ArtSaltのサイドストーリー

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石原慎太郎の強姦殺人小説

東京都の青少年健全育成条例改正案。石原慎太郎・東京都知事の先月11月29日の発言。

石原慎太郎知事も「表現は幅広く自由なものだろう。しかし、子どもが強姦されるシーンを子どもが見ることを良いとするのか」などと述べた。

asahi.com(朝日新聞社):漫画家ら「表現の自由侵す」 都の性描写漫画販売規制案 - 社会

石原慎太郎氏が書いた小説に「完全な遊戯」というのがある。初出は雑誌「新潮」1957年10月号。大雑把に言えば、2名の男性が精神病院から無断で出てきたと思われる女性を強姦し、他の友人たちにも強姦させ、最後は熱海の海岸に行き、彼女を崖から海に突き落とす、という内容。

この本は小中学生たちが自由に出入りできる公共図書館の開架書架に並べられている。よって誰もが閲覧でき、誰もが借りることができる。「強姦されるシーンを子どもが*見る*こと」は小説ゆえ不可能だが、「強姦されるシーンを子どもが*読む*こと」ことは可能だ。

以下はその石原氏の「完全な遊戯」からの引用である。

「え」
女が言った瞬間、礼次は右へ一杯にハンドルを切ったのだ。車は濡れたタイヤをきしませ右手の低い繁みの間を縫って草地の中へ入り込んだ。
低い叫び声を上げながら、はずみで女の体が投げ出されたように右に崩れた。立ち直る暇を与えず礼次がその上からのしかかり、後ろのシートから武井が動かすまいとその両掌を捕らえた。
瞬間、ひっと言うような低い悲鳴で女は体中であがいた。女と思えぬ猛々しいほどの勢いだった。握った手を振りほどかれた拍子に、武井は手の甲をドアの端にいやというほど叩きつけられたのだ。
「この野郎!」
言って頭を押えつけるその掌の下で、女は何かわけのわからぬことを叫んだ。
「叫べよ! が誰も来やしないぜ」
着たものをたくし上げながら礼次が言い返した。
女は尚叫んで身をよじった。
「黙らねえか、いい加減に!」
シートの背から殆ど全身を逆さにのり出した武井が、叫びながら女の目の辺りを上から力一杯殴りつけた。女はそれでも叫んだ。が何故か突然、失神でもしたかのように女は温和しくなる。
「よしよし、なまじ言うことをきかないでいるよりそうしてりゃ顔も腫らさずにすむんだ」
女はそれ切り動こうとせず、なすがままだった。
同じ姿勢のままで礼次が言った。
「おい、ヘッドライトを消してくれ。バッテリーが上がっちまうからな」
武井が後ろから手を延ばしてスウィッチを切り、それきり辺りは真暗だった。近くで渚に打つ波の音が聞こえてくる。雨の音は先刻より軽くなったようだった。
「変るぜ」礼次が言った。
「よし、おさえててくれろ」
「大丈夫、動きやしねえよ」
先刻から女は低い声で何か聞き取れぬことを言いながらじっとしたきりだった。
暗闇の中で、二人が前と後ろのシートへ入れ替わった。
煙草をつけると途中で礼次は武井に渡した。
「吸うか?」武井が女に言った。
仰向けに倒れたまま、女が首を振るのが気配でわかった。
また雨が降り出し、強く車の屋根を叩いている。その中の暗闇で礼次がつけた二本目の煙草の小さな火が、濃く薄く同じ感覚で点滅した。
「へっ、おい」武井が叫んだ。
「大した女だぜこいつあ、腰を使い出しやがった」
女が低く、うめくように何か言った。

(中略)

「おい、大丈夫かい?」
暫く黙った後、何とはなし、訊いた礼次へ、
「え」女はまた言う。
「おまえ、何処か体悪かったんじゃないのか?」
女は黙って頷いた。
「大丈夫だったのか、本当に。こんな日に出歩いてよ」
「もう治ったわ」
「入院でもしてたんじゃねえか」
「でも、もう治ったわ」
「何処だい?」
「え」女は言った。
「病院?」
「え? ああ、それと悪かった所あ」
「病院?」女はまた言った。
頷き返す礼次を、女は一寸の間窺うような、まぶし気な眼差しで見つめたが、言訳するように、ゆっくり小さい声で言った。
「大船の鎌倉病院」
「え」
思わず見合わす二人へ、
「もう治ったの。私、気違いじゃないわ」
女はその時だけ懸命な眼の色を見せながら、自分へも言って聞かせるようにひとことひとことはっきり言った。
女の言った病院は辺りでは著名な精神病院だった。

(中略)

「私帰るわ」
「何処へ、本当に帰るところああるのか」
「でも、私帰るわ、帰して頂だい」
女は何故かはっきりおびえた眼を礼次に向けながら言った。
「駄目だよ、言うことを聞いてここにもう少しいるんだ。今夜は違う友だちを見つけて来といてやるからな」
女は子どものように頑なに首を振ると、
「いや、帰るわ」また言った。
「どうする、達たちを呼んで来るまでただとじ込めとくのか」
「いや、一寸待ってろ」
礼次は台所の方に消え、やがて細びきの束を持って出てきた。
女が何か叫んで飛びすさった。縄におびえるというより、本能で何かを怖れる獣のような仕種だった。
「つかまえるんだ」
言わぬうち武井が女を引きずり倒した。
両掌を後ろにくくり上げ、柱に結びつけると、女は頭を振り何やら叫び、精一杯の抵抗で足をばたつかせる。
「そのカーテンを少し裂けよ」
武井が渡した布を手にしながら礼次が言った。
「静かにしてるんだぞ。なるたけ楽なようにしといてやるからな」
「帰して」
急に温和しく、女は先刻と同じような調子でまた言った。
「駄目だよ」言いながら猿ぐつわを女にかませた。
出て行く二人を女はじっとしたまま見開いた眼で見送っている。と、また頭を振ってもがきながら女は足を滅茶苦茶にばたつかせた。裾がはだけ、女の奥の肌が覗けている。
「野郎、静かにするように、股ぐらにほうきでも突っ込んどいてやろうか。大方それならこいつあ嬉しそうにじっとしてるぜ」武井が言った。

(中略)

十米行くと右手の海を距てていた茂みが切れ、断崖の上の道はいきなり四、五十米下の海に臨んで続いている。遠くの下の岩に波の砕ける音が伝わって来る。
「聞こえるだろ、海の音が、ずうっと下だ」
スリップよけの低い手摺りに片足かけながら礼次は下を覗いた。途中がえぐれてせり出した崖の真下で騒ぐ水が夜目にもほの白く見えて来る。真横に自殺止めの立札がぼんやり立って見えた。
「危いわ」
女が言った。
「大丈夫さ。波が白くて綺麗だぜ。見てみろよ」
礼次は手を引いて自らのり出しながら言った。
「危いわ」
引き戻すように女は言った。
「危かねえさ、君がつかんでるからな」
礼次は笑って言った。
吸ってた煙草を思い切り指で弾いた。小さな火は闇をきりながら一瞬尚赤く灯ると吸い込まれるように足元の闇へ消えて見えなくなる。
「ほら一寸見てごらんよ。何かがきらきら光ってるぜ」
女をふり返って尚笑いながら彼は言った。
「そう、見えて? 綺麗?」
女は礼次の手を握りながら同じように身をのり出した。
「大丈夫だよ。後ろから肩を抑えててやるから。ほら、見えるだろ白い中にきらきらとさ」
肩を一寸押すように彼は言った。
「え」
小さくあがいて押し戻すようにしながら、女は言った。その瞬間、礼次は一度引いたその腕で力一杯女を前方に突き飛ばしたのだ。意外に軽く、声もたてずに女は暗い視界に消えていった。身をのり出し、息をのんだままじいっと耳を澄ます彼の耳へ、重く鈍くものを叩きつける音が聞こえた、と思った。
そのまま、ゆっくり車に戻り、別の煙草をつけた後で彼はクラクションを鳴らした。暫くして二人が戻って来た。

【石原慎太郎著「完全な遊戯」@「石原慎太郎の文学9 - 短編集1 - 太陽の季節、完全な遊戯」(文藝春秋)】

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この映倫の歴史について読むと良い。
http://www.eirin.jp/outline/index.html
2010/12/14(火) 20:59:32 | URL | おばQ #-[edit]
ありがとうございます。読みました。
2010/12/15(水) 09:24:53 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
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