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老いるに従って英語の母音が変化する傾向

スコットランドのアバディーン大学 (University of Aberdeen) の研究者たちが BBC Radio 4 で半世紀近くにわたって放映されているソープ・オペラ "The Archers" の1975年から2015年までのエピソードを分析したところ、人は老いるにつれて容認発音 (Received Pronunciation, Queen's English) からよりフラットな (flatter) 母音を発声することがわかった。母音の訛りは年齢と共に変わるのだ。

女優ジュディー・ベネット (Judy Bennett) が演じる非常におしゃべりなシューラ・アーチャー (Shula Archer) は1975年の同ドラマの中で古典的な容認発音のルールに従って happy を "heppy" と発音していた。しかし2015年現在では彼女も他の出演者もフラットな母音を好み、happy を綴りどおりに "happy" と発音する。この現象は言語学者が言うところの "lowering of the trap vowel" だ。

同様にイギリスの上流階級の多くは年齢を重ねるに従って母音の発音を変える。女王陛下も例外ではない。

このソープ・ドラマに登場するシューラたちは以前はパットやダン (Pat and Dan) を "Pet", "Den" と発音していた。しかし現在の発音はよりフラットな "a" である。

Older people abandon Received Pronunciation in favour of flatter vowels, according to Archers study - Telegraph

David Boreanaz
Courtesy of Wikipedia

引用した中に "lowering of the trap vowel" という表現がある。lowering はおそらく舌の位置を下げることを意味する。また trap vowel というのは trap-bath split に関係した言い回しだと思われる。 trap と bath の母音は本来ならいずれも [æ] だがイギリスなどでは trap の母音がそのままである一方で bath の母音が長母音化して [æ:] のようになる。これを言語学者は trap-bath split と呼んでいる。この現象については「英語の発音―母音の変化について @ 英語雑貨屋」が非常に詳しい。

「よりフラットな母音 (flatter vowel)」というのはなじみがない表現だ。おそらくこれは舌の形が丸まった状態から平坦な状態に変化することを言っているのだと思われる。たとえば pet の母音 [e] を発声するときの舌と pat の母音 [æ] を発声するときの舌の形状を比較するとわかる。pat は pet に比べると舌がやや平らになる。

母音がフラットになると heppy が happy になる。 Pet, Den がそれぞれ Pat, Dan になる。今回の研究結果によれば年をとるにつれて舌の位置が下がって pet → pat 推移が起きるわけだ。

この研究を知って思い出したことがある。アメリカのテレビドラマ "BONES" に登場するブース (Seeley Booth) の喋り方だ。FBI捜査官ブースはジェファソウニアン研究所の技術者たちを "squints" と呼ぶことがある。学者や技術者は真剣に仕事をして何かを思案しているとき斜視になったり目を細めたりする。技術系の人間ではないブースはそのため多少の皮肉を込めて彼らを squints と呼ぶわけだ。いつだったか名前を知らないインターンに「私の名前を知っていますか?」と訊かれて「知ってるさ。Squintyだろ?」と答えたこともある。squints は普通なら [skwints] と発音するけどブースの発音は少し違う。彼は squints を [skwi:nts] と言っているように聴こえる。つまり通常より舌の位置を上げている。もう少し解剖学的に言うと舌の筋肉を緊張させて中央部を上に押し上げている。

またブースはインターンのデイジー (Daisy Wick) のことを Dizzy または Deezy みたいな発音で呼びかけることがある。

squints と squeents の違いは舌の筋肉に力を込めるかどうかの違いだ。Daisy が Dizzy になるのも同じ。年をとれば舌の筋肉も衰えるだろう。そうなると上述した pet → pat 推移が起きやすくなる。若いときはその反対だ。つまり pat が pet になる。BONESでブースを演じる俳優デイビッド・ボーリアナズ (David Boreanaz) はまだ年老いているとは言えない年齢だから舌の筋肉も衰えていないだろう。だから pet → pat 推移とは正反対の発音になる。

英語には少なく見積もって20種類ほど、多く見積もって30種類以上の母音がある。当然地域差が大きい。たとえばオーストラリアとニュージーランドの英語を聴いたことがある人なら peace が "pace" のような発音になることをご存じだと思う。またアメリカ北部では Northern Cities Vowel Shift と言って cot と caught の音が同じになる現象 (cot-caught merger) が起きているのも有名。だが今回紹介したスコットランドの研究チームは母音が地域によって変化していることを検証したのではない。一人の人間が年を経るにしたがって母音を変化させていくことが実証されたわけだ。

個人的な感想を言わせてもらうと、同様のことは英語だけでなくすべての言語で起きていそうな気がする。日本語も例外ではない。誰だって年をとれば舌とその周辺の筋肉は衰えるわけで発音に変化が表れないとは考えにくい。

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