ArtSaltのサイドストーリー

音楽、フリーウェア、WEBサービス、食べものなどに関する日記。トラックバック、コメント歓迎。

田中茂範のHAVE空間

佐藤芳明と田中茂範の共著「レキシカル・グラマーへの招待」(開拓社)を借りてきてここ数日はパラパラと読んでる。英語学習を手助けする本だが、文法書ではない。田中茂範の「HAVE空間」という有名な考えがわかりやすく記されている。以下は田中と佐藤の考えをオイラなりに解釈したものであり、使っている用語は彼らのものとは違う。

have - 何かを自分のところにもつ

田中茂範は英語の動詞 have の原義を「何かを自分のところにもつ」と喝破するけど、「ある」と表現したほうがいいんじゃないかな。「持つ」という日本語は英語の状態動詞 have とは大きく違うと思う。"A has B" は「AのところにBがある」ということだ。「Aのところ」が田中の言うHAVE空間。

  1. She has many clothes.
    たくさんの服が彼女のHAVE空間にある。
  2. We have a lot of rain in June.
    6月の多雨が we のHAVE空間にある。
  3. I have lost my bag.
    「バッグをなくした」(lost my bag) という出来事が私のHAVE空間にある。
  4. I'll have him pick you up.
    「彼が君を迎えに行く」(he picks you up) という状況が私のHAVE空間にある。
  5. You have to repair the radio.
    前置詞 to の原義は「到達先」「向かい合う」。
    to + 動詞の原形」は「ある行為に向かう」ことをほのめかす。動詞の直前に前置詞 to を加えることによって、ある行為を「予定にあること」「既定のこと」とすることができるわけだ。"have to VERB" の形に「当然のことである」という感覚が誕生したのにはこういう背景があったと思われる。
    「ラジオの修理」(repair the radio) という状況が既定のものとして you のHAVE空間にある。

当ブログでは何度も言及しているけど、「所有の have」「完了の have」「使役の have」を区別して英語をしゃべっているネイティブなどいない。「have の直後に to と動詞の原形が来ると『義務』『必要』の意味が生じる」なんて考えてる者など一人もいない。上記5個の例文の have は彼らにとって全く同じ have である。havehave なのだ。

動詞 give にまつわる嘘と本当

「"He gave me some money" は "He gave some money to me" と言い換えることができます」という嘘を広めている自称「英語の専門家」たちがウヨウヨいる。残念ながら言い換えることは許されない。以下、論証。

give - 自分のところから何かを出す

"She gave a cry." (叫び声をあげた) という表現がある。give の意味を「与える」と丸暗記してきたオコチャマたちにとって非常に居心地が悪い例文だ。しかし give に「与える」という意味なんてもともとない。原義は「自分のところから出す」。

  1. John gave his coat to the hotel clerk.
    コートをホテルの従業員に預けた。
    ホテルの従業員がコートを自分のものにしたわけではない。
  2. I gave some money to him.
    彼にお金を渡した。
    「彼がお金を自分のものにした」ことを意味するわけではない。「渡した」だけだ。

give (SVOOの形) - 自分のところから何かを出し、何者かにそれを have させる

田中茂範が「HAVE空間」などというおおげさなことばを多用するのにはそれなりの理由がある。SVOOの形にはHAVE空間が隠されているのだ。

  1. John gave the hotel clerk his coat.
    コートをホテルの従業員に与えた。
    ホテルの従業員がコートを自分のものにしたこと (The hotel clerk had the coat) がほのめかされる。
  2. I gave him some money.
    彼にお金を与えた。
    彼がお金を自分のものにしたこと (He had some money) がほのめかされる。

SVOOの形をとれる動詞は他にもある。open はSVOOの形をとらないとされているが、そんなことはない。

  1. Open me a can of beer. (ビールをあけてくれ)
    "I have a can of beer" がほのめかされる。
  2. Open me the door.
    "I have the door" がほのめかされる、と解釈すると変だ。ゆえにこの例文は不自然。
  3. Tommy told his co-worker his story. (同僚に話をした)
    "his co-worker had his story" がほのめかされる。
  4. My dad ordered me one beer. (父は私にビールを1杯頼んでくれた)
    "I had one beer" がほのめかされる。

SVOOの形に隠されているHAVE空間を発見できれば、
Give me a break. (ちょっと待ってくれ)

Give a break to me.
と言い換えることができない理由が明確になる。
"Give me a break" は "I have a break" を暗示する。しかし "Give a break to me" は "I have a break" を全く暗示しないから不自然に聴こえるのだ。

「SVOOの形にはHAVE空間がある」とする田中茂範の考えは「SVOOの形をとる動詞には『受け渡し』の感覚がある」と主張する大西泰斗のそれに通じるところがあるんだけど、どっちの説明のほうが論理的かは何とも言えないな。

関連

Google
WWW ArtSaltのサイドストーリー
Web site (optional)
Comment - Need to type CAPTCHA, an image of distorted Japanese Hiragana or Katakana afterward.
Password - Not allowed to modify your comment later if password not entered.
On secret mode?
 

http://art2006salt.blog60.fc2.com/tb.php/1099-2623df7d

このブログについて

最近のエントリ

カテゴリー
あわせて読みたいブログ

あわせて読みたい

最近のコメント
Internet Explorer
よりも便利です

Opera 9 - Always secure with Opera Firefoxをダウンロード!!

相互リンク