ArtSaltのサイドストーリー

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Prime Minister, 定冠詞, 属格

定冠詞 the の有無で決まる感覚

NHK総合テレビの夜7時のニュースは英語副音声で日本の首相を "Japan's Prime Minister Yukio Hatoyama" と呼ぶことが多いが、メディアによって、人によって、表現は異なる。同じ人であっても少しずつ変化させた形を使い分けているのが以下の事例。

  1. Ask the Japanese Prime Minister to be a climate leader at Copenhagen
  2. Watch Junichi and Shoya's message to Prime Minister Hatoyama of Japan,
  3. and then send your own message to the Prime Minister,
  4. Here is an example of what you may want to say to the Prime Minister.
  5. Dear Prime Minister Hatoyama
Ask the Japanese Prime Minister to be a climate leader at Copenhagen | Oxfam International Blogs

読みやすくするためにリスト形式にし、かつ適宜bold指定して引用した。定冠詞 the に着目すると以下のような明瞭な規則性が見られる。

  • Prime Minister の直後に Hatoyama が続かない場合は the がある — 上のリストの #1, 3, 4
  • Prime Minister の直後に Hatoyama が続く場合は the がない — 上のリストの #2, 5

NHK教育テレビの英語学習番組でおなじみの指パッチン大西泰斗氏は定冠詞 the のイメージを「ひとつに決まる」と呼んでいる。「唯一性」と言い換えてもいい。

the Prime Minister
自然な表現。定冠詞 the を置くことによって「他でもない唯一の首相(この文脈では鳩山由紀夫首相)だよ」という感覚を得られる。
Prime Minister
間違いではない。primeminister の頭文字が大文字になれば固有名詞に似た唯一性が感じられるからね。ただし the の唯一性に比べると若干弱い。
Prime Minister Yukio Hatoyama
自然な表現。the を伴わないこの形には Lake Michigan (ミシガン湖) と共通する感覚があると思われる。
the Prime Minister Yukio Hatoyama
間違いではない。ただし the があるので「Yukio Hatoyama こそがまさに首相である」という印象がある。

英語の定冠詞 the の使用法を説明するときに「"United States" のように1個しかないものは the が必要です」という安易かつ無責任な説明をする人がよくいる。だがこれは完全に誤りである。その解釈では the を伴わない "United States", "U.S." という形を新聞の見出しで頻繁に見かける理由を説明できない。

断言しよう。"Will U.S. attack Iran?" の感覚と "Will the U.S. attack Iran?" の感覚には大きな違いがある。「1個しかないから the を使う」のではない。the があるから1個になる。the があるから唯一性の感覚が強調される。

岩波新書「日本人の英語」の著者マーク・ピーターセン氏は「名詞に冠詞がつくのではなく、冠詞に名詞がつくのだ」などと理解に苦しむこと言ってるんだけど、最近になって彼の言わんとしていることが少しわかってきた。主役は定冠詞 the であって、後続する名詞はそれを補足してるだけなのだ。

ここまでは定冠詞 the の有無による違いの説明。

Japan, Japan's, of Japan or Japanese?

ここからは Japan, Japan's, of Japan, Japanese の違いの説明。

以下4個の事例はいずれも正しい表現。どれを使ってもいいんだけど、感覚が微妙に異なることに留意。

  • Japan Prime Minister Yukio Hatoyama
    JapanPrime Minister を淡々と並べている印象。「日本の総理大臣」ではなく「日本国総理大臣」みたいな。
  • Japan's Prime Minister Yukio Hatoyama
    -'s 属格」の形。「日本が所有している首相」という感覚。Japan's には my, your, his, her, its, their に近い感覚がある。つまり限定詞(または決定詞 determiner)に似ている。詳細は「「所有格」の"-'s"(アポストロフィ+s)と"of"の違い - はてな読み」に書いてあるよ。
  • Prime Minister of Japan, Yukio Hatoyama
    「首相は日本の諸制度の一部である」という感覚。これについては後述。
  • Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama
    Japanese は形容詞。これをどう解釈していいのかよーわからん。「他の国ではなく日本の…」という感覚だろうか。

Prime Minister of Japan という形を理解するには、「東京大学」「早稲田大学」「明治大学」の英訳に関するマーク・ピーターセン氏の優れた説明が良い手がかりになる。

大学と東京と早稲田は空間である。よって University of Tokyo (東京という地の一角を占める大学), University of Waseda (早稲田という地の一角を占める大学) という形は正しい。他方、明治は元号であり時間であって、空間ではない。「明治という時間の一部に大学という空間が位置する」というのは不自然。ゆえに「明治大学」の英訳は University of Meiji ではなく Meiji University なのだ。

この感覚がわかれば Prime Minister of Japan の感覚もわかる。Prime MinisterJapan は同じ時空間に存在している。だから of で関連づけられる。

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