にあった。とすると彼らの子どもたちが実際に耳にしていたのは間違った英語と正しい英語である。これが英語に影響を与えた。

スカンジナビアのバイキングが現地のイングランド女性と結婚する事例は非常に多かったと思うが、逆の事例も多かったはず。つまりブリテン島での定住を決意したバイキングが故郷から親類を呼び寄せ、その親類の中には少女もいて、彼女がイングランドで適齢期を迎えてイングランド人男性と結婚する、という事例も多かったと考えるのが自然だ。

中国はその歴史のかなりの期間において外国人に支配されていた。(…中略…)だが支配者の言語は中国語に影響を与えなかった。外国人は屋敷の中で中国を支配し、通訳を介して屋敷の外部と連絡をとっていた。大雑把に言うと、普通の中国人が支配者たる外国人に会うことは滅多になかった。そういう機会があったとしても稀に出会う兵士とのやり取りぐらいだ。

これは非常に重大な指摘だと思う。外部の侵略者が定住して現地の住民と密な交流(婚姻や商取引など)をする事例(イングランド)。外部の侵略者が定住しても現地の住民とあまり交流しない事例(中国)。まあ、中国の歴史に関してはもう少し深い考察が必要かもしれないが。

バイキングの影響力の強さは、英語の変化がイングランド南部ではなく北部と東部で始まったことで証明できる

第1に、多くの地域でバイキングが集中的に居住していたことだ。デーンロー (Danelaw, デーン人が多く住んでいたイングランド東部地方) には大半の住民の祖先がデーン人であるという地域もあった。このことが意味するのは、スカンジナビア風味の英語を話していたのはごく一部のデーン人やノルウェー人ではなかったということだ。 "Mommie, hwy spæketh he like thæt?" ("Mom, why speak he like that?" or "Mom, why does he speak like that?")

バイキングはイングランド北部とか東部の海岸沿いの村に定住することが多かったはずだ。大挙してやって来たバイキングだけから成る村もあっただろう。そのような村の中では古ノルド語による会話が一般的だったろう。だがバイキングだらけの村に住んでいても村外のイングランド人たちと何らかの商取引をしなければ生活できるわけがない。とすると嫌でもイングランドの言葉を覚える必要がある。

さらに言えば、バイキングたちはバラバラに居住していたわけではなかった点も重要だ。仮に彼らの家々がイングランド全域に孤立ぎみに点在していたらどうなっただろう? そうなったら少数派のバイキングが多数派のイングランド人に呑み込まれ、イングランドにおけるバイキングの「血の濃さ」が0%近くにまで下がる事態が起きたかもしれない。そのような民族同化の歴史もありえたと思う。だが実際には彼らはバイキングだらけの村に住んだ。こうしてバイキングの人口密度が高い地域が北部と東部を中心に形成された。古ノルド語が英語の文法を変え、バイキング自身がスカンジナビア風味の英語を話し始める歴史がここから始まった。

第2に、文書で明らかなのだが、英語の文法がまっさきに単純化の道に向かったのはイングランドの北部である。スカンジナビアからやって来た人々の人口密度が高い地域だ。

 West SaxonNorthumbrianNorthern Middle Engish
Idēme-o-e
youdēmest-es/-as-es
he/shedēmeþ-es/-as-es
wedēmeþ-as-e
y'alldēmeþ-as-e
theydēmeþ-as-e

上記テーブルは動詞 deem が主格に合わせて格変化する様子。現代英語では deem は deem - deems という貧弱かつ理解しやすい格変化のみが残っているが、昔の英語ではこのように変化していたわけだ。見てもらえればわかるが、イングランド南部の方言 West Saxon とイングランド北東部の方言 Northumbrian の違いが興味深い。古英語の形をよく残している南部。古英語の面影が失われつつある北部と東部。

比較のため同時代のイングランド南部の中英語がどうだったか参照されたい。依然として古英語の形をよく残していることがわかる。南部はバイキングが定住しなかった地域である。

 Old EnglishSouthern Middle English
Idēme-e
youdēmest-st
he/shedēmeþ
wedēmeþ-eþ
y'alldēmeþ-eþ
theydēmeþ-eþ

つまり動詞の接尾辞の単純化あるいは喪失はイングランド全域で同時に起きたわけではなかったのだ。このような現象は特定の地域で先行的に起きた。外国人の大群によって英語がズタズタにされた地域だ。

つい最近の19世紀後半においてもイングランド南部の海岸沿いのドーセット郡 (Dorset) では事物を人称 (personal gender) と非人称 (impersonal gender) に分けて区別していた。personal はヒトを含む生きとし生けるものすべて。そしてある種の道具も含む。 impersonal は上記以外すべて。 tree は personal なので "He's a-cut down." 。しかし water は impersonal なので "It's a-dried up." 。指示代名詞も2つの性 (gender) に分かれていた。water なら "this water" だが tree は "thease tree" という具合に。

V2の法則の呪縛から最初に解き放たれたのもやはり北部である。対照的に南部では長く続いた。

(…中略…)そして dagum の接尾辞 -um が明らかにしてくれる事実がある。dagum は与格の複数形である。ノーサンブリア方言 (Northumbrian) では他の格 (case) が姿を消しつつあるのに、このどっしりとして動かない接尾辞は踏ん張り続けた。他の地方の方言と共に古英語の時代が終焉を迎えようとしているときでさえ -um 接尾辞は自然磨耗に耐え、その姿を -en のような形に変えた。ノーサンブリア方言では常に同じ場所にとどまって -um として生き続けた。まるで夜空に輝く星のように。

これには理由がある。下記のテーブルを見ていただければ理解できるだろう。古英語の stān (現代英語の stone) の格変化、そして古ノルド語の armr (現代英語の arm) の格変化。

 Old English, singularOld English, pluralOld Norse, singularOld Norse, plural
nominative (主格)stānstānasarmrarmar
genitive (属格)stānesstānaarmsarma
dative (与格)stānestānumarmiarmum
accusative (対格)stānstānasarmarma

注目していただきたい点がある。古ノルド語の語尾は概して古英語のそれとは異なる。英語を習うスカンジナビア人は名詞を使うたびに小さな障壁に突き当たっただろう。だが与格の複数形は彼らが唯一安息できる箇所だった。 -um 接尾辞は古英語と古ノルド語が偶然にも同じ形を取る数少ない事例のひとつだったからだ。このことから予想できるのは、スカンジナビアの人々が必死になって -um 接尾辞にしがみついたであろうということだ。対照的にこれ以外の接尾辞は名詞から消えうせた。 -um 接尾辞は彼らにとって古ノルド語で既に馴染み深い形だったのだ。

現代英語の名詞は主格になろうが目的格になろうが変化しない。だが昔の英語の名詞は、現代英語の代名詞が I - me - my - mine と変化するように、主格、対格、与格、属格…によって接尾辞が変化した。しかも名詞によって変化の仕方が違った。ちょうど現代英語の不規則動詞の活用が複雑きわまるのと同じように。名詞の格変化が完全に消滅したのはバイキングの貢献によるもの、というのがおそらくほとんどの言語学者の総意らしい。

アイスランド語が1,000年間変わらなかった理由、英語が変化し続けてユーザー・フレンドリーになった理由

ゲルマン系諸語の中にあって、隔絶された島で話されるアイスランド語は学習者が地球上で稀であり、ほとんど単純化しなかったメンバーのひとつである。今日でさえその文法は古ノルド語の時代からほとんど変化しておらず、アイスランド人はおよそ1,000年前に古ノルド語で書かれた英雄神話と詩歌を読むことができる。アイスランド語には3個の性がある。古ノルド語の格変化に伴う語尾の変化の大半はレイキャビクで暮らす人たちが毎日使っている言葉の中に今でも残っている。加えて、 "you mistake you" という風変わりな表現、 hithering and thithering, verb-second rule, have-完了とbe-完了、 そしてゲルマン祖語に見られたその他の特徴のほとんども健在である。

英語の運命をその親戚たるアイスランド語と分け隔てたものは、略奪者バイキングの侵入を経験したことである。彼らは故郷に戻らずブリテン島にとどまって古ノルド語の代わりにイングランド人の言葉を話す道を選んだ。(…中略…)古代北欧の英雄伝を今でも読めるアイスランドの人々は大陸から遠く離れ、外部の者に侵略されない島に住んでいる。今やゲルマン語族の中で最もユーザー・フレンドリーになった言語を話す人々はアイスランド島に比べて大陸に近い島に住んでいる。その島はその近接性ゆえ繰り返し外部から侵略されてきた。

アイスランド語と英語と中国語を比較してみよう。やや単純すぎるかもしれないけど。

  • アイスランド語 - アイスランドはあまり外部から侵略されなかったのでアイスランド語は1,000年間あまり変化せず複雑な文法を残している。
  • 英語 - イングランドは頻繁にバイキングの侵入を受けた。バイキングは現地の人たちと深く交流したので英語の簡素化に寄与した。
  • 中国語 - 中国は頻繁に他民族の侵入を受けた。他民族は現地の人たちとあまり交流しなかったので中国語の変化に寄与しなかった。

そのほか

私の知り合いの1人は英語ネイティブではないのだが英語は上手だ。私が年齢を訊いたとき彼女はこう答えたことがある。 "I turn twenty-five." うーん、完璧とは言い難いね。正しくは "I'm turning twenty-five." だ。時間を示す語を文頭に添えたときに限り動詞の原形が許される。 "Tomorrow I turn twenty-five." という具合に。

そういえば未来表現に関しても英語は少し独特らしいね。

バゲットのレシピを英語で書いた

No-Knead Bread のレシピを英語で書いた。これをLang-8で公開すれば誰かが添削してくれるのかな?

baguettes
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Twinbirdのコンベクション・オーブン TS-4119 を買って以来バゲットばかり焼いている。極端に言えばバゲットは水と塩と小麦粉さえあれば焼ける。(イーストは空気中に漂っているものが自然にパン生地に付着して増える)。それ以外の材料は一切いらない。

手順も他のパンに比べると簡潔だ。

  1. 粉を捏ねる(こねる)
  2. 1次発酵
  3. 分割
  4. 寝かせる
  5. 成形
  6. 2次発酵
  7. 焼く

これだけだ。

これだけではあるが、もっと詳細にバゲットのレシピを書いてみた。しかも英語で。これは実際にふだん自分が実行しているレシピのひとつであり、一般に「捏ねずに作るバゲット」として知られている。数年前だったか、New York Times が火付け役になって大流行した No-Knead Bread を自分なりに少し改良したものだ。

Baguette recipe

Ingredients:

  • All purpose flour (200 g), water (134 g), instant dry yeast (2/3 teaspoon, 2 g), and salt (1/3 teaspoon, 2 g).

Directions:

  1. Dump flour into a bowl. Tip salt near one side of the bowl. Just don't mix at this time.
  2. Pour lukewarm water - not boiling one - into a cup and add instant dry yeast. Stir for a minute or so.
  3. Transfer that water into a corner of the bowl - far side from where salt has been drizzled. In a couple of minutes, the dough mass would be bubbling a bit. And then mix and stir with a silicone spatula or paddle until your dough has a uniform texture or gets completely wet.
  4. Now your dough should look a lot shaggy, but it doesn't matter. You don't need to knead. Cover the bowl with plastic wrap or like that. Let sleep in the fridge and ferment all night.
  5. Next morning, your dough should puff up and almost double in size. Try "poke test" to make sure it's ready to go. The dough should give into the pressure and slowly creep back up when you poke your finger on the surface.
  6. Dust the countertop with flour. Dump out the dough onto it. Scrape the dough all out with a spatula since it might be a bit sticky.
  7. Cut dough into two pieces with a scraper.
  8. Grab dough. Stretch and fold over all ends towards the middle. Shape it to make look like a ball. Pinch all sides shut and seal them. Turn over and make sure that its upside surface gets smooth, taut and tight. At this stage, don't knead, otherwise you'll pop bubbles inside. Finally place the dough with its seam side down.
  9. Spray dough with water, cover with plastic wrap and allow it to bench rest for 10-30 minutes at room temperature.
  10. Stretch dough so gently with finger tips that bubbles aren't punched out. Fold over and make a rectangular shape. Tuck both long and short ends. Pinch all sides tightly and seal them completely. In the end, your dough should look a bit like baguette!
  11. Put dough on parchment paper. Keep wet. Let rise 1-2 hours in a bit warm place.
  12. Pre-heat the oven at temperature of 250℃ or 482F while dough is rising.
  13. Turn on the gas stove to medium heat. Place on the burner a frying pan - remove the handle in advance - or skillet made of cast iron. And burn the pan, with nothing inside, for a couple of minutes.
  14. Once the dough almost doubles its size, score it with a knife. Make 2-3 shallow slashes at an angle on the surface; these cuts are vents to help release steam and gas in the loaf. Spray water all over the dough.
  15. Plop the dough with parchment paper onto the burnt pan on the stove. Something like a well-floured pizza peel might be helpful. Cast some water into the pan to create a lot of fiery steam and cover with a lid pretty quickly; many home bakers insist steam makes large bubbles or holes in crumb.
  16. Slip on oven mitts to grab the sizzling hot frying pan, which has no handle. Load it into the oven. Keep the lid shut. Turn down to 230℃ or 446F. Bake and wait.
  17. Ten minutes into baking, remove the lid from the pan and sprinkle water over the loaf.
  18. Wait for another 10 miniutes or until the loaf's crust turns crisp and golden brown. Time and temperature may vary a lot from oven to oven.
  19. Remove the pan from the oven. After the loaf cools down a bit, cut into it, take a photo and share with friends.

バゲットのレシピ

材料:

  • 中力粉 (200 g), 水 (134 g), インスタント・ドライ・イースト (小匙2/3, 2 g), and salt (小匙1/3, 2 g).

手順:

  1. 小麦粉をボールに入れる。ボールの端のほうに塩を入れる。まだかき混ぜてはいけない。
  2. ぬるま湯 - 沸騰したお湯ではない - を容器に入れ、インスタント・ドライ・イーストを加える。1分ほどかき混ぜる。
  3. このお湯を先ほどのボールの片隅(塩を入れた場所から離れた側)に注ぐ。数分でパン生地から泡が少し出てくる。そして生地が均一になるか水分を完全に吸い込むまでシリコン製の「へら」でかき混ぜる。
  4. これで生地がかなり毛羽立っているはずだが問題ない。捏ねる必要はない。ボールをラップなどで覆う。冷蔵庫で一晩寝かせ、発酵させる。
  5. 翌朝になると生地が膨らんでほぼ2倍の大きさになっているはずである。準備完了かどうか「フィンガー・テスト」をやってみよう。指を表面に差し込むと生地がへこむはずだ。
  6. カウンターに小麦粉をふるう。そこに生地を落とす。若干べとつくかもしれないので「へら」ですべてこすり取る。
  7. スクレイパー(スケッパー, scraper)を使って生地を2個に切る。
  8. パン生地をつかみ、伸ばし、全方向から端を真ん中に向かって折り畳み、ボールの形にする。すべての面をつまんで閉じ、密封する。生地をひっくり返し、上の面がすべすべでピーンときつく張り詰めているようにする。ここで捏ねてはいけない。さもないと中の気泡をつぶしてしまう。継ぎ目がある面を下にして生地を置く。
  9. 水をスプレーし、ラップフィルムで覆い、室温で10分から30分間寝かせる。
  10. 気泡が押し潰されないように指先で生地を優しく伸ばす。折り畳んで長方形の形にする。長い辺と短い辺のいずれもたくし込む。すべての辺をきつくつまみ、完全に閉じる。最終的にはこれはバゲットのように見えるはず!
  11. 生地をクッキングシートの上に乗せる。要保湿。少し暖かい場所で1時間から2時間かけて発酵させる。
  12. 生地が発酵しているあいだにオーブンを摂氏250度(華氏482度)で予熱。
  13. ガス・コンロを中火にする。フライパン - あらかじめ取っ手を外しておくこと - をコンロに乗せる。フライパンの代わりに鋳物のスキレットでもよい。このフライパンまたはスキレットを数分間空焼き(からやき)する。
  14. 生地の大きさがおおむね2倍になったらナイフを使ってクープを入れる。表面に2-3本の浅い傷を斜めに入れる。この切り込みはパン内部の蒸気とガスを逃がすのに役立つのだ。生地全体に水をスプレー。
  15. 生地をクッキングシートごと持ち上げ、ガスレンジで焼かれているフライパンにどさっと入れる。小麦粉をまぶしたピザ・ピールが役に立つかもしれない。フライパンの中に水を少し入れて大量の焼けつくような蒸気を作り、すばやく蓋を閉じる。ホーム・ベーカリーをやる人たちの多くが、蒸気はパンの内部に大きな気泡または穴を作るのだ、と言う。
  16. オーブン用のミトンを着用し、熱く焼けているフライパン - 既に取っ手は外してある - を握る。これをオーブンに入れる。蓋はしたまま。温度を摂氏230度または華氏446度に下げる。焼成の開始だ。そして待つ。
  17. 焼成開始から10分後フライパンの蓋を外し、生地全体に水をスプレー。
  18. さらに10分待つ。またはパンの外皮がぱりっとして黄金色になるまで待つ。時間と温度はオーブンによって大きく異なる。
  19. オーブンからフライパンを取り出す。少し冷めたらナイフでスライスし、写真を撮り、友人たちとシェアしよう。

バゲットを焼くときに使う英語

以下はバゲットを焼くレシピでよく使われる英語の表現。日本語で言う「フィンガー・テスト」が英語だと "poke test" に、「バット」が "pan" に、「天板」が "baking sheet" になるなど、注意が必要なものが多い。

  • home baker - 自宅でパンを焼く人
  • all purpose flour - アメリカで最もよく売れている万能の小麦粉。日本で言う中力粉とほぼ同じ
  • tablespoon - 15 ml の匙、大匙
  • teaspoon - 5 ml の匙、小匙
  • lukewarm water - ぬるま湯
  • stir - かき回す、かき混ぜる
  • drizzle - 霧雨のように降らせる
  • combine - 混ぜる、まとめる
  • spatula, paddle - へら
  • scraper - スクレイパー。パン作りをやる人たちの間ではなぜか「スケッパー」と呼ばれる。耳で聴いた感じでは確かにスケッパーのほうが英語の原音に近い
  • knead - 捏ねる。"You don't need to knead." という韻を踏んだ表現が知られている。
  • dough - パンなどの生地。捏ねることができるぐらい水分が少ないのが dough, 捏ねるのが難しいぐらい水分が多いのが batter. 後者はパンよりもケーキなどお菓子の生地で使われる表現らしい
  • sticky - べたつく
  • turn around, turn over, flip, invert - ひっくり返す
  • stretch and fold - 伸ばして畳む
  • heel of one's hand - 手のひらの手首付近
  • fold over - 折り重ねる、折り畳む
  • windowpane test - 捏ねた生地を薄く伸ばし、向こう側が透けて見えるかどうか調べること
  • tuck the dough ends under - 生地の端を下にたくし込む
  • taut - ピーンと張った
  • seam - 継ぎ目
  • with its seam side down - 継ぎ目のあるほうを下にする
  • seal - 密封する
  • flour - 粉、小麦粉。粉をまぶす
  • dust - 粉をまぶす
  • sprinkle - 液体や粉をまき散らす
  • ferment, rise, proof, prove - 発酵する
  • puff, puff up - 膨れる、蒸気などを出して膨れる
  • double in size, double one's size - 2倍の大きさになる
  • poke test - フィンガーテスト。英語では "finger test" はたぶん通じないと思う
  • creep up - 少しずつ持ち上がる
  • give - へこむ、たわむ。自動詞
  • scrape out - 掻き出す
  • scrape down the sides of the bowl - ボールの内側を掻き取る
  • dump out on floured surface - 小麦粉をまぶしたところにどすんと置く
  • bench, bench rest, rest, sit - 寝かせる、ベンチタイム。"bench time" はおそらく和製英語であり、英語で書かれたレシピで一度も見たことがないけど、たぶん英語圏の人たちには通じると思う
  • taper - 先に行くほど細くなるようにする
  • finger tip - 指先
  • couche - クーシュ(2次発酵用のキャンバス布)。たぶんフランス語
  • plastic wrap, plastic film - ラップフィルム。"wrap film" という英語には一度もお目にかかったことがない
  • parchment paper, baking paper - クッキングシート。"cooking sheet" はおそらく通じない
  • baking sheet, pan sheet - 天板。なぜ英語圏の人たちはこれを "sheet" と呼ぶのかと言うと、おそらく 1-2 mm という薄いスチール製だからだと思う
  • pizza stone, baking stone - ピザストーン
  • loaf pan, bread pan - パン型。英語では、蓋のない浅い容器を一般的に "pan" と呼ぶ。だから日本語で言う料理用の「バット」も pan である
  • preheat - 予熱する
  • set the oven to 230C. - オーブンの温度を摂氏230度に設定する
  • turn on the oven - オーブンを熱する
  • cast iron - 鋳鉄、鋳物(ちゅうてつ、いもの)
  • lava rock - 火山岩
  • lame /lɑ:m/ クープ用ナイフ。英語のレシピだと単に "knife" あるいは "paring knife" (果物ナイフ) と呼ぶことが多く、"lame" という専門用語(?)はほとんど使われない印象
  • slash, score - クープ(焼く前)、ナイフで生地にクープを入れる。日本語の「クープ」はフランス語から来た外来語かもしれない
  • grignes, gringe, ear, lip - クープ(焼いた後)。前2者はたぶんフランス語
  • at an angle - 斜めに
  • the blade should be held at a slight angle to the dough surface - 刃は生地表面に対してやや斜めの角度になっていなければいけない
  • stove, gas stove - ガスレンジ、ガスコンロ。もちろん "stove" には日本語で言う「ストーブ」の意味もある
  • fiery /fɑiri:/ - 焼けつくような、ひどく熱い
  • boiling water - 沸騰したお湯
  • sizzle - じゅうじゅうと音を立てて焼く
  • sizzling - 熱でじゅうじゅう音を立てる
  • turn the oven to 225C - オーブンの温度を摂氏225度に下げる
  • pizza peel - ピザピール
  • pan - 通常蓋がない鍋、皿状の器。日本語で言う「バット」は英語の "pan" に含まれる
  • pot - 通常蓋がある深鍋、通常蓋がある円筒形または縦長の器
  • load the dough into the oven - 生地をオーブンに入れる
  • time varies from oven to oven - 所要時間はオーブンによって異なる
  • remove - 取り出す
  • mitt, mitten - ミトン。前者は後者の省略形。使用頻度が圧倒的に高い語は "mitt" のほう。用途をはっきりさせるには "oven mitts" と言えばいい
  • loaf - 既に焼かれているが、まだスライスしていないパン
  • wire rack, wired rack - 焼き網、クーラー。焼きあがったパンを置いて冷やす網。これを言い表すのに "cooler" が通じるかどうかは不明
  • cut into the loaf - ナイフをパンに差し込む
  • cutting board, chopping board - まな板

バゲットは材料が単純だが、一般的にパンはもっと多様の材料が必要であり、手順がもっと複雑。以下はバゲットなどハード系のパンでは不要だがそれ以外のパンやお菓子のレシピでよく使われる英語の表現。

  • yolk - 卵黄
  • egg white - 卵白
  • strainer - 粉をふるう網
  • line the baking sheet with parchment - 天板をクッキングシートで敷き詰める
  • unsalted butter - 無塩バター
  • granulated sugar - グラニュー糖
  • batter - ケーキなどの生地。捏ねることができるぐらい水分が少ないのが dough, 捏ねるのが難しいぐらい水分が多いのが batter. 前者はパン生地で使われる表現
  • cut butter into the batter - バターを切って生地に混ぜ込む
  • microwave - レンジでチンする、電子レンジ。"electronic range" と言ってもたぶん通じない
  • wrap it in foil - アルミホイルで包む
  • halfway through baking, rotate the pan front to back - 焼成が半分まで終わったら鍋の前後を入れ替える
  • grease, oil - 油を塗る

英語の副詞 just の意味を完全に説明する

英語の just の元々の意味は「直立」。ここから「正当性」という意味が派生し、やがて「少しだけ」という副次的な意味が生まれた。この語にまつわる豊かで深い意味を例文つきですべて説明する。

たけのこの里

英語の副詞 "just". たった1音節の単純な言葉なのにその意味は多様で深い。既に「ジャスト」は日本語化しているのに英語の "just" をどう和訳したらよいか悩むことがある。小説を読んでいるときに「なぜ、この文脈で、この文で、 "just" が使われているのだろう?」と理解に苦しむことが多い。

しかし数日前のことだが、 "just" の語源が古フランス語とラテン語であり、元々の意味が "upright" (直立) であることを偶然知ってひらめいた。この語の元々の意味は「直立」。そうか、わかった。"just" にはいろんな意味、いろんな訳語が与えられているけど、すべては「直立」から導き出せるのだ。

3つの例文を下に示す。さまざまな意味と訳語が与えられる "just"。ここから "just" の共通した概念というか統一した原義を見出すのは非常に困難に思える。

  1. I just ate breakfast. (朝食をさっき済ませたばかりだ)
  2. I just can't! (無理! どんなに頑張っても無理!)
  3. Just in time. (ぎりぎり間に合った)

#1は過去のことを言い表す表現。"just" がないといつの過去のことかわからないが、 "just" があると「つい最近」の過去である感覚が生まれる。ではなぜ大昔の過去ではなく「つい最近の過去」という意味になるのだろう?

そして#2は別に過去のことでもなんでもない。ここでの "just" は "can't" を強調しているのだろうか? なぜ "just" を加えると「どんなに頑張っても…」という感覚が出てくるのか?

最後の#3. ここで使われる "just" に関しては、なぜ「ぎりぎり」の意味を獲得するようになったのか皆目見当が付かない人が多いと思う。

これら3つの "just" の概念がバラバラに見えるのは日本語訳のせいもある。しかし実際にはこれらすべてに共通する概念というか感覚があるのだ。それは何かと言うと「直立」という原義であり、そこから派生した「正当性」と「少しだけ」という感覚である。この記事を読めば上記3つの文の "just" をすべて理解いただけると思う。

Online Etymology Dictionary から "just" の語源学的説明を引用。

just (副詞)
14世紀末期に生まれた語。意味は「道徳的にまっすぐ (morally upright), 神の目から見て正しい (righteous in the eyes of God); 正当化しうる (justifiable); 公平 (equitable), 偏らない (impartial), 公平 (fair); 決まりごとに従う (conforming to rules)」である。また "just" には「正確さによって示される、または特徴づけられる; 正確, 正確な寸法」という意味もある。"just" の語源は "just, righteous, sincere" を意味する古フランス語 "juste" である。もうひとつの語源はラテン語 "iustus" であり、これは英語で言うと "upright, righteous, equitable; in accordance with law, lawful; true, proper; perfect, complete" という意味である。

Online Etymology Dictionary

just の意味で悩んだらタケノコを思い浮かべよう

"just" の本来の意味であるとされる「直立」。ここから「地面から少しだけ顔を突き出している筍(タケノコ)」の絵が思い浮かぶ。この筍は地面に対して垂直に、そして天の方向を目指して、ほんの少しだけ突き出ている。「垂直に立つ」姿勢から「正当性」の意味が出てくる。ここまでの理屈は誰でも容易に導き出せるだろう。そして筍が地面から「ほんの少しだけ」突き出ていることが重要だ。ここから "just" には「ほんの少しだけ」という意味が育まれたのだろうと自分は考えている。

語源学的に言うと英語の "just" はラテン語の "iustus" から来ており、それが古フランス語 "juste" を経由してブリテン島の英語に入った。だがローマ人もフランス人も "just" に「少しだけ」という意味が派生しようとは想像しなかっただろう。この「多くではなくほんの少しだけ」という感覚はおそらくイギリス人のオリジナルである。

以下に、さまざまな使われ方をする "just" の例文を主として英辞郎から抜き出し、解釈をこころみた。牽強付会かもしれないが、この語のすべての使い方は「正当性」と「ほんの少しだけ」だけで解釈できる。このまとめが "just" の奥深く多様な意味を100%網羅していると言うつもりはない。だが99%はこの説明で行けると思う。迷ったら地面からピョコンと少しだけ顔を出しているタケノコの姿を思い浮かべよう。

bamboo sprout
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just を「正当性」の意味で使っている例文

「実に、まさに、全く」

These are just the facts. (これらは紛れもない事実である)
「正当性」から派生した意味「実に、まさに、全く」で解釈できる例文。
That's just what I want. (それこそ私が求めていたものです)
これも「正当性」で解釈可能。訳語としては「実に、まさに、全く」。
It's just the same with our family. (わが家とてまったく同じことだ)
"just" は "the same" を修飾。
"just" に続く言葉が「類似」に関するもの (the same, like, etc.)であればその後続の語を「正当性→強調」の意味で修飾することが多い。"just like ..." (...と全く同様に) という表現もある。

just を「少しだけ」の意味で使っている例文

「単に、ちょっと、ただ~だけ、たった~だけ」

I wish I could see it just once. (一度でいいから見てみたいものです)
10回20回ではなく1回だけでいいという感覚。
"just" に続く言葉が「数、量または大きさ」に関するものであればその後続の語を「少しだけ」の意味で修飾することが多い。
It's just ten o'clock. (まだ10時だ)
11時でも12時でもなくそれより少ない10時であることを示唆。
このブログを読む人なら当然ご存じだろうが、「ちょうど10時」を英語で言うなら "It's exactly ten o'clock." であり、"just" は通常使わない。

「ちょうど、~だけ、今しがた」

I just ate lunch. (お昼を食べたばかりです) (俺はただランチを食べただけだよ)
過去の出来事に言及する文。"just" はアメリカ英語の過去時制とイギリス英語の完了表現でよく使われる副詞である。
過去と言っても数十億年前から1秒前まで幅広い。"just" が付加されることで「長時間さかのぼる過去」ではなく「数秒だけ(少しだけ)さかのぼる過去」の出来事であることがわかる。
ただし "I just ate lunch." の意味はアメリカ人なら「今ランチを食べたところです」だが、上述した理由によりイギリス人は「ランチを食べただけです」と解釈するかもしれない。前者の "just" は時間的な「ほんの少しだけ」、後者は空間的な「ほんの少しだけ」。
Just now. (ついさっきのことだよ)
これも「少しだけ過去にさかのぼる」感覚がある。「今」だけど「数秒前の今」。

「何だただの~か、つまらないことに」

Oh, it's just you. (なんだおまえか)
「あなたは始皇帝でもなく私の命の恩人でもなく普通の人だよね」という感覚がある。これも "just" の「多くではなく少しだけ」という意味で解釈できる。

「辛うじて、ようやく」

I only just managed to catch the last bus home. (私は辛うじて最終バスに間に合った)
話者がバス停に到着した時刻とバスが発車した時刻の間が長かったのではなく、非常に短く小さかったことを感じさせる文。

「要するに、一体、どうでもいいけど」

Just how are you going to do that? (だーかーらー、どうやってそんなことするつもりなの?)
別に多くを語らなくていいから「どうやってそんなことするつもりなの?」という1個の疑問に答えてくれればよいのだ、という感覚。

「質問はいいから、黙って、つべこべ言わずに、とにかく」

"Wh-what happened?" "No time to explain. Just run!" (「な、何が起きたの?」「説明している暇はない。とにかく逃げろ」)
「100時間不眠不休で働いてくれ」とか「私に1億円くれ」とか大きなことを求めているのではなく「走る」という小さな行動でよいのだ、という感覚がある文。

「とてもじゃないが」

I just don't seem to hit it off with him. (彼とはとてもじゃないがうまが合いそうにない)
「彼の奴隷として働く」とか「彼に高級料理をおごる」という大きなことをやるのは無理。それどころか「彼と仲良くやる」という小さなことさえ無理という感覚。
I just can't! (とんでもない! 無理よ!)
100%とか30%やれるどころか1%すら無理、と解釈可能。
細かく説明すると、"just" は "can't" を修飾しているのではなく "can" を修飾し、文の途中までは「少しだけ可能」 (just can) という意味になっている。だが後続する "not" が "can" (可能) を否定し、全体として「1%すら無理」という意味になる。そういう構造の文である。

「何もしないのに、自然発生的に、成り行きで」

I didn't mean it. It just happened. (わざとじゃないんだ。なんか知らないけど、そういうことになっちゃったんだよ)
高い確率でそういうことになったのではなく低い確率(少ない確率)でそうなった、という感覚。つまり必然(100%近い確率)ではなく成り行き。
He just happened to sit next to me. (彼はたまたま私の隣に座った)
私の隣りに座る確率は高くなくて低い確率(少ない確率)だったという感覚がある。言い換えると「偶然」(1-2%の確率)。

just が修飾するのは必ず後続の語である

最後にもうひとつだけ。Twitter検索したら下のような文を見つけた。日本語にすると矛盾している内容に見えるけど、英語の語順を正しく知れば矛盾していないことがわかる。

I want to ride a roller-coaster someday but they just seem too scary to me. (いつかジェットコースターに乗りたい。でもちょっと怖いかも)
"just" が修飾しているのは "seem" 。他方 "too" が修飾しているのは "scary" 。つまりこの文は「ジェットコースターに乗るのはすごく (too) 怖いけど、怖いと感じる行為自体は少しだけ (just) です」という構造になっている。日本語にするとわかりにくいが、"just" が他の語を修飾するときは必ず前からであり、"too" が形容詞と副詞を修飾するときも必ず前からであることを押さえておけば文の構造を正確に把握できる。

これは余談になるが、英語の副詞の修飾に関する語順は意外に統一されていない。

  • "just" は必ず後続の語を修飾する。
  • "too" は原則として後続の語を修飾する。文全体を修飾するときは "too" 自体が文の最後に置かれるのが普通だが主語の直後など途中に置かれることも多い。
  • "only" は先行する語を修飾することもあるし後続する語を修飾することもある。何が修飾されているかを把握するには文脈で判断するか、会話の中ならストレスが置かれる場所を聴き取る必要がある。
  • "not" は助動詞に関しては必ず後ろから修飾し、それ以外の品詞に関してはほぼ例外なく前から修飾する。

その他

"You're just beautiful." は「あなたは本当に美しい」とも「お前は顔が美人なだけで他はひどいね!」とも解釈できる。どちらの意味なのか判断するには文脈に頼るしかない。

"just" を強調する語は "only" であり、 "really, very, a lot, much" などは使えない。"only" は通常は "just" を前から修飾する。例文→ You still only just turned 21. (あなたはまだ21歳になったばかり).

日本語では「30分ジャスト」という表現が許されるが、以下のように英語の "just" は必ず前から修飾する。

There were two just cats. ←誤り
There were just two cats. ←"just" は "two" または "two cats" を修飾していると考えるべきなのでこの語順が正しい
Like just you. ←誤り
Just like you. ←"just" は "like" を修飾していると考えるべきなのでこの語順が正しい

"won't" は "will not" の短縮形である、という説明は半分正しく半分誤り

英語の短縮形。たとえば is not が訛って(なまって) isn't になるのは理解できる。they arethey're に変化して結果的に there, their と全く同一の発音になるのもわかる。 would havewould've になるのも不思議ではない。日本語の「愛している」が縮まって「愛してる」に、あるいは「聞いていない」が訛って「聞いちゃいねえ」になるようなものだ。

だが will notwon't という短縮形になる現象は、その発音を考えると、不自然だ。音が単純化して短くなるなら willn't と変化するのが普通だろう。だが willn't という形は存在しない。少なくとも私の知る現代英語にはそんな奇妙な語は存在しない。なぜ will not の短縮形は willn't ではなく won't なのか? この難問を解く非常にわかりやすい語源学的な説明を英語圏の電子掲示板で見かけた。それを一言で説明すると、

willan/wyllan noht/naht → wynnot → wonnot → won't

…という流れだ。(スラッシュは "OR" を意味)。

ただしこれとは別の説明もある。語源学は遠い昔の言語を研究する学問だからいろんな説がある。インド・ヨーロッパ語族の動詞と助動詞は「人称」によって複雑に屈折してきた。その複雑な文法を反映して、

woll not → wonnot → won't

…と推移した、とする説だ。

以下に解説を日本語に翻訳して紹介しておく。

Old Britain map

won't にはちょっと面白くて複雑な歴史があります。 一言で言ってしまえば willnot の短縮形ですが実際にはかなりの回り道を経てこの形になったのです。

古英語 (Old English) において will は動詞 willan/wyllan の形を取りました。意味は現代英語で言う will, wish, want です。古英語でも未来表現で用いられることがありました。古英語の文 "Ic wille gan." の意味は "I want to go." または "I will go." です。どちらの意味になるかは文脈で決まりました。

古英語では否定の表現は以下のように頻繁に短縮された形を取りました。

  • na(w)ðer = nahwæðer = ne + hwæðer
  • neither = not + whether
  • næfre = ne + æfre
  • never = not + ever
  • nabbað = ne + habbað
  • haven’t = have + not
  • We nabbað naðor ne hlaf ne wæter.
  • We have neither bread nor water.

副詞 not は昔は noht であり、もっと昔は naht でした。noht, nahtnawiht (意味は naught, ゼロ、無価値)の関連語であり、本来は in no way (全く…でない)を意味しましたが、ne の強調形として使われるようになりました。次第に naht, noht, ne はいずれもストレスが置かれなくなって他の語と結合しました。この現象を Jespersen's Cycle と呼びます。

これらの事情が合わさって willan の否定の形 wynnot が新たに生まれました。willan の過去形は語の先頭が wold- になります。これは現代英語になると would になります。これらの語の形と関連語の動詞 wol の影響を受けて wynnotwonnot という形を取るようになりました。1500年代後半のことです。

このような経緯を経て現代英語の won't という形が現れたのは1660年代です。これは wonnot の最後の母音が省略された結果です。この種類の短縮形としては won't は初めての事例でした。その後 can't, couldn't, shouldn't などが won't に倣って1700年代までには出揃いました。現代英語では cannot という形が生き残っていますが、それ以外の couldnot, shouldnot などは消滅しました。

その他の短縮形 -'ll-'ve などについて言うと、その歴史は won't と同じぐらい長いんですが、語源学的な説明は won't ほど込み入っていません。しかしここでは詳述を避けます ;)

それと、これは覚えていてほしいのですが、古英語の綴りは現代英語のそれと比べてあまり標準化されていませんでした。同一の語に対して「正しい」とされる綴りはいくつもあったのです。訛りあるいは方言によって「正しい綴り」も変わりました。それゆえに発音と使用法の変化を歴史的に説明することは難しくなることもあります。とはいえ、won't の誕生の歴史的推移は、私が知る限りでは、このようなものであったと言うことができます。

etymology - What is "won't" a contraction of? - English Language & Usage Stack Exchange

これとは別の説明もある。won't の起源は16世紀までは正当な表現であった直説法現在時制1人称の形 "I woll" から来たものであるという。(この形は19世紀まで使われていた)。ここから否定表現 woll not が現れ、 wonnot に変化した。2人称と3人称では wynnot だったが、1人称の wonnot がそれにとって代わり、人称を問わず wonnot になり、最後に2番目の母音が脱落して won't になった、とする説だ。

Do you mean why is it "won't" instead of "willn't"? It comes from the first person present indicative "I woll", which was current even to some extent until the 19th century, but was standard usage in the 16th century. So it is a contraction of "wonnot" which in turn is a contraction of "woll not". The second and third persons were (and of course still are) "will", and originally there was a "wynnot" but "wonnot" won out and replaced it for all persons, at some point in the 16th c.

origin of the negative contraction "won't" for the future tense | WordReference Forums

You're welcome の意味は「感謝しなさい」になることもある

英語の "You're welcome." は通常 "Thanks." (ありがとう)に対する決まりことばとして使われる。「どういたしまして」。だが「私に感謝しなさいよ」という意味になることもある。使い方に注意が必要かもしれない。

Revenge

アメリカABCのテレビドラマ「リベンジ」 (Revenge) を見ていたらビクトリアがエミリーに "You're welcome." と冷たく言い放つ場面があった。字幕には「感謝して」とあった。普通なら「どういたしまして」の意味になる "You're welcome." がなぜ高慢な印象がある「私に感謝しなさいよ」という意味になるのか?

この場面をもう少し詳しく説明すると以下のようになる。

  • このドラマの主人公エミリーには人に話せない秘密がある。
  • ビクトリアは彼女と敵対関係にある。マルゴーもまた別の理由でエミリーと敵対関係にある。
  • エミリーはビクトリアの秘密を知っている。同様にビクトリアはエミリーの秘密を知っている。
  • マルゴーはエミリーの秘密を知らない。
  • エミリーに不信をいだくマルゴーがビクトリアを問い詰める。
  • 2人の会話を2階の階段からのぞきこんで聞いているエミリー。それに気づくビクトリア。
  • エミリーと敵対しているはずのビクトリアはなぜかエミリーの秘密をマルゴーに言わない。
  • マルゴーがあきらめて退去。
  • 2階の階段踊り場にいるエミリーと視線を交わすビクトリア。
  • エミリーは無言。
  • エミリーに向かって無愛想に "You're welcome." (感謝して)と言うビクトリア。

この場面では本来ならエミリーがビクトリアに "Thank you." (私の秘密をマルゴーに暴露しなかったことに感謝します)と言ってもいい。だがわだかまりの気持ちがあるのでお礼の言葉を言い出せない。そこでビクトリアが先手を打って "You're welcome." と言えば「あなたが無言で『ありがとう』とおっしゃったことを私は知っています。どういたしまして」という意味になるわけだ。

かなり嫌味な「どういたしまして」だよね。「感謝して」はよく考え抜かれた日本語字幕だと思う。

以前イギリスのテレビドラマ「シャーロック」 (Sherlock) にもこういうたぐいの婉曲表現というか嫌味な表現があった。それはワトソンが自分にぶつかってきたのに侘びようとせず走り去る男に向かって "Excuse you!" と叫ぶ場面だ。"Excuse me." とか "Excuse us." はよく使う表現だけど "Excuse you." はあまり使わない。"Excuse you!" の場面の字幕は確か「気をつけろ!」だったと思う。

以下まとめ。

  • 相手が "Thanks" を言う前に "You're welcome." と言ってしまうと文脈によっては嫌味な意味にもなるかもしれない。
  • 偶然相手の体が自分にぶつかったのに向こうが謝罪しなかったら "Excuse you!" と怒鳴ればいい。
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