ArtSaltのサイドストーリー

音楽、フリーウェア、WEBサービス、食べものなどに関する日記。トラックバック、コメント歓迎。

Kindle2.5系のフォントハック

Kindle3はもともとマルチバイト・フォントがインストールされている。だがオイラの Kindle 2 International はそうではない。さらに言うと、Kindle2.5系はそれまでのKindle2.3系のフォントハックが通用しない。

NiLuJeさんという人が "Fonts & ScreenSavers hacks for Kindle 2.5 - MobileRead Forums" で脱獄方法を説明している。脱獄すればフォントとスクリーンセーバーを変更できる。最新のKindle3だけでなくKindle2.5系とDXでも動くらしい。

ここからハック用のファイルをダウンロードし、Kindle2を脱獄し、フォントハックをおこない、日本語フォントをインストールした。その結果めでたく日本語文書を読むことができた。後述するように、この方法は危険度が低く、文鎮になる(Kindleが二度と使えなくなる)可能性が少ない。

注意:オイラは英語は読めるけどIT関係の知識は全然ない。「シリアルコンソールがどうたらこうたら…」と言われても何のことかさっぱりわからない。なのでここに書くことについて責任を負うつもりは全くない。不明な点があればMobileReadのフォーラムでNiLuJeさんに質問すれば答えてくれるかもしれない。オイラもひどい英語で質問したんだけど返事をいただいたよ。

Many a thanks, NiLuJe.

脱獄

まずは脱獄しないとね。

  1. update_jailbreak_k2i_install.bin をKindleのルートに入れる。
  2. Kindleをアンマウント。
  3. Menu => Update your Kindle.

フォント・ハック

脱獄が成功したら今度はフォントハックだ。

  1. update_fonts_3.9.N_k2i_install.bin をKindleのルートに入れる。
  2. Kindleをアンマウント。
  3. Menu => Update your Kindle.

この段階でKindleをパソコンにマウントしてみる。するとフォント・ハックによってルートに linkfonts というディレクトリが生成されたことがわかる。ご覧のとおりいろんなフォントがある。

ファイラーのスクリーンショット

日本語フォントをインストール

シングルバイト・フォント圏の人はこれで作業終了。Kindleをrestartする必要もrebootする必要もない。しかしNiLuJeさんの用意したファイルにはマルチバイト・フォントがない。なので我々日本人は自分で日本語フォントを準備しなければならない。

Kindle2.5系の文書の中身に使われるフォントは

  • Serif_Bold
  • Serif_BoldItalic
  • Serif_Italic
  • Serif_Regular

の4種類だと思われる。これはオイラが自分の目で目視確認した。この「Serifなんとか」は True Type フォント。ファイル名は固定している。ファイル名を変えてはいけない。

たとえば VL-PGothic-Regular.ttf というフォントを使いたければその VL-PGothic-Regular.ttflinkfonts ディレクトリの fonts ディレクトリの中に4つコピーする。そして Serif_Bold.ttf, Serif_BoldItalic.ttf, Serif_Italic.ttf, Serif_Regular.ttf と名前を変える。前述したようにファイル名は固定しているからだ。VL-PGothic-Regular.ttf の名前のままではKindleは参照してくれない。

そして Menu => Restart. これでフォント変更完了。Kindle2.5.xで日本語文書を読めるようになる。

文鎮になる可能性が低い理由

もともとKindleの脱獄は文鎮になる危険がつきまとう。ハックされた状態でファームウェアがアップデートされるとKindleは確実に文鎮化すると言われてきた。二度と使えなくなる。ああ、怖い、怖い。

Kindleがワイヤレス・オンの状態にあるとAmazonはファームウェアを自動的にアップデートしてしまう。ネットに接続しなければアップデートされないけど、そういうわけにはいかんでしょ。オイラはInstapaperもFeedbooksも使いたいんだよ。じゃあ、どうすりゃいいのさ?

本エントリで紹介したNiLuJeさんの方法はその困難な問題を解決した模様。更新履歴を引用する。

You won't have to uninstall/deactivate the hack in order to install official updates!

(Amazon公式のアップデートをインストールする際にこのハックをアンインストールしたり無効にする必要はないよ♪)

Fonts & ScreenSavers hacks for Kindle 2.5 - MobileRead Forums

こう宣言してるんだからたぶん安心でしょう。だからこのハックのアンインストーラーは不要であり、アンインストールする必要はない。しかし何か起きたときのためにアンインストーラーが一応用意されている。

日本にはichinomotoさんとytsuboiさんという有名なKindleハッカーがいる。オイラはKindle2.3系のときにはytsuboiさんの「フォントはっく」にお世話になっていた。ytsuboiさんのやり方だと、ファームウェアのバージョンに "+ UFSSH 0.3y" という文字列が加わったが、今回ここで紹介したNiLuJeさんのハックを入れてもそこの部分は変わらなかった(と思う)。

もうひとつ。ytsuboiさんのハックはKindleのルートにある system ディレクトリ内に特殊なファイルを入れる方法だったが、NiLuJeさんは system をいじらず新たに linkfonts というディレクトリを設ける。だからこそハックした状態でファームウェアをアップデートしても文鎮にはならない…という理屈じゃないかなあ。

関連

Twitter遅延したらRSSアイコンをクリック

最近特に多いんだけど、Twitterクライアントではちゃんと最新のツイートを見れるのにWebブラウザで見るとTwitterが遅延していることがある。最新のツイートが反映されてないんだよね。どういう条件が重なると遅延するのかはわからない。で、ログインすれば確実に最新のツイートが見れるようだ。うーん、でもブラウザでログインするのが面倒くさい。

先日のXSS祭りのときはツイッターニュースの人に「只今、XSSの脆弱性により、Twitter公式WebからTwitterを利用すると不本意のツイートやRTをされる可能性があります。Twitter.comを利用している方は、すぐにログアウトして下さい。公式Web以外を使用してください」と言われた。ブラウザでログインせずに常に最新のツイートを見たい。可能だろうか?

可能だ。RSSアイコンをクリックすればいい。

池田信夫さんのTwitterを例にとる。

Twitterスクリーンショット

ソフトウェアでもメディアでも、中核はクリエイター。それが「社員として雇うとクビにしにくい」がゆえに下請けに出される産業構造が、日本のITを決定的にだめにしている。労働市場の問題は、単なる雇用問題ではない。

Twitter / 池田信夫: ソフトウェアでもメディアでも、中核はクリエイター。そ ...

というツイートが最新になっているように見えるスクリーンショット。しかし実際にはこれは最新ではない。

最新の発言一覧はブラウザのアドレスバー(Firefoxで言うロケーションバー)などにあるRSSアイコンをクリックするとわかる。

Twitterスクリーンショット

2010年オスロの村上春樹

今年(2010年)の8月ノルウェーのオスロで村上春樹氏をめぐるフェスティバル "Murakamifestival på Litteraturhuset" が開かれた。最終日には村上氏が House of Literature というところでシンポジウムに加わった。「asahi.com(朝日新聞社):A different face of Haruki Murakami - English」がそのときの模様を伝えている。ただし当日は録画と録音が禁じられたので正確でない部分があるだろうと思われる。

asahi.comの英語記事から村上春樹氏のスピーチ及び質疑応答を抜き出して以下に翻訳した。

ここオスロでみなさんにお会いできたことを大変光栄に思います。中には立っていらっしゃる人たちがいるようで申し訳ありません。ここは狭いので次回はオペラハウスを借りたいですね。ここはまるで東京の地下鉄の車内みたいです。

最初にノルウェー「文学の家」のみなさんにお礼を申し上げたいと思います。みなさんが僕と妻をオスロという美しい町に招待してくださり、ここに5週間滞在することができました。

この夏は僕の人生の中で最も涼しい夏です。日本の蒸し暑い夏がちょっと恋しくなってきますね。あ、いや、これは冗談です。まったく恋しくありません。

日本では今年熱中症で入院している人たちがたくさんいるらしいです。全く恋しいとは思いません。僕と妻はノルウェー滞在を楽しんでいます。

僕たちはクルマを借り、ノルウェー各地をドライブしています。フィヨルドも見ました。

ドイツからたくさんのキャンピングカーが来ていますね。いろんな種類のキャンピングカーがあるもんです。

それはともかく、前回このオスロに来たのは1999年でした。当時寿司屋を見つけるのは難しかったですが、今はどこでも見かけます。

この上品で美しい町に何が起きたんでしょうね。

以下は質疑応答。

質問者:「1Q84」について話してくだされば幸いです。

村上:ジョージ・オーウェルは「1984」を書きました。未来を描いた話です。彼はあの本を1949年に書いていますが、1949年は僕が生まれた年でもあるのです。

でも僕が去年書いたのは「1Q84」です。過去を描いた本です。

つまりオーウェルと僕は全く同じ年のことを正反対の方向から描いている。

僕は未来の小説を書きたくなかった。なぜかというと未来を物語るのは大抵退屈きわまりないから。

たとえば「ブレード・ランナー」とか、あるいは「ターミネーター」のような、ああいうのはいつも暗くて雨が降る。そして悲惨です。

僕が書きたかったのは過去、最近の過去です。

これは再生産ではなく再創作です。

僕が書きたかったのは「ありえたであろう世界」です。

なぜかというと、こういうわけです。僕はいつも僕たちが住んでいるこの世界が現実でないと感じている。非現実だという感じがする。

9.11以後そのような感情は世界中に広まりました。

ツインタワーが崩れた映像があります。あの有名な映像。だけど僕はあの映像は完全すぎると思う。華々しすぎる。現実すぎる。コンピューター・グラフィックスみたいな映像です。

僕は、これとは違う世界がありえたであろう、どこか別の場でこれとは違う世界がありえたであろう、という気がします。

それはこの現実の世界よりも現実的なんです。現実と非現実。両者が同時平行的に存在している。

そういう感覚。人々はそういう感覚をいだいていると僕は思うのです。

9.11がなかったらアメリカの大統領は違う人がなっていただろう。イラクには侵攻しなかっただろう。

そのような世界は僕らが今いるこの世界とは違っていたはずです。非常に超現実的。僕が「1Q84」で書きたかったのはそういう感情です。

質問者:村上さんは小説を書くことの力を信じていますか?

村上:僕は物語の力を信じています。なぜかというと物語は僕たちをどこか意味のある場所に連れて行ってくれるからです。

僕は書き始めるときいつも何の考えもないです。全くの空白です。僕は自分の中にある暗闇に潜り込み、物語を見つけ出す。それをこの現実世界に運び出し、フィクションに変える。

その力のおかげで僕は生きているんだと思います。

質問者:「ノルウェイの森」以後村上さんはとてつもない成功を収めました。世界中であなたの作品が読まれています。このようなことは村上さんを脅えさせはしないのですか?

村上:僕の作品は46言語に翻訳されています。スペインでは4つの言語で翻訳が出ています。

去年バルセロナに行ってサイン会をやりました。1,000人以上の人たちが書店にやって来ました。非常に驚きました。

で、バルセロナの女の子たちが「キスしてくれ」と言うんですね。彼女たちはかわいいから、僕は「うん、いいよ」と答える。

でも出版社の人は「村上さん、時間がありません。キスはほどほどにお願いします」と。それに対して僕は「いいじゃないか。女の子のお願いに応えるのは男の義務だよ」と。

いまだになんであんな素晴らしいことが起きたのかわかりませんね。

質問者:ノルウェーについてどう思いますか?

村上:難しい質問ですね、僕はノルウェーに4週間ほど滞在してるわけだけど。

ある日僕はワインを買いにスーパーに出かけたんです。しかしそこにはワインがなかった。ワインはワイン専門店に行かなければ買えない。僕はあらためて専門店の場所を確認し、そこに行ってワインを買った。でもこれノルウェーの話じゃなくてワインの話になってますね。

ここには良いビアガーデンがあります。妻と僕は毎日のように行っています。

質問者:ノルウェー・スタイルのマラソンについて一言お願いしたいんですが。

村上:はい、ノルウェーにはジョギングをやる女性がたくさんいますよね。Grete Waitz はノルウェー人だと思うんですが、彼女の走りは美しい。今度の10月には日本でトライアスロンがあるので僕も練習しないと。

質問者:村上さんはノルウェーにずいぶんといらっしゃっていますよね。私たちとしては「ノルウェイの森2」を期待していいですか?

村上:1999年僕がここに来たときオスロの書店でサイン会をやりました。

僕は "Norwegian Wood" と題した小説を書きました。でも僕は実際にはそのタイトルが何を意味するのかわかっていません。ノルウェーの森? ノルウェーの木? ノルウェー家具の材木?

イギリス人とアメリカ人はみんな「あのビートルズの曲はノルウェー家具を歌っているんだよ」と言う。でも日本では "Norwegian Forest" (ノルウェーの森) と訳されてる。どちらが正しいのかわからないです。

質問者:村上さんは三島由紀夫のような日本文学の古典にうんざりしていると語っていますよね。なぜでしょう?

村上:日本ではイカとタコを食べます。ノルウェーでは食べますか? 僕はタコよりもイカが好きです。なぜイカのほうが好きか。それについて特に理由はありません。

質問者:好きなパスタソースを。

村上:それ質問ですか? 僕はジェノバ・ソースが好きですね。松の実を加えた緑色のソース。でも僕はトマト・ソースをつくるのが得意なんです。おいしいですよ。

質問者:この滞在期間中にノルウェーの作家に興味を持たれましたか?

村上:はい。先週ストックホルムに行ったんですけど…

(村上氏は間違えてスウェーデンの作家についてしゃべろうとしているのだろうと気づいた観衆がここで爆笑)

すみません、オスロ空港でした! そこで1冊の本を見つけました。これが非常に良かった。なぜ良かったかというと、著者が物語を語ることに徹しているから。実に詳細に描写している。しかし彼は説明をしない。素晴らしい。

質問者:ヘアコンディショナーはどこのものをお使いですか? 私たちはいつもあなたの髪型を見とれてしまうのです。

村上:自分の髪型に見とれたことはないなあ。今は Helsinki Formula というヘアコンディショナーを使ってるけど。

質問者:村上さんは早起きなんですよね。夜もふけてまいりましたので村上さんは寝る時間です。そこで最後の質問。それはどのように終わるのですか?(後注)

村上:僕の書く小説の結末はたいてい何ら制約がなく不明瞭です。これを不満に思う人もいます。

僕は物語がいつ終わるのかわからない。僕が知りうるのは物語はいつか終わるということだけ。そう感じたとき僕は物語を終わらせる。

でも1年後2年後あるいは10年後になって僕はこう思うときがあります、「物語を続けるべきだった」と。僕がふたたび書き始めたのはその物語が終わった場所です。

後注:「それ」が何を示すのか不明。原文は "it" になっている。おそらく小説「1Q84」のことを言っていると思われる。

蓮池薫氏の自伝

以下は新潮社のPR誌「波」2010年8月号の蓮池薫さんの連載「拉致と決断」からの引用。誤字と思われる箇所があるがそのままにした。この連載はまだ続いている。いずれ新潮社が書籍化するだろう。

憤りと苦悩の末、生きるがために日本へ帰る思いを一旦断ち切ってしまうと、自然に周りのことが見えてきた。朝鮮半島というところが、いつ戦争が起きても不思議ではない、危険極まりないところであることに気づかされたのだ。

テレビでは興奮した面持ちのニュースアナウンサーが、米韓の「軍事的挑発」を非難し、戦争の危機感を煽っていた。1980年代初めごろ、首都のピョンヤンではようやく2, 3世帯に1台程度のテレビ普及率だったが、午後8時のニュースが終わって、みんなが画面の前に集まる「ゴールデンタイム」になると、朝鮮戦争や抗日武装闘争を背景にした戦争もの映画がよく放映された。勝利や革命同志のためにわが身を犠牲にする勇士の姿が、脳裏に深く焼きつくように、繰り返し映し出されたのだ。

招待所の外へと耳を澄ませば、軍用機の飛行音や夜間移動の戦車の轟音、竹を割るようなせわしい自動小銃音がどこからともなく響いてきた。平時でも、山の谷間など、いたるところにある軍事訓練場では、正規の朝鮮人民軍はもちろん、準軍隊である人民警備隊や予備兵である労農赤衛隊、赤い青年近衛隊などが定期的に射撃訓練を行っていたのだが、情勢が緊張するとその頻度は一挙に高まった。また外出時に目につくものといえば、茶色や緑の軍服をまとった軍人であり、わがもの顔で一般道路を走る、黒いナンバープレートをつけた軍用車だった。緊張感というもの、戦争というものが、否応なしのものとしてわが身に迫ってきた。

ピョンヤン普通江のほとりにある「祖国解放戦争勝利記念館」(通称「戦勝記念館」)を参観したときに、軍服姿の女性講師から流暢な日本語で聞かされた言葉は、他人事としてしか戦争を知らなかった私に大きな衝撃を与えた。
「必ずもう一度、われわれはアメリカと戦争することになります。その日のために準備しましょう」
(拉致されたうえに、戦争に巻き込まれてしまうのか)
そう思うと、口惜しさ、やるせなさがこみ上げたものだ。

(中略)

ところが90年代に入って情勢は一変する。ソ連をはじめとする東欧社会主義国家がドミノ現象的に崩壊し、北朝鮮を支持支援する国がなくなった。改革・開放政策を進める中国も、以前のような「血と血で結ばれた」盟友として北朝鮮を優遇することはなくなっていった。

(中略)

旧ソ連や中国の後ろ盾もなく、しかも軍事的にかげりが見えてきた北朝鮮に対し、アメリカがいつ戦争をしかけてくるかわからない、そんな声は北朝鮮社会に強い説得力、現実味を持って浸透して行った。

北朝鮮はこのような国家的危機を、対日、対米関係の改善によって逃れようとした。

対日関係では、90年9月に金丸訪朝があり、対日接近ムードが一挙に膨れ上がった。それまで自民党政権を「日本反動の元凶」として厳しく攻撃していた労働新聞が、「日本を繁栄させた」として、その功績を讃える記事を掲載する一方、「退廃的なブルジョア文化の先鋒」である日本の映画を北朝鮮の中央テレビが放映した。さすがに公開されたのは、思想的に無難な「雪女」(日本での映画名は「怪談」かもしれないが、朝鮮語の字幕では「雪女」と紹介されたと記憶している)と、北朝鮮への帰国事業を含め在日朝鮮人の生活ぶりを肯定的に描いた「キューポラのある街」の2本だけだったが、当時はまだ韓国でも日本映画が一切公開されていない時期だった。この公開については、韓国の各層から強い非難が出たと後日、知った。驚きの連続だったが、この日朝の接近ぶりは、私にとって決して手放しで喜べるものではなかった。関係が改善して、多くの日本人がピョンヤンに来るようになれば、知られてはならない拉致被害者の存在は、ますます隠蔽されてしまうのではないか、そんな不安があったからだ。

それはともかく日本から得る賠償金が国の危機的な経済を建て直してくれるかもしれないという期待が、北朝鮮社会にひそかに高まる中、日朝国交正常化交渉は開始されたが、事前の雰囲気とは異なって最初から難航し、92年11月第8回交渉を最後に頓挫してしまう。北朝鮮の言い分では「日本側がありもしない拉致問題を持ち出したため」だった。

    *

米朝関係は幸先こそ悪くなかった。

91年12月末に北朝鮮と韓国が朝鮮半島非核化宣言で合意したため、当時のブッシュ政権は翌92年1月、それまで韓国で毎年行ってきた、そして北朝鮮が何よりも警戒していた「チーム・スピリット」の中止を表明した。

北朝鮮は、92年1月に金容淳書記を北朝鮮高官として初めてニューヨークに送り込み、米朝高位会談を行い、その結果に基づいて、IAEA(国際原子力機関)の核査察を受け入れるなどの保障措置協定の締結を決めた。これによって米朝関係には、改善の兆しが見えたかのような気がした。

ところが、その核査察の結果、北朝鮮の核開発にさらなる疑惑が生じると、アメリカはふたたび強硬な態度に出て「特別査察」を求め、これに反発して北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)から脱退してしまう。

さらにアメリカが1年間中止していた「チーム・スピリット」の93年春の再開を発表すると、北朝鮮指導部は、超強硬姿勢に転換したのだ。北朝鮮の雰囲気は、一挙に緊張を増した。宣戦布告とも取れるような激した口調の女性アナウンサーが声明、談話、論評を連日伝え、準戦時態勢へと一挙に傾斜していった。アメリカを糾弾する集会、戦争に備えて前線に駆けつけようとする若者たちの決起集会が開かれ、「米帝を叩き潰そう」という勇ましいシュプレヒコールがあちこちで叫ばれた。

群集集会は、ピョンヤン市内を皮切りに各道で大規模に行われたあと、勤労者組織や農民組織、大学生など若者の属した青年同盟にも広がり、最後は個々の職場、学校でも行われた。燃料不足が叫ばれるなかでも、戦車部隊の轟音は一転して高く鳴り響き、銃砲の射撃音もより激しさを増した。サイレンの音とともに一斉に家の窓を黒いカーテンで覆う灯火管制訓練を、招待所でもするようになったのは、このときが初めてだったと記憶している。それまでの緊張とはまったく質が違っていた。戦争が一歩一歩近づいていると私は肌で感じた。

【蓮池薫「拉致と決断」 @ 「波」(新潮社)】

雑誌「波」の写真

青空キンドル徹底活用

Amazon Kindle で青空文庫のPDFを読めるようにする青空キンドル。通称「青キン」。IPA明朝フォントが E Ink でよく映える。液晶でこれを見ても全然うれしくないだろう。青キンは青空文庫で公開されている著作権が消滅した文学作品だけでなく自前のプレーンテキストもPDFにできる

Kindleの写真

縦書きの場合アラビア数字よりも漢数字のほうが見やすい

星海社の「最前線」というWebサイトが数日前始動した。DRMフリーの小説と漫画がいくつか公開されている。こういうのを青空キンドルで縦書きPDFにすると感動する。

その「最前線」に元長柾木氏の「星海大戦」というSF小説がある。これを青キンでPDFにする際にやっておくと幸せになれることを以下に書き連ねてみる。

この小説はWeb上では当然横書き表示だ。青キンはこれを縦書きに組み換えてPDFにしてくれる。長音記号の横棒は縦棒になる。問題は数字だ。アラビア数字を縦書きにするとあまり美しくないので漢数字にしたい。つまり「0, 1, 2, 3, 4...」を「〇、一、二、三、四…」に置換したい。青キンで置換できればいいんだけど残念ながらそういう機能はない。

アラビア数字を漢数字に置換するソフト

そこでテキストエディタ上でアラビア数字を漢数字に置換するわけだ。まず「0」を「〇」に置換し、次に「1」を「一」に置換し、次に「2」を「二」に置換し…

…ああ、面倒くさい。この作業を10回やらなければならない。Webで見かける文章の英数字はシングルバイトとマルチバイトのチャンポンがけっこうある。ゆえに下手すれば20回の作業になってしまう。これをなんとか1回の処理で済ませたい。それには自分でプログラムを組むか、人のプログラムをコピーして適宜改造しなければならない。しかしオイラはそういう方面の知識はないので「連続全置換さん」という専用のフリーウェアを使うことにした。

「連続全置換さん」が処理できるのはファイルとして保存された状態のテキストだけ。Shift-JIS以外の日本語は化ける。でも便利だよ。

ルビの青空文庫形式は《なんとかかんとか》

星海社「最前線」に置いてある小説のソースを見て気づいたんだけど、漢字のルビがHTMLのRUBY要素として指定されてるんだよね。ブラウザ上でコピーしてテキストエディタに貼りつけると、ルビが括弧で囲まれた状態になってる。たとえば

艦隊旗艦烏羽玉(うばたま)艦長

というふうに。これを青空文庫の書式に従って

艦隊旗艦|烏羽玉《うばたま》艦長

と書き改めると青空キンドルはルビを振ってくれる。つまり縦書きPDF上では「烏羽玉」という文字列の右隣に「うばたま」という小さな文字列が並ぶ。

ルビ、改ページ、改丁、字下げなどの指定方法は「青空文庫 組版案内 ≫ 注記一覧」が詳しい。

Kindleの写真
この写真は元長柾木著「星海大戦」を青空キンドルにしてKindleで読んでいるところ

関連

  • PDFの改行コード削除とKindle
    PDFからテキストをコピーし、ある条件に従って改行コードを削除し、MobiPocketやePubにする。
  • Vector:clipsed - お勧めソフトPickUP
    正規表現をあまり知らない人でもなんとか使いこなせるソフト。まあ、正規表現にもとづく文字列置換は大抵のテキストエディタで可能なのだけど…

米国は中国の希土類独占をどう見ているか

希土類とは何か

希土類またはレアアース (rare earth elements, REE) と呼ばれる地下資源がある。電気自動車や携帯電話といった民生品だけでなく原子炉やミサイル誘導装置などにも使われる。この物質は偏在する。中国が独占していると言ってよい。2009年は中国だけで世界の生産量の97%を占めた。

そして数ヶ月前(2010年7月)中国政府は希土類の輸出枠を減らすと発表した。ゆえに市場価格が高騰している。数日前には昭和電工が「ショウロックス」を値上げするらしいというニュースが飛び込んできた。ショウロックスは液晶パネルのガラス基板の表面研磨に使用する酸化セリウム質研磨材であり、希土類が原料である。

下のテーブルは希土類について2010年にUSGS(アメリカ地質調査所)が発表した2009年の統計。この特異な資源が中国に集中して偏在する現実がはっきりとわかる。アメリカにも鉱床はある。かつてアメリカでも希土類を生産していた。だが現在の生産量はゼロだ。なぜかというと、ようするにつまりすなわちコストの問題だ。

国名生産量生産量の割合埋蔵量
中国120,000トン97%3600万トン
インド2,700トン2%310万トン
ロシア0トン0%1900万トン
米国0トン0%1300万トン

米国議会に提出された報告書

エネルギー政策のアナリスト・マーク・ハンフリーズ氏 (Marc Humphries) が "Rare Earth Elements: The Global Supply Chain" という報告書を先週アメリカ議会に提出した。ここから垣間見えるのは、中国が希土類を独占していることについてアメリカがどう思っているか、今後どうしようとしているか、ということだ。

まずは報告書の概要の全文。英語の原文を翻訳した。誤訳ご容赦。

概要

希土類が合衆国外に集中していることは供給の脆弱性という重要な問題をはらんでいる。希土類は新しいエネルギー技術と国家の security applications に使われている。合衆国は希土類の供給の混乱について脆弱だろうか? 希土類元素は合衆国の安全保障と経済的な安定に不可欠だろうか?

希土類には17種類ある。15の元素から成る「ランタノイド」と呼ばれるグループ、及びスカンジウムとイットリウムである。ランタノイドはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムから成る。希土類は地殻に豊富に存在し、銅、鉛、金、プラチナよりも多いものもある。このように豊富にあるとはいえ希土類は低コストで採掘できるほど一箇所に集中していない。合衆国はかつて自国内の希土類の産出量が多かったため自給率が高かったが、過去15年間で100%輸入に頼るようになった。合衆国に希土類を輸出しているのは主として中国である。これは中国産が安上がりであることによる。

合衆国では希土類の生産は行われていない。合衆国に本社を置く企業Molycorpはカリフォルニア州マウンテンパスで希土類を分離するプラントを持ち、かつて採掘が行われていた地上のストックから希土類の濃縮物と精製された製品を売っている。そこではネオジムとプラセオジムとランタン酸化物がさらなる処理過程に行くが、合衆国ではこれらの物質が希土類金属に変えられることはない。

希土類にはさまざまな用途がある。すなわち自動車の触媒変換、石油精製過程における流動式分解触媒、カラーテレビとフラットパネル・ディスプレイ(携帯電話、DVDプレーヤー、ノートパソコン)で使用する蛍光体、永久磁石、ハイブリッドカーと電気自動車の充電可能な電池、風力タービン発電機、及び多くの医療器具である。さらに国防関連の非常に重要な用途がある。すなわちジェット戦闘機エンジン、ミサイル誘導システム、対ミサイル防御システム、及び宇宙衛星通信システムである。

世界的に希土類の需要は年あたり134,000トン、生産量は年あたりおよそ124,000トンと見積もられている。不足分は採掘ずみのストックで補われる。不足を補う新しい鉱床が発見される見込みは短期的にはないが、需要は2012年までに180,000トンに昇ると見られる。新しい鉱床の計画が実際の生産に至るには優に10年かかる。しかしながらUSGSの予想によれば、長期的には地球上の埋蔵量と未発見の資源は十分に需要を満たすという。

希土類の国内生産を促すため H.R. 4866 (Coffman) 法と S. 3521 (Murkowski) 法が施行されている。これらは国家の安全保障とクリーンエネルギー技術に使用される希土類物質とそれが用いられる製品に対する議会の関心によるものである。

Rare Earth Elements: The Global Supply Chain (PDF), report by Marc Humphries】

続いて詳細な分析があるが長文なのでここでは省略する。

なぜ中国は希土類の輸出に消極的になったか。中国共産党は希土類がいずれ石油のような戦略物資になるだろうと考えていた。石油や穀物のメジャーのような強い力を得たいと思ったのだろう。既に1950年代から採掘と精錬に取り組んでいた。原料だけ輸出するのではいつまでたっても国家として経済的に自立できない。希土類を使って工業製品をつくって売ったほうがいいに決まっている。そんなわけで希土類は中国国内の企業に優先的に行くことになる。

以上をふまえてマーク・ハンフリーズ氏は報告書の中で希土類についてアメリカがどうすべきか提言する。誤訳ご容赦。

考えられる政策

USGSに権限と予算を与えよ

経済的に採掘可能な希土類の埋蔵量を明らかにすること、そして副産物としての希土類が存在する場所を明らかにすることを目指して、議会は現行の2つの法律に加えてUSGS(アメリカ地質調査所)の総合的なアセスメントに予算を与えることができないか。
【中略】

希土類のさらなる調査を支援せよ

合衆国、オーストラリア、アフリカ、及びカナダに希土類の鉱床がないか探査を支援すべきである。これは広く国際的な戦略である。
【中略】

中国の輸出政策に圧力をかけよ

中国の輸出制限に関してWTOで圧力をかける。すなわち輸出制限を禁じたWTOルールに則った異議申し立てである。
【中略】

希土類を備蓄せよ

産業界と政府で政府の備蓄と民間企業の備蓄が主張されている。これらは賢明な投資であるといえよう。
【中略】

Rare Earth Elements: The Global Supply Chain (PDF), report by Marc Humphries】

日本の動き

日本政府がこの問題にどう対処しようとしているかはよく知らない。JOGMEC(Japan Oil, Gas and Metals National Corporation, 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)という独立行政法人が希土類の探鉱を実施する契約をカナダの探鉱会社 Midland Exploration Inc. と今年3月(2010年3月)締結している。

以下は公益財団法人「東京財団」の研究員・平沼光氏が発表した論文からの抜粋。1) 中国のプロジェクトに積極的に参画、2) 輸出規制に関してはWTOなどの場で他国と協力して中国に圧力をかける、3) 代替資源の開発及び希土類のリサイクル技術の確立 — という内容。

  • 供給国(中国)への協力を促進する施策~広東省での資源開発、利用、リサイクルまで一貫した協力による資源獲得~
    技術と資源をバーターにする個別交渉を行うのではなく、中国(広東省)の資源エネルギー政策に深くかかわる形の協力を行う事で日本無しでは政策の遂行に不具合が生じると言うところまで関係を構築すると言う、協力するからにはこちらもハンドルが握れるよう徹頭徹尾やるという事だ。
  • 需要国との連携を促進する施策~国際的な枠組みを利用した中国との交渉~
    日本と供給国(中国)の二国間では協力の姿勢を示し、厳しい要求は国際枠組みを通して間接的に主張するという、いわゆる飴と鞭の二面性を持って対処するという方針だ。二国間協力において日本の申し入れが通っている際には国際枠組みからの圧力の手を弱め、逆に、日本の申し入れを受け入れてくれない際には需要国と連携し国際枠組みからの圧力を強めると言うバランスをとった対処法である。
  • 日本の技術開発の促進とその国際周知を促す施策
    翻ってみればリサイクル技術や代替技術等の新技術が開発されれば問題は解消するのであり、それは時間の問題であるとも言え、日本としてはリサイクル技術や代替技術等の新技術の開発を可能な限り早くすると言うのが単独で取り組める事と言える。そのために日本は技術開発に今以上に資金と人材を投入するべきであるのは言うまでもないが、大事なのは“日本が本腰を入れて新技術の開発に取り組んでいる”という事を国際社会にアピールするという事だ。
レアアース輸出規制を強める中国への対処法(東京財団研究員平沼光)|記事|政策研究・提言 - 東京財団 - 東京財団 - THE TOKYO FOUNDATION

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2010年夏の写真

もう暑くなることはないだろうと思っていたらなんと35度ぐらいまで気温が上昇。今日は9月12日だぜ。暑気払いに原チャリで海や山に出かけ、写真を撮ってきた。

マメ科の花
海岸で。雑草だけど、きれいな花。マメ科。名称不明。

スイレンの花
山の農業用水で。近寄れなかったのでピンボケになったスイレンの花。

アメンボ
山の農業用水で。絶滅が危惧されているアメンボ。あるいは貴重な写真になるかも。

トンボ
山の農業用水で。シオカラトンボかな?

蜘蛛
公園のトイレで見かけた緑色の蜘蛛。体長1cmほど。

セミの幼虫の抜け殻
山林で。こんなところでセミの抜け殻を多数目撃。

明日からは涼しくなるかな。

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Wikipediaへのコピペはどこまで許される?

Wikipediaをコピーし改変してレポートに貼りつける学生の不正行為がときどき話題になる。しかしここでとりあげるのはそれとは正反対。つまりWebサイトに書かれていることを改変してWikipediaに転載していると思われる事例。最低限の義務として出典を示すべきだと思うんだけどそれをやっていない。

仮にこれを著作権侵害と呼べるとするなら著作権を侵害された被害者は金岡新さん(本名は浅野典夫)。以下は彼が書いた「世界史講義録」内の「フランス革命1」「フランス革命2」とWikipediaの比較。
(Wikipediaの記述は2010年08月31日の時点のもの)

フランス革命1フランス革命2 @ 世界史講義録フランス革命 - Wikipedia

 一方でアンシャン=レジームに対する批判も高まってきます。
 その一つが、啓蒙思想の流行です。啓蒙思想というのは、理性の力によって迷信や偏見を打破して、社会不正を改革しようとする合理主義的思想です。

 啓蒙思想家で一番有名なのがヴォルテール(1694~1778)。もともとは詩人ですが、フランスの政治体制や社会不正を徹底的に告発して有名になる。貴族にもかれの支持者がいるというところが面白いところで、ポンパドゥール夫人は、フランスの政治を批判して、亡命していたヴォルテールがヴェルサイユ宮殿に出入りできるように取りなしていたりする。プロイセンのフリードリヒ2世が、ヴォルテールのファンで、ベルリンに招いたこともあった。
 『社会契約論』の著者で人民主権を唱えたルソー(1712~78)も、同時代の啓蒙思想家の一人です。これら啓蒙思想家264人が集まってつくった百科事典が『百科全書』です。
 『百科全書』の編集責任者がディドロ、ダランベール。『百科全書』の出版は当然、政府当局の妨害をうけるのですが、政府の役人のなかにも、こっそりかれらの出版を援助する者もいる。実際に刊行されると、ポンパドゥール夫人の机の上にのる、というわけです。
 貴族も啓蒙思想に時代の流れを感じていたということでしょう。

 また、アメリカ独立宣言も、アンシャン=レジーム批判に大きな影響をあたえた。

一方でアンシャン・レジームに対する批判も、ヴォルテールやルソーといった啓蒙思想家を中心に高まっていた。自由と平等を謳ったアメリカ独立宣言もアンシャン・レジーム批判に大きな影響を与えた。

 ルイ16世の時代、国家財政の赤字増大が大きな問題になっていました。
 国家財政の収入が5億リーブル、支出が6億2千リーブル、財政赤字は45億リーブルになっていた。収入の9倍の赤字をかかえていたわけです。

 赤字がふくらんだ原因は何か。
 まず、ルイ14世時代以来の対外戦争の出費。これをルイ16世の時まで引きずっていたのですね。
 それから、アメリカ独立戦争を援助したことも、赤字を増やしました。イギリスに打撃をあたえるためにアメリカの独立に手を貸したのはよいけれど、その結果領土が増えたわけでもなく、何の見返りもなかったわけです。

 さらに、宮廷の浪費。マリー=アントワネットの浪費は国民の反感をまねいていましたが、国王だってすごい。たとえば、ルイ16世が所有している馬車は217台。馬が1500頭。馬の世話というのは、ものすごく大変です。1500頭の馬を飼っているということは、飼育係もそれ相応の人数が必要ということです。狩猟のための猟犬が1万頭。宮殿で使うローソク代だけで数万ルーブルかかったという。
 無駄な出費とわかっていても、国王となると体面もありますから、簡単にやめることもできないのです。

 このままでは、国家財政の破綻は目に見えている。ルイ16世は財政改革をおこなう決意をします。財政改革をおこなわせるために、財務長官に任命されたのがテュルゴー。
 財政改革をおこなうためには、貴族階級の特権を制限せざるをえない。当然、貴族たちは財政改革に反対して、テュルゴーは十分な仕事ができないまま、財務長官をやめさせられた。
 そのあと、財務長官に任命されるのが銀行家出身のネッケルです。

1780年代、フランスでは45億リーブルにもおよぶ財政赤字が大きな問題になっていた。赤字が膨らんだ主な原因は、ルイ14世時代以来の対外戦争の出費、アメリカ独立戦争への援助、宮廷の浪費である。当時の国家財政の歳入は5億リーブルであり、歳入の9倍の赤字を抱えていた事になる。そこで当時の国王ルイ16世はテュルゴーを財務長官に任命し、財政改革を行おうとした。第三身分からはすでにこれ以上増税しようがないほどの税を徴収していたので、テュルゴーは聖職層と貴族階級の特権を制限して財政改革を行おうとした。しかし貴族達は猛反発し、テュルゴーは十分な改革を行えないまま財務長官を辞任する。

ルイ16世は次にネッケルを財務長官に任命した。

 プロイセン軍がパリにせまってくると、政府は「祖国の危機」を全土に訴える。このままでは、革命はつぶされる、フランス国民よ、祖国を守れ、革命を守れ、というわけです。この訴えにこたえて、フランス全土で義勇兵が組織されて、パリに結集した。このとき、マルセイユからやって来た義勇兵が歌っていた歌が「ラ=マルセイエーズ」。のちにフランス国歌となる。

 せまる外国軍、集まる義勇兵。緊張が高まるなかで、敵は外にいるだけか、これだけフランス軍が負けつづけるのは、フランスの内側にも敵がいるからではないか、と誰もが思いはじめた。そういう疑惑は以前からあったのですが、緊張感のなかで、生活難に苦しむ貧しい市民たちの、そういう想いが爆発します。

 1792年8月10日、パリ市民と義勇兵は、王宮を攻撃した。フランスの本当の敵は王に違いないと考えたのです。国王は王権を停止されて、一家は全員タンプル塔に幽閉されてしまった。
 これを8月10日事件という。

プロイセン軍が国境を越えてフランス領内に侵入すると政府は祖国の危機を全土に訴え、それに応じてフランス各地で組織された義勇兵達がパリに集結した。このときマルセイユの義勇兵が歌っていた歌『ラ・マルセイエーズ』は後のフランス国歌となった。パリ市民と義勇兵は、フランス軍が負ける原因はルイ16世とマリー・アントワネットが敵と内通しているからだと考え、8月10日にテュイルリー宮殿を攻撃し、王権を停止して国王一家を全員タンプル塔に幽閉した(8月10日事件)。

他にもあるけどキリがないのでこれだけにとどめておく。

似ているのは細かな言葉遣いだけではない。論理展開が笑ってしまうぐらい酷似している。事実関係の記述の順序は全く同じと言ってよい。

誤解のないよういちおう言っておくと、Wikipedia「フランス革命」の記述すべてが金岡さんの「世界史講義録」とそっくりであるわけではない。あくまでも部分的にそっくりなのだ。さらに言えばこれを「著作権の侵害」と呼んでいいかどうかはわからない。でもこれが音楽の世界だったら小林亜星さんが怒って記者会見やるだろうね。

以下は考えられる可能性。推理。

  1. 何らかのオリジナルの文献があり、金岡新さんとWikipedia執筆者はいずれもそれを参考にした。そのため結果的に両者の文章が似てしまった?
    Wikipediaには参考文献としてジョルジュ・ルフェーブル著「1789年 - フランス革命序論」(岩波文庫)と平野千果子著「フランス植民地主義の歴史 - 奴隷制廃止から植民地帝国の崩壊まで」(人文書院)があげられている。このふたつの本を読んだが、コピペされた形跡はないと断言できる。
  2. 金岡さんがWikipediaを参考にして「世界史講義録」を書いた?
    両者の記述を比較した上記テーブルを見ればどちらが先に書かれたのかは一目瞭然だと思う。ちなみに金岡さんは名古屋大学文学部史学科を卒業し、同大学院修士課程を修了し、大阪府立高校で社会科教諭をやっており、さらに筑摩書房から「ものがたり宗教史」という本を出している。そういう人だ。
  3. Wikipediaの「フランス革命」執筆者のうちの誰かが出典を明らかにしないまま金岡さんの「世界史講義録」を改変して記述した?
    やはりこれが真相ではなかろうか。

何かの文献を参考にしてWikipediaを編集するなら出典を明記するのが常識だとオイラは思い込んでいたんだけど違うのかな? 仮にそうなら心当たりがある人は引用文献または参考文献として金岡新さんの「世界史講義録」の名をWikipediaに記載すべきだと思う。今からでも遅くはないよ。そして改変は絶対やるべきではない。

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文献の引用に関するWikipediaの見解。

(同一性)原則として被引用文を改変しないこと

被引用文は、原則として一切の改変をしてはいけません。著作物の改変は、同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害するおそれがあり、引用する場合も同様(著作権法50条)であるためです。そもそも、被引用著作物が信頼できる情報源であると判断して引用するのですから、改変する必要はないはずです。
たとえば、句読点・改行・送り仮名などの変更も認められません。

Wikipedia:引用のガイドライン - Wikipedia

(出所表示)被引用文の出所を明示していること

被引用文の出所明示は著作権法上の義務でもありますが(著作権法19条1項、48条1項1号)、出典を明記し、検証可能性を確保するというウィキペディアの執筆方針上も必要です。

Wikipedia:引用のガイドライン - Wikipedia

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