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Kindle電子書籍はペーパーバックの売り上げを超えたのか?

ITmediaがまた誤解を招くような記事を書いているので晒しておく。
Kindle電子書籍、ペーパーバックの売り上げ超える - ITmedia News
2011-01-29-11-02-08 に取得した魚拓

それによればITmedia記者は、

  • Kindle電子書籍、ペーパーバックの売り上げ超える
  • Amazonが、Kindle書籍の売り上げがペーパーバックを超えたと報告。
  • Kindle向け電子書籍の売り上げが、初めてペーパーバックの売り上げを超えた。

…と断言している。つまりKindle本の売り上げがペーパーバックを超えたんだそうだ。これは本当だろうか? 大事なことを確認しておこう。日本語の「売り上げ」は「金額」のことを言うのが普通であり、 goo国語辞書によれば「商品などを売って得た代金の総額。売上高。売上金。」である。たとえば日経新聞が「小学館では雑誌の売り上げが文芸書の売り上げを抜いた」と言ったらそれは金額のことを語っているのであって、販売部数のことを語っていると解釈する人はほとんどいないと思う。

このニュースの出典はAmazonのWebページに掲載されている。以下に拙訳と共に引用する。厳密に言えばこの文章を書いたのはAmazonではなく Business Wire であり、それをAmazonが自らのWebサイトに掲載するという形をとっている。

"Thanks to our customers, we achieved two big milestones," said Jeff Bezos, founder and CEO of Amazon.com. "We had our first $10 billion quarter, and after selling millions of third-generation Kindles with the new Pearl e-ink display during the quarter, Kindle books have now overtaken paperback books as the most popular format on Amazon.com. Last July we announced that Kindle books had passed hardcovers and predicted that Kindle would surpass paperbacks in the second quarter of this year, so this milestone has come even sooner than we expected - and it's on top of continued growth in paperback sales."

「皆様のおかげで2つの大きな出来事を達成しました」。Amazon.comの設立者でありCEOであるジェフ・ベイゾス【後注】は語る。「四半期において初の100億ドルの売り上げがありました。その四半期において新型 Pearl e-ink の第3世代Kindleが数百万台売れ、Kindle本はペーパーバックを抜いてAmazon.comの最も人気が高い形式になりました。昨年7月私たちAmazonはKindle本がハードカバーを追い越したことをご報告しました。そのとき「当年第2四半期にはペーパーバックを超えるだろう」と予測しました。つまり今回の記念的な出来事は私たちの予想を上回る速さで実現したことになります。Kindle本のsalesの伸びもペーパーバックを超えています」。

Amazon.com is now selling more Kindle books than paperback books. Since the beginning of the year, for every 100 paperback books Amazon has sold, the Company has sold 115 Kindle books. Additionally, during this same time period the Company has sold three times as many Kindle books as hardcover books. This is across Amazon.com's entire U.S. book business and includes sales of books where there is no Kindle edition. Free Kindle books are excluded and if included would make the numbers even higher.

Amazon.comは現在ペーパーバックよりも多くのKindle本を売っている。今年始めからペーパーバック100冊に対してKindle本115冊が売れている。そして同時期にKindle本はハードカバーの3倍売れている。これはアメリカにおけるAmazonの書籍ビジネス全体に言えることであり、Kindle版がない書籍のsalesも含む。無料のKindle本はここから除外されている。もしも無料のKindle本も計算に入れるとこれらの数字はもっと大きくなる。

【Amazon.com Announces Fourth Quarter Sales up 36% to $12.95 Billion @ Amazon Media Room: News Release

後注

AmazonのCEO "Jeff Bezos" の音訳は日本のWebサイトではほとんどが「ジェフ・ベゾス」だが、アメリカ人の発音を聞く限りでは「…ベイゾス」のほうが原音に近い。KindleのText-To-Speechも「…ベイゾス」である。たまに「…ビーゾス」みたいに発音するTVアナウンサーもいる。

英語の "sales"。これをどう訳すか。「売り上げ」という解釈が正しいときもあるが、上記引用では「売れ行き」と解釈するのが正しいと思われる。

sales という名詞は上記引用の中で2回出現する。最初の段落に出てくる sales は「売り上げ」なのか「売れ行き」なのか不明。

しかし2番目の段落に現れる sales は意味が明瞭だ。ここでは「ペーパーバック100冊に対してKindle本115冊」という割合に言及している。つまり単位は「ドル」ではなく「冊」なのだ。そして「*無料の*Kindle本も計算に入れるとこれらの数字はもっと大きくなる」とまで言っている。だとすればこの sales が「売り上げ」を意味するわけがない。どう考えてもダウンロードされた回数を語っているのだ。「xxxx冊売れたよ(ダウンロードされたよ)」という話であって、「xxxxドルの売り上げがあったよ」という話ではない。この程度のことはまぐれで英検2級に合格した私でもわかる。

以前にも言ったが、Amazonは今のところ「書籍全体で黒字になればよく、Kindle本で赤字が出ても構わない」という売り方をしている。$25で売られている紙の本をAmazonは$9.99のKindle本にして売っているのだ。売り上げがそう簡単にペーパーバックを追い抜くわけがない。

もちろんKindle本の販売部数がペーパーバックを超えたことだけでも重大なニュースだと思う。このことを軽く見るつもりは毛頭ない。しかし本当に「出版の革命」と呼べるのはKindle本の売り上げがハードカバーとペーパーバックの売り上げを合わせた額を超えるときであって、いずれ到来するであろうその瞬間まで「Kindle電子書籍、ペーパーバックの売り上げ超える」なんていう衝撃的なタイトルを控えるべきだ。「ロケットニュース」などのイエロージャーナリズムと同レベルに見られたくないのであればITmediaは安っぽい売り文句を避けたほうがいい。

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