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河野太郎が言及した放射線影響協会の調査報告書

衆議院議員の河野太郎氏が「昨年の文科省調査によると年間20ミリシーベルトは危ない|河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」でこのようなことをおっしゃっている。

食道がん(p=0.032)、肺がん(p=0.07)、肝臓がん(p=0.025)、非ホジキンリンパ腫(p=0.028)、多発性骨髄腫(p=0.032)で、累積線量とともに有意に増加する傾向が認められる。その増加は累積10-20ミリシーベルトから現れている。

つまり年間20ミリシーベルトどころではなく、累積で10ミリシーベルトからこうしたがんにより、健康に影響が出ているということを、文科省の調査が示している。

そして「子どもに許容される放射線量は20mSv/年まで」という政府の方針に対する懸念を表明している。ここで彼が言及している…

文部省が委託した財団法人放射線影響協会「原子力発電施設等放射線業務従業者等に係る疫学的調査」(平成22年3月)

…というのはおそらく「文部科学省委託調査報告書 - 原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査(第Ⅳ期調査 平成17年度~平成21年度)」 (http://www.rea.or.jp/ire/pdf/report4.pdf) のことであろうと思われる。これを全部ざっと通して読んだ感じでは、むしろ「放射線はさほど人体に危険ではない」とする人たちを勇気づけるような内容だ。

原発賛成派(私がそうだ)も原発反対派も実際にこの文献に目を通した人は少ないと思うので、ここに問題の箇所を引用しておく。なおグラフとか表とか細かい数字の部分は私の専門外なのでよくわからなかった。興味がある人はこのPDF(全124ページ)をちゃんと読んだほうがいいです。

4.2 考察のまとめ

(1)外部比較の結果について

慢性リンパ性白血病を除く白血病の死亡率は、全日本人男性死亡率(20歳以上85歳未満)との有意差は認められなかった。白血病を除く全悪性新生物の死亡率は、全日本人男性死亡率に比べ有意に高かったが、これは肝臓、肺の悪性新生物の死亡率が有意に高いことが寄与しているものと考えられ、喫煙、飲酒等の生活習慣等による影響の可能性を否定できない。

非新生物疾患の死亡率は、全日本人男性死亡率に比べ有意に低く、疾患別(10疾患)の死亡率においても有意に高い疾患は認められなかった。

非新生物疾患の死亡率を観察期間別にみると、近年では全日本人男性死亡率との有意差は認められなくなりつつあるが、観察期間を通じた死亡率が有意に低いのは、健康労働者効果の影響が考えられる。また白血病を除く全悪性新生物は、相対的に健康労働者効果の影響を受けにくいことを示唆する結果が示されている。

(2)内部比較の結果について

慢性リンパ性白血病を除く白血病の死亡率に、累積線量の増加にともなう有意の増加傾向は認められなかった。

白血病を除く全悪性新生物の死亡率には有意の増加傾向が認められた。しかし、白血病を除く全悪性新生物から、肺の悪性新生物を除外した場合には、累積線量にともなう有意の増加傾向は認められなかった。

また悪性新生物(固形がん)を喫煙関連および非喫煙関連の悪性新生物に分類した調査では、累積線量の増加にともなって、喫煙関連の悪性新生物の死亡率に有意の増加傾向が認められた。しかし、喫煙関連の悪性新生物から肺の悪性新生物を除外した場合および非喫煙関連の悪性新生物の死亡率には有意の増加傾向は認められなかった。

このようなことから、累積線量にともなって白血病を除く全悪性新生物の死亡率に有意の増加傾向が認められたのは、喫煙等による生活習慣等の交絡による影響の可能性を否定できない。

一方、非新生物疾患についても悪性新生物(固形がん)と同様に、喫煙関連疾患、非喫煙関連疾患に分類して調査したが、双方の死亡率には累積線量にともなう有意の増加傾向は認められなかった。

喫煙関連の悪性新生物と喫煙関連の非新生物疾患で、死亡率と累積線量との関連が異なるのは、喫煙による影響(リスク)は、悪性新生物が非新生物疾患より大きいことに起因していることが考えられる。

食道、肝臓および肺の悪性新生物の死亡率、また非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫の死亡率に、累積線量にともなう有意の増加傾向が認められた。

なお、多重比較法では、これらすべての悪性新生物は有意ではなかった。

この放射線疫学調査では、一人当たりの平均観察期間が10.9年と短いため、これらの悪性新生物の死亡率は、累積線量との有意の関連を偶然示した可能性についても否定できない。特に、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫は、死亡数が少なく不確実性が高いと考えられ、また欧米の放射線疫学調査においても累積線量との有意の関連を示す事例は多くない。

(3)統計学的関連の解釈

疫学調査においては、ある要因と疾病との関係が統計学的に有意な関連を示したとしても、バイアスや偶然によるデータの偏りや交絡因子の影響の有無を十分検討する必要がある。さらに因果関係を判断するためには、データの関連性が強いことのみならず、用量-反応関係が認められること、複数の研究結果で一致した傾向を示していることおよび医学的・生物学的に合理的な説明が付くこと等が求められる。

この放射線疫学調査では、着目すべき死因の一つである白血病を除く全悪性新生物および一部の悪性新生物(食道、肝臓、肺)に、累積線量との有意の関連が認められたが、これは喫煙等の発がんに関連する生活習慣等が交絡している可能性を否定できない。また非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫については死亡数が少なく不確実性が高い。

さらに、累積線量との有意の関連を認めた一部の悪性新生物(食道、肝臓、肺)、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫の結果は、欧米の放射線疫学調査の結果と一致しているとは認められず、またこれらの結果に対して医学的・生物学的な観点から合理的な説明を加えることもできない。

5.総合評価

第Ⅳ期調査までの結果を総合して評価すると、以下のことから、低線量域の放射線が悪性新生物の死亡率に影響を及ぼしている明確な証拠は認められなかったと言える。

外部比較では、慢性リンパ性白血病を除く白血病の死亡率は全日本人男性死亡率(20歳以上85歳未満)に比べ差は認められなかった。また白血病を除く全悪性新生物の死亡率は、全日本人男性死亡率に比べ有意に高かったが、生活習慣等の影響の可能性を否定できない。

内部比較では、累積線量の増加にともなう慢性リンパ性白血病を除く白血病の死亡率に有意の増加傾向は認められなかった。また白血病を除く全悪性新生物および喫煙関連の悪性新生物の死亡率に、累積線量の増加にともなう有意の増加傾向が認められた。しかし、これらの悪性新生物から肺の悪性新生物を除いた場合には、有意の増加傾向は認められなかった。

非喫煙関連の悪性新生物の死亡率に、累積線量にともなう有意の増加傾向は認められなかった。

これらの事実を勘案すると、今回認められた白血病を除く全悪性新生物の死亡率と累積線量との有意な関連は、生活習慣等の交絡による影響の可能性を否定できない。

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こちらのブログによると河野太郎の引用には誤植が多いらしいです。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
例→ 3ページ目 "食道; p=0.039、肝臓; p=0.025、肺; p=0.007"
2011/05/28(土) 23:33:40 | URL | どうも #-[edit]
ありがとうございます。拝見しました。うちのブログと違って非常に詳しく書かれていますね。参考になりました。
2011/05/29(日) 11:49:33 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
この報告書・・・
わずか10年の調査で結論付けるのは無理がない?

ガン発症までの潜伏期間より短いだろ
2011/12/01(木) 15:03:59 | URL | 被曝労働者 #JalddpaA[edit]
10年以上にわたる研究はまだなされてなかったということじゃないでしょうか、放射線影響協会の報告書は。ただ10.9年なら10.9年という限定つきでそれなりに結論を出しているのは評価できると思います。
2011/12/02(金) 12:15:59 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
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