ArtSaltのサイドストーリー

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put on, take off が反意語たりうる理由

ふと思った。put on (着る、履く)の反意語が put off ではなく take off になるのはなぜだろう。「離陸」は take off なのに、「着陸」が take on ではないのはなぜだろう。

putpush

put はその実像がつかみにくい基本動詞。How should I put it? 手元の研究社の新英和中辞典によると、put はかつて push の意味で使われていたらしい。いちおう言っとくと push は古仏語由来の外来語。put の語源は古英語 putung だろうとする説が多いけど、判然としない。「putput として文献に現れたのは12世紀になってからだ」と言う "ETYMOLOGY: PUT word trail - Jaques Site" から引用。

Put is a word which hides its ancestry quite well. It appears fully fledged in twelfth century English as the verb puten, participle put and subsequently putted. Its origins are postulated to be in an unrecorded and hence hypothetical Old English word putian which has only been seen as the related noun putung meaning instigation.

桶に水を張り、そこに手をそっと入れる 、食用の球根を土の中にぐっと押し込む — 黎明期の put の心象はそんなものであったろう。ここからさまざまな感覚(押す、押し込む、押し出す、置く、位置づける…)が派生する。
putのコア - entoy:エントイ

put は「押し込む」、on は「接触」

  • 服を着る、靴を履く、眼鏡をかける — これらは put on で言い表される行為。そういうものを脱いだり、外すことを take off と言う。put off とは普通は言わない。
  • 飛行機が離陸することを take off と言う。でも着陸は take on ではない。land と言うのが普通。
  • 「着用」という意味の put on の反意語が put off ではなく take off になるのはなぜか。
  • 「離陸」という意味の take off の反意語が take on ではなく land になるのはなぜか。

もう一度 put の原義を思い出す。水の中に手を差し込む心象。袖に手足を通す(服を着る)、帽子の空洞に頭を入れる(帽子を被る)、足を靴の中に入れる(靴を履く) — 「押し込む」という古き時代の put の感覚。

太古のイギリス人たちは take onwear という意味を重ねてもよかったはずだ。しかし彼らは put on という形を選んだ。「衣類に体を押し入れる」「足を靴の中に突っ込む」という感覚を得るには take on では駄目で、どうしても put on でなければならなかったのだよ、おそらく。

put on という表現を考えるとき忘れちゃいけないのが「接触」を意味する on という副詞または前置詞。何らかの物体(靴、帽子とか)の中に体の一部(手足、頭とか)を差し込む。つまり体と何らかの物体が接触する。

put on glasses, put on skin milk のような事例には「頭部、肌に接触させる、位置づける」という感覚がある。原始的な「押す」の感覚か、それとも比較的新しい「位置づけ」の感覚かを決めるのは文脈。put on glasses のような事例は on に強く焦点が当たっていると思われる。

take は「触る」、off は「分離」

複数の文献に当たってみたけど、古英語 tacan (現代英語の take)には touch の意味があったという説が有力。そして touch は古仏語由来の外来語。だとすると touch という語が欧州フランスからグレート・ブリテン島にやって来る以前は take (tacan)touch の役割を担っていたんだろうか? うーむ…

take の原義は「触る」。意味を膨らますと「手近にあるものを手にとる」。そこに「分離」を意味する副詞または前置詞 off がくっつくと、「つかんでいるものを離す」「接触しているものを離す」と感じられる。「靴を脱ぐ」「帽子を脱ぐ」「飛行機が離陸する」などを言い表すには put off よりも take off のほうがふさわしい理由が見えてきた。

結論(っていうか、オイラの憶測)

  • put には「ぐっと押し込む」という原始的な心象が残っている。そこに「接触」の on が加わると、put on から「着る」という感覚が得られる。
  • take には「ひょいっと触る」「ぱっと手にとる」という原始的な心象が残っている。そこに「分離」の off が加わると、take off から「脱ぐ」「離陸」という感覚が得られる。
  • 太古から受け継がれた感覚を知っておけば、「句動詞」と呼ばれるもの (put down, take down, put in, take in, put on, take on, put off, take off, put out, take out, put up, take up, put into, take into...) の意味するものが今まで以上に見えてくるんじゃないかな。

おまけ — taketake on の意味は似たようなもんだ。でも感覚は全く違う

本題からずれるけど、動詞 take と句動詞 take on について。

take の原義に「奪う」という感覚はない。「奪う」は副次的に派生した感覚のひとつにすぎない。生来の英語話者が "The homework took an hour and a half to finish." を「1時間半を奪った」なんて解釈するわけがない。「1時間半という時空間にひょいっと触れ、それを手にした」だけだ。

もうひとつ例。"Take it easy." — 「それを気楽に奪え!」と解釈する人はさすがにいないだろう。「気楽に触れよ」「気楽にやろうぜ、ベービー」。

極端に言うと taketake on も意味はほとんど同じ。「take responsibilitytake on responsibility の違いを説明せよ」と言われたら生来の英語話者だって説明に窮するだろう。しかし感覚は大きく異なる。前述したように、もともと take 自体が「接触」を暗示している。そこに「接触」の意味を持つ on が加わるのだ。ゆえに「接触」が強く意識される。「何かにぴったりくっつく」「没頭」「依存」と言い換えてもいい。focus on, concentrate on, depend on などに通じる感覚。

以下の例文は "take - Definition from Longman English Dictionary Online" から。4つの例文すべてに言えることだけど、on を取り除いても意味はあまり変わらない。でも感じられるものが大きく変化するんだ。

Don't take on too much work.
あまり仕事をかかえこむなよ。
We stopped to take on fuel.
燃料を入れるために停止した。
Her face took on a fierce expression.
表情が険しくなった。
He was prepared to take on anyone who laid a finger on us.
我々にちょっかいを出そうとする者が誰であろうと立ち向かえるよう準備していた。

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