ArtSaltのサイドストーリー

音楽、フリーウェア、WEBサービス、食べものなどに関する日記。トラックバック、コメント歓迎。

ネイティブはなぜ発音記号どおりに英語を話さないのか?

語学の教材でしゃべる英語のネイティブは日本人向けに美しい発音で話してくれるけど実際の会話ではダラダラボソボソと聴こえることが多い。なぜネイティブは発音記号どおりにしゃべらないのだろう? ここでは実例を出して音変化(おんへんか)していく過程と仕組みを推理してみた。こういう規則性を知っておけばリスニングにも役立つと思う。

2013/12/27追記

(追記ここから)

紹介している音声ファイルは Real audio 。これを再生するメディアプレーヤーは非常に限られているのでMP3に変換し、そこから各例文を短く抜き出し、そのMP3ファイルのリンクを貼った。

(追記ここまで)


ニュージーランドの国旗

英語学習WEBサイトをやっている人たちは「発音記号(国際音声記号)を覚えましょう」みたいなことをよく言う。でも実際の英語ネイティブは発音記号どおりにしゃべってくれるわけではない。

自分はアメリカ英語の発音に慣れてしまったのでイギリスやオーストラリアやニュージーランドの人たちの話す言葉を聴き取るのが苦手だ。彼らが発する meet が「メイト」、perceive が「パセイヴ」、jacket が「ジャカ」、"isn't it?" が「イズナ?」となるような規則性を最近ようやく把握した。彼らの話す英語を発音記号(正確には国際音声記号と呼ぶのかな?)で表すのは簡単ではない。meet が「メイト」になるなら [meit] という発音記号で表記できるだろうか? いや、できない。ニュージーランド人らしき人たちが発する meet はアメリカ人の発する mate [meit] とは全く違う音だ。

meet が「メイト」になるようなお国訛り(なまり)とは別に、英語にはもう少し違う次元での音変化がある。このエントリーでは主として "an apple" が「アナポー」→「ナポー」→「(ン)アポー」 ([ən æpl] -> [n æpl] -> [(n) apl]) になるような一見不可解に見える変化を観察してみたい。

具体論に入る前に一般論みたいなものを並べておく。英語の発音の変化の仕方。

  • 母音の消失または癒合または収斂が起きる。
  • 子音の消失または癒合または収斂が起きる。
  • 無音に近くなる。
  • そのほか。

大事なのは、このような現象が起きやすいのはストレスが置かれない部分である、ということ。強く発音する部分ではこういうことはあまり起きない。

音の「高低」が意味の違いにさえ結びつく日本語とは対照的に英語は音の「強弱」が大きな意味を持つ。そしてリスニングの訓練で重要なのは「強く」発声される部分ではない。逆だ。「弱く」発声される部分をいかに聴き取るかが重要になる。「弱く発声される傾向があるのはどういう語か?」というポイントを押さえておけば訛る部分のリスニングも容易になる。ついでに言えばこういう知識を得ておけばネイティブっぽく話すスピーキングの訓練にも役立つ。

以下は自分用メモ。ここ数ヶ月英語の教材として利用させていただいているWebサイト「英語伝」の「Catch a movie 映画を見よう -EIGODEN-」から実例を引用する。

音声のURLはこちら。再生するには Real Player または Real Alternative が必要。
www.eigoden.co.jp/listening/quiz/sound/quiz030203/quiz030203.rm

ニュージーランド英語(オーストラリア英語?)っぽいものが聴こえてくる。ここから妙な発音をいくつか抜き出してみる。

"Why don't we" [wɑi dount wi:] を [wɑi n w] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「ワエ・ン・ウ」。

最初に取り上げるのがこれ。"Why don't we catch a movie?" ←なぜこれが「ワエ・ン・ウ・ケチュ・イ・ムーヴィー?」に聴こえてしまうのか? この謎を解き明かしたい。

まずは don't の読みが [dount] から [n] になる理由。これは [doun] -> [dn] -> [n] という順で変化したと解釈できる。don't に含まれる3種類の子音 (d, n, t) がいずれも「舌の先端を上顎歯茎の内側に付ける」タイプであることから起きてしまった現象だ。母音 [ou] が消失して [d, n, t] が1個の音 [n] に収斂すれば [dount] が縮まって [n] になる。

そして we の読みが [wi:] から [w] になる理由。これは母音が消失したと解釈できる。

don't が [n] に縮まっても、we が [w] に縮まっても、会話する上で支障はない。なぜなら "Why don't we catch a movie?" という文章で強く発声する必要があり重要なのは why, catch, movie だけであり、"don't we" は聴こえなくてもいい部分または弱く発声する部分だからだ。

"I haven't" [ɑi hævnt] を [ɑi əvnʔ] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「アヴンッ」。

(ここでは声門閉鎖音の発音記号として疑問符みたいな形をした [ʔ] を使うことにする)。

ここで起きたのは I と have の癒合。I は子音が存在しない1個の重母音(じゅうぼいん)。そして hotel を [out'el] と発音する英語ネイティブがいることから察せられるように子音の [h] は脱落しやすい。そのため haven't の先頭の [h] が脱落すると母音 [ɑi] と [æ] が連なるので両者が癒合しやすくなる。haven't [hævnt] が [əvnt] に変化、さらに haven't の最後の音 [t] が声門閉鎖音 [ʔ] になって "I haven't" が [ɑi əvnʔ] に変化する。

already [ɔ:lr'edi:] を ['ɔ:ridi:] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「オリディー」。

注目すべきことはストレスの位置。already は第2音節にストレスを置いて [ɔ:lr'edi:] と発音するのが普通だ。でもこの男性は第1音節にストレスを置く。しかも [l] を脱落させるので ['ɔ:ridi:] になる。

already をこういうふうに発音する人は非常に少ないと思う。しかし似たような例はある。たとえば almond は "l" が黙字 (silent letter) になって ['ɑ:mənd] と発音するのが普通だけど綴りどおりに "l" をそのまま発音して ['ɔ:lmənd] としゃべる英語ネイティブもいる。だとするとちょうど正反対の現象である [ɔ:lr'edi:] -> ['ɔ:ridi:] という変化は不自然ではない。

already のストレスの位置が第2音節から第1音節に移動した謎に関しては、「まあ、人それぞれだよね」としか言いようがない。たとえば「名詞の import は第1音節、動詞の import は第2音節にストレスを置きます」と誰もが学校の英語の授業で教わったと思う。でも実際はそう決まっているわけではない。動詞の import を第1音節にストレスを置いて発音する英語ネイティブだってたくさんいるのだ。already のストレスの位置も同様に考えればいい。

remember [rim'embə] を [rim'em] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「リメン」。

これは子音の [m] と [b] に「唇を閉じる」という共通点があることから起きた現象だろう。すなわち、

[rim'embə] -> [rim'emə] -> [rim'em]

…という順でなまった。まず [m] と [b] が癒合して [m] に収斂し、続いて曖昧かつ弱く発せられる母音 [ə] が脱落したと考えられる。


勘違いする人が出てくるかもしれないので少し補足しておく。私は「"don't we" を [n w]、"I haven't" を [ɑi əvnʔ]、already を ['ɔ:ridi:]、remember を [rim'em] と発音しましょう」と言っているわけではない。実例を出した上で「実際の会話のスピードだとこういう理由でこういう音変化が起きますよ」と事実を指摘しているだけだ。

日本語でもしゃべる速度が早くなれば発音はどんどん変わる。「やると思います」をローマ字表記すると "yaru to omoi masu" だが実際の発音では "yaru to moi masu" というふうに "omoi" が "moi" に変化する傾向がある。これは「"to omoi" に連母音(れんぼいん)が発生し、そこから母音が1個脱落した現象」と解釈できる。英語でも日本語でも似たようなことが起きるわけだ。

結論

  • 英語は弱く発せられる部分をいかに聴き取るかが重要。
  • 弱く発音する部分は母音の消失または癒合または収斂が起きやすい。(例: "a hat and t-shirt" [ə hæt ənd ti:ʃərt] が [ə hæʔ n ti:ʃərʔ] になる)。
  • 弱く発音する部分は子音の消失または癒合または収斂が起きやすい。(例: t, d, l, n などが連なると収斂)。
  • 弱く発音する部分は無音に近くなりやすい。
  • 母音の連鎖は癒合または収斂が起きやすい。
  • ストレスの位置は人により異なる。

(声門閉鎖音の発音記号として [ʔ] を使った)。

関連

はてブの「あとで読む」をInstapaperに送るIFTTTのレシピ

はてなブックマークしたすべてのWebページではなく [あとで読む] というタグを付けたものだけをInstapaperに投げる。それを実現する IFTTT のレシピを書いた。このレシピをシェアしておく。


IFTTTのロゴ

「あとで読む」系ハックのアイディアはほぼ出し尽くした感があり、ここで取り上げる方法も目新しいものではないと思う。だけど自分には今のところ一番良い方法だと思うので書いておく。

最初に情報を整理しておく。IFTTTのレシピに入力するURLを決めなければいけない。

オイラ (id:ArtSalt) のはてなブックマークのページ
http://b.hatena.ne.jp/ArtSalt/
それのRSS
http://b.hatena.ne.jp/ArtSalt/rss
[あとで読む] タグを付けたオイラのはてなブックマークのページ
http://b.hatena.ne.jp/ArtSalt/%E3%81%82%E3%81%A8%E3%81%A7%E8%AA%AD%E3%82%80/
それのRSS
http://b.hatena.ne.jp/ArtSalt/rss?tag=%E3%81%82%E3%81%A8%E3%81%A7%E8%AA%AD%E3%82%80

4個のURLのうち使うのは最後のURLだけ。これを IFTTT recipe 作成ページの "Feed URL" という部分に入力する。そうすれば [あとで読む] というタグを付けたRSSだけがInstapaperに投げられる。

完成したレシピ。
IFTTT / Send Hatena Bookmark tagged "AtoDeYomu" to Instapaper by artsalt

IFTTT Recipe: Send Hatena Bookmark tagged 'AtoDeYomu' to Instapaper

これはあくまでもオイラのはてなブックマーク用です。もしもこれをご覧になってこのレシピをお使いになりたいと思った人がいらっしゃれば "Feed URL" の部分に入れるURLをご自分用のものに変更なさったほうがいいと思います。

IFTTT作成ページの様子

あとはInstapaperと Amazon Kindle の連携をやっておく。そうすれば「あとで読む」タグを付けた複数のWebページが1個のメーリングリスト(と言うのかな?)にまとめられてInstapaperからKindleに毎日定時に自動配信される。

このIFTTTレシピによってオイラのはてなブックマーク活動は具体的に言うと、

  1. iPod touch でTwitterをやっているとき(あるいはパソコンを使っているとき)などに見かけた面白そうなWebページをあとでじっくり読むために [あとで読む] タグを付けてはてなブックマークする。このとき DraftPad というiPhoneアプリを使うと非常に便利→「DraftPadのアシスト(メール、はてブ)」。
  2. [あとで読む] タグが付いたURLをIFTTTがInstapaperに渡す。
  3. InstapaperがメーリングリストみたいなものをWi-Fi経由で毎朝定時にKindleに配信する。

…という流れになっている。今のところすこぶる順調。下はKindleでInstapaperを読んでいる場面のスクリーンショット。

Kindleスクリーンショット

おまけ - InstapaperがKindleに配信するメーリングリストについて

Kindleに自動配信されるメーリングリストに関するInstapaper側の設定は以下のとおり。

Set Automatic Delivery

Send my Unread articles to my Kindle automatically

Send a compilation of up to 10 of my unread articles:
Every day at around 9 AM (GMT +9:00 Tokyo...)
(Weekly deliveries are made on Friday.)
Only if it will contain at least 3 new articles.

つまり1個のメーリーングリストに収録される記事は最大10個まで。1年につき1,200円の購読料をInstapaperに支払えばこの数を50個まで増やすことができる。

追悼:ジム・ホールの心暖まる逸話

ジム・ホール (Jim Hall) が亡くなったというニュースを昨日聞いた。ジム・ホールは私にとっては一番大好きで一番偉大なギタリストだった。本当はジム・ホールの素晴らしいギターを聴けるレコードとCD(←嫌になるくらいたくさんある!)をここにずらりと並べて思い出に浸りたいのけど今の自分は音楽をじっくり聴く機会があまりない。そんな自分を情けないと思っているのでここでは遠慮して数枚のCDに言及するにとどめておき、日本ではあまり知られていないであろう1950年代のホールの面白いエピソードを紹介しておく。


1950年代中ごろから頭角を現すことになるホールのギターはそれまでのギタリストたちのシングルトーン重視のギターとは明らかに違うスタイルだった。チャーリー・クリスチャンやウェス・モンゴメリーらに比べてジャズの歴史書で取り上げられることが少ないのが不思議だが個人的にはテナーのジョン・コルトレーンやピアノのビル・エバンズやドラムのエルビン・ジョーンズと同じぐらいのスタイリストだと思っている。ブロックコードを効果的に使う。弦の音を意図的に小さくする。使う音の数を少なくする。低い音を出す。くすんだ音を出す。ごく稀にオクターブ奏法を使う。全く音を出さない時間帯がある…などなど、ギターの音に多種多様な表情を与えることに成功したのがジム・ホールの功績だと思う。明らかにジム・ホールは新しい演奏のスタイルを作り出したのだ。

こういうギターはそれまでなかったからホールはたくさんのバンドに引っぱりだこになった。それゆえに自分自身のバンドを作ることが難しくなってしまい、1970年代に入るまでホールの名義になる吹き込みは驚くほど少ない。逆に言えば数多くの名盤のサイドマンとか共演者としてジム・ホールの名前を見ることが多くなったのでこれはこれで良かったとも言える。

1950年代から60年代までのホールの仕事を調べるとその余りにも広い活躍の場に驚く。ホールをレギュラー・ギタリストとして招聘したジャズマンの名前をざっとあげてみると、チコ・ハミルトン、ジミー・ジュフリー、ポール・デズモンド、ソニー・ロリンズ、アート・ファーマー、ビル・エバンズ等々。ジャズ界の巨人だらけだ。もちろんイレギュラーの仕事もどんどん来た。そういえばフリー・ジャズのオーネット・コールマンとの共演なんてのもあった。私はジャズ以外の音楽のことはあまり知らないのだけれど、近年はジョン・スコフィールドとかパット・メセニーらとも一緒に仕事をしていたらしい。それにしてもこれだけ様々な音楽家との共演が多いのは音楽性だけでなくホールの人徳も関係してたと思う。

たまたま今Kindleで読んでいるビル・クロー (Bill Crow) の自叙伝 "From Birdland to Broadway: Scenes from a Jazz Life" の中にジム・ホールに関する心暖まる面白い逸話が出てきたので少しだけ引用しておく。この本は村上春樹さんの邦訳(邦題は「さよならバードランド」)で知られるけど今手元に日本語版の本がないので翻訳は私が適当にやっておいた。内容から察するにおそらく1950年代後半の場面だと思う。

この本を書いたビル・クロウは1950年代初頭から活躍するベース奏者。スタン・ゲッツ、ジェリー・マリガンなどの吹き込みで彼の名前をよく見るからクロウの名前を知っている人は多いと思う。

ジミー・ジュフリー・トリオがニューヨークに来たとき僕とデイブ・ランバートはビレッジ・バンガードに聴きに行った。ギターはジム・ホール、ベースはジム・アトラス。僕らはすぐに友達になった。ジム・ホールと僕は和気あいあいで楽しい話をして盛り上がった。ホールのユーモアのセンスは抜群だった。ある晩ホールとジュフリーとボブ・ブルックマイアーが僕のアパートメントにやって来た。僕らはいろんなバカ話をした。ホールは両手を後ろに回して暖炉に寄りかかっていた。このとき僕はホールの琴線にふれるような何か面白いことを言ったらしくて、彼は爆笑して体が引きつってしまい、その弾みで左側の肩の関節が外れてしまった。ホールはあまりの激痛に涙が出そうになっていたけどそれでもずっと笑い転げていた。

ブルックマイアーとジュフリーが大急ぎでジム・ホールをセイント・ビンセント病院に担ぎ込んだ。そこには緊急治療のスタッフがいてホールの外れた肩を元に戻してくれた。ジミー・ジュフリーのトリオは次の日にスタジオのレコーディングの仕事を予定していたのでジュフリーはホールがギターをちゃんと弾けるのか心配だった。ところが肩が痛むだけでなく動かすのも難しかったにもかかわらずホールは膝をうまく使ってギターを普通に弾いてみせ、その仕事をこなした。それ以来僕はジム・ホールに面白おかしい話をするときは気をつけるようにしている。

Amazon.com: From Birdland to Broadway: Scenes from a Jazz Life eBook: Bill Crow: Kindle Store

ジム・ホールはジャズ以外のギタリストたちにも強い影響を与えたらしい。下のYouTubeで聴かれる演奏 (Art Farmer - The Reluctant Groom [Den Motstravige Brudgummen]) を聴けばその理由がなんとなくわかると思う。ホールのスタイルは明らかにジャズに興味ない層にも受けるスタイルだったのだ。これは本当にすごいことだと思う。1964年の演奏。

もうひとつ。クラリネット奏者 Bill Smith の "Greeensleeves" 。この曲が入っている "Folk Jazz" というCDを数ヶ月前買ったのだけど、既に100回以上繰り返し聴いている。個人的には1万円以上の価値があるアルバムだと思っている。1961年の演奏。

関連

英語を聴き取るのに役立つ3つの法則

最近何となくわかってきた英語のリスニングのコツ。今回ここで取り上げるのは 1) 声門閉鎖音の発生, 2) 母音の消失, 3) リンキングの曖昧化。これら3つのことを知っておくと英語ネイティブの話す英語を聴き取るのが少し楽になる。ここで言及する現象はアメリカ人の英語に特徴的なことであり、イギリスやインドやオーストラリアなどの地域には当てはまらないかもしれない。


星条旗

英語の音声学(?)とか発音学(?)とかまともに勉強したことがないのでこの記事で使っている用語にはあまり自信がない。それからここに書くことは英語ネイティブっぽくしゃべることを目的とするわけではない。スピーキングに関して言えば村上春樹みたいなひどい発音の英語でもいいのだ。ネイティブっぽく発音するための技巧の話は中二病の人たちにお任せする。だがリスニングは事情が異なる。英語ネイティブの発音を聴き取れなければ話にならないからだ。ここで説明する法則はあくまでも英語ネイティブの英語を聴き取るのに役立つ知識である。

声門閉鎖音の発生

声門閉鎖音 (glottal stop) とは声門(喉の気道?)を閉鎖した状態を言う。耳には聴こえない音だ。

たとえば英語の partner の "tn" の部分は以下のように発音するのが普通。

  • t - 舌の先端を上顎前歯の歯茎の内側に当てたまま息をとめる。この状態が声門閉鎖音。
  • n - 上記の状態すなわち上顎前歯の歯茎の内側に舌を当てた状態を維持して鼻から息を抜く。

つまり [t] から [n] への移行時に舌を歯茎から離さないというのが鉄則だ。これによって partner は「パルトナ」というより「パルッナ」みたいな発音になる。同様に forgotten は「フォガトゥン」ではなく「フォガッン」、hot inside は「ハッインサイ」みたいな発音になる。

声門閉鎖音の例で有名なのがロンドンのコックニー (Cockney) なまりの water の発音。[t] の音が声門閉鎖音になってしまう。

  • アメリカ人の water - 「ワラル」のように聴こえる
  • ほとんどのイギリス人の water - 「ウォータ」のように聴こえる
  • コックニーの water - 「ウォッア」のように聴こえる

母音の消失

以下のような語のつながりで母音の消失現象が頻繁に起きる。
right in front of the office
a hat and t-shirts

"right in front of the office" は正しく発音すると [rɑit in frʌnt əv ði ɔ:fis] だが "in" の母音が消失して [rɑit n frʌnt əv ði ɔ:fis] のような発音になることが多い。つまり「ライ・ン・フロンッ・オヴ・ディ・アフェス」みたいな発音。"right" の [t] は上述した声門閉鎖音になることが多い。

"a hat and t-shirts" は正しく発音すると [ə hæt ənd ti:ʃərts] だが "and" の母音 [ə] と子音 [d] が消失して [ə hæt n ti:ʃərts] のような発音になることが多い。"hat" の [t] は声門閉鎖音になることが多い。つまり「エ・ヘッ・ン・ティーシャルッ」みたいな発音。"black and white" が [blæk n wɑit] になるのと同じ現象。

リンキングの曖昧化

上のYouTube動画で茂木健一郎さんの英語 (TEDxTokyo - Ken Mogi - 05/15/10 - (English)) を聴いてみよう。冒頭のほうで茂木さんが "When I was a child..." と語る場面がある。

普通の人はこの文章を「ウェ・ナ・ワザ・チャエウド…」みたいな発音でしゃべると思う。つまり "when" の最後の子音 [n] と "I" の母音 [ɑi] をリンクさせて「ウェナエ…」みたいにしゃべる。これをリンキング (linking) とかリエゾン (liaison) と呼ぶ。「"an apple" は "アン・アポー" ではありません。"アナポー"と発音しましょう」とか誰もが中学校で教わったと思う。しかし茂木さんは "When I..." を「ウェン・アイ…」のように発音する。つまりリンキングがない。ちょっと気持ち悪い。

「ン」という1種類の文字で表される日本語の撥音(はつおん)は直後に続く音によってさまざまに変化する。直後に続く音がマ行とかパ行なら唇を閉じて鼻から息を抜き、タ行とかナ行なら舌の先端を上顎前歯の歯茎の内側に当てて鼻から息を抜く…などなど。ところが英語の [n] の音は直後に来る音が何であろうと「舌の先端を上顎前歯の歯茎の内側に当てて息を抜く」と決まっている。だから "when I..." は「ウェナエ…」になるわけだ。この大原則は滅多に崩れることがない。

ならば英語では子音の直後に母音が来れば必ずリンキングが発生するだろうか? そう断言していいだろうか? いや、必ずしもそうではない。ここが英語という言語のややこしい点だ。

ひとつ例をあげる。英語学習サイト「英語伝」にある音声を聴いてみよう。(再生するには Real Player または Real Alternative が必要)。
誘いをことわる方法 @ -女性の英会話劇場-

Sharon, I need your help... I got an invite for a party... which I should have declined a long time ago... and it's on tonight.

冒頭の部分。"I got an invite..." の部分。この英語ネイティブの女性はリンクさせずしゃべっている。つまり an の最後の子音 [n] と invite の先頭の母音 [i] がリンクしていないように聴こえる。

もうひとつ同じく英語伝から。(再生するには Real Player または Real Alternative が必要)。
ケータイ語その2。「もっと電波の入るところ」ってなんて言う? @ -女性の英会話劇場-

... I was rummaging through the closet last night and bumped into it.

終わりの部分。"bumped into it." の部分。ここで英語ネイティブの女性が bumped の最後の子音 [t] と into の先頭の母音 [i] をリンクさせていない。あるいはリンクさせていないように聴こえる。

重要なのは、"I got an invite" の an の最後の子音 [n] の部分は舌の先端をちゃんと上顎前歯の歯茎の内側に当てているということ。同様に "bumped into..." の bumped でも最後の子音 [t] の部分は舌が歯茎に当たっている。

つまりここでは、

  • [n] または [t] の部分で舌をしっかり歯茎に付けているにも関わらず直後の母音とのリンキングが起きていない、または起きていないように聴こえる

…という不思議な現象が起きている。正式名称があるかどうか知らないけどここではこれを「リンキングの曖昧化」と呼ぶことにする。

リンキングが明瞭になるか不明瞭になるかは明確な基準があるわけではない。同一人物が話す英語でもリンクしたりリンクしなかったりする。"an invite" も "bumped into" もはっきりとリンクしてもいいのだ。しっかりとリエゾンしてもいいのだ。でもアメリカ人の英語ではリンクしていないように聴こえることが多い。

なぜリンキングが曖昧になるのか。この問いに答えるのは難しいが、英語は強弱の違いが著しいという特徴があり、これがリンキングを曖昧にする理由のひとつだろうとオイラは直感的には考えている。この点は強弱があまりなくて平板なしゃべり方をするフランス語や日本語との決定的な違いでもある。それともうひとつ、冒頭でふれた声門閉鎖音だ。声門閉鎖音が発生すると直後の母音とのリンキングが完全に消滅する。

スピーキングについて少しだけコツを言っておく。強弱をはっきりさせて音節を意識してリンキングを曖昧にすれば、

a brain in an American

…みたいに [n] と母音の組み合わせが3回連続する一見難しそうな発音もなめらかに高速で発声できる。この例だと「American 以外の語はすべて1音節であり、強く発音する箇所は brain と American の第2音節だけであり、それ以外は弱く曖昧に発音する」ということを意識する。[n] と母音をリエゾンして「エ・ブレイ・ニ・ナ・ナメリカン」と発音しちゃうとネイティブっぽさが薄れる。そうではなく「エ・ブラエン・ン・ン・メリクン」みたいに発音する。ただし「ン」は必ず舌を歯茎に当てて限りなく「ヌ」に近い音で弱く発音する。こうすればネイティブっぽくなる。

まとめ

声門閉鎖音の発生、母音の消失、リンキングの曖昧化。この3つの法則というか現象を知っておくと英語ネイティブの英語を聴き取りやすくなる。漠然とした直感だが、これら3つの現象はどこかで深く関連していると個人的には思っている。英語はフランス語や日本語と違って強弱をはっきりさせてしゃべる。あるいは表面的には強弱が明確でなくても心の中で強弱を意識している。これが声門閉鎖音と母音消失とリンキング曖昧化を生み出しているのではなかろうか。

関連

以下のWiki形式のリンクが英語の発音の微妙な部分を詳しく説明していて面白いと思った。やや中二病っぽいところがあるけどね。
Anime Transcripts@アニメで英語 - 口語英語入門>英語の発音の変化 - リダクション、リンキング、フラッピング

商品価格を日米のアマゾンで比較するブックマークレット

2ちゃんねるのスレッド「Amazon Kindle 洋書スレ」で見つけたレス。同じ書籍について日本のAmazonとアメリカのAmazonの間で切り替えるブックマークレット。

Amazon cart

952 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/12/01(日) 17:14:06.40 ID:kbDgmzFl Be:

以前、総合で教えてもらったんだけど、下のスクリプトをブックマークに放り込んでおくと同じ本について、ブックマークから日米のアマゾンサイトを交互に切り替えることができる

javascript:if(window.location.hostname=='www.amazon.com'){window.location=window.location.href.replace('.com/','.co.jp/')}%20else%20if(window.location.hostname=='www.amazon.co.jp')%20{window.location=window.location.href.replace('.co.jp/','.com/')};

やっていることは次のとおり
本のID番号は日米アマゾン共通なので、アドレスを amazon.co.jp と amazon.com に変更するだけで、同じ本の表示ページを日米間で切り替えできるというわけで、javaスクリプトでURLの .co.jp/ と .com/ 部分を書き替えているだけ

あ、このブックマークレットいいね。PRE要素として下に書き出しておこう。

javascript:if(window.location.hostname=='www.amazon.com'){window.location=window.location.href.replace('.com/','.co.jp/')}%20else%20if(window.location.hostname=='www.amazon.co.jp')%20{window.location=window.location.href.replace('.co.jp/','.com/')};

ちょっとやってみたけど、このJavaScriptは書籍以外の商品でも動く。ようするに日米のAmazonのASINコードは共通なんだろうね。

(日本とアメリカ以外のAmazonでも動くかどうかは未検証)

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