ArtSaltのサイドストーリー

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QWERTYとレミントンとモールス信号の歴史

スミソニアン博物館で有名な Smithsonian Magazine の先月(2013年5月)の記事にQWERTY配列の歴史について面白いことが書かれていた。それによると、銃の製造で知られるレミントン社がQWERTYキーボードの普及に深く関わっていたという。もしもレミントンがタイプライターの生産に乗り出さなかったらキーボード配列の歴史も変わっていたかも。QWERTYとモールス信号の不思議な因縁の話も興味深い。

以下は "The Story Behind the QWERTY Keyboard | Design Decoded" の部分翻訳である。

1860年代のミルウォーキー。政治家であり印刷技師であり新聞屋でもあるクリストファー・レイザム・ショールズ (Christopher Latham Sholes) という名前のアマチュア発明家がいた。彼は自分のビジネスをもっと効率的にしようと様々な機械を作っていた。その中のひとつが初期のタイプライターだ。これは Samuel W. Soule, James Densmore, Carlos Glidden との共同開発であり1868年に特許を取得している。キーボードはピアノを模したものであり、28個のキーはアルファベット順に組み立てられた。ショールズたちはこの配列が最も効率的であると確信していた。どの文字がどこにあるか、誰もが素早くそれを見つけることができるからだ。キーを探して指があっちに行ったりこっちに来たりすることは減り、打鍵数が増える。何を変える必要があるだろうか? この時点ではQWERTYはまだその姿を現していない。

よく知られる説によれば、ショールズがキーボードのデザインを変えたのは機械構造的な弱点を克服するためである、とされる。(とはいえ当時のタイプライターは今日の中古店や蚤の市で見かける一番数が多いモデルとは少し違うのだが)。キーと文字プレートをつなぐタイプバー (type bar) は定期的に紙の下でハングした。近接した位置にあるキーを連続してタイプすると精密な機械はジャムる。よってショールズは配置のデザインを変えて "th" とか "he" のような最も頻繁に起きる文字の連続を分離した。この説によれば、QWERTYシステムは頻繁に連続する文字の組み合わせの距離を最大限にした、とされる。この説は簡単に反論できる。たとえば "er" は英語で4番目に多い組み合わせである。(訳者注:にも関わらずQWERTYでは "er" が隣り合っている)。

だが試作品のひとつは生産直前になってキーボードが変えられた。もしもこれがこのまま生産されていたらこの記事もQWERTYではなくQWE.TYキーボードに関するものになっただろう。

1873年までにはタイプライターは43個のキーが備わり、使用者の直感に反する配列になった。これは高価な機械を故障させないためである。形が先に決まって機能がそれに従ったのではない。先に機能があって形がそれに従ったのだ。このようにしてキーボードがタイピストに訓練を要求した。この年にショールズたちは銃のメーカーであるレミントンと生産に関して合意している。レミントンは設備が整った企業であり、精密機械を手がけており、かつ南北戦争後は民生部門に関心を示していた。

しかしながら "Sholes & Glidden" と名付けられたタイプライターの生産が始まる前にショールズは新たな特許を申請する。この特許にはキーボードの配列も含まれている。こうして1878年発行の U.S. Patent No. 207,559 はQWERTYレイアウトが登場する初めての文書になった。

レミントンとの取り引きは正解だった。レミントン製タイプライターは1890年までに全米で100,000台以上が使われた。1893年タイプライター生産の大手5社であるレミントン、Caligraph, Yost, Densmore, Smith-Premier が業界の組合 Union Typewriter Company を作ってQWERTYを事実上の標準として採用。キーボードの運命はこうして決まった。これが今日私たちが知っている愛すべきQWERTYキーボードである。

M&A以前のレミントンのビジネス戦術とQWERTY普及の関係をうかがわせる逸話がある。レミントンはタイプライターを作っただけではない。タイピスト養成講座もやっていた。もちろん安い料金で。訓練用のタイプライターを貸してくれるシステムで学んだタイピストはそのブランドに忠実になるだろう。ゆえにしっかりと訓練を受けたタイピストを雇いたい企業はレミントン製のタイプライターを導入しなくてはならなかった。このシステムは今日でも有効だ。iTunes, iTunes Store, iPod によって築かれたAppleの生態系に忠実な信者を見ればわかる。

引用と翻訳はここまで。

ところでQWERTYの歴史といえば安岡孝一氏の名前を無視するわけにはいかない。氏の論文がこの Smithsonian Magazine の記事でかなり正確かつ好意的に紹介されていた。

タイプライターのメカニクスがキーボードのデザインに影響を与えたのではない。モールス信号を文字に変換するときキーがアルファベット順に並んでいると非効率であると気づいたのは現場の電信オペレーターである。これがキー配列に影響を与えた…というのが安岡氏の意見の一部である。

Smithsonian Magazine の記事で紹介されていた安岡氏の見解をオイラなりに解釈して以下に箇条書きにしておく。

(モールス信号を擬似的にイメージとして表している部分について説明すると、スペース1個は普通の半角スペース1個を、3個連続スペースは nonbreaking space を3個並べて記述した)。

  • Z という文字をモールス信号で表すと "· · ·   ·" である。この信号は SE を表す "· · ·   ·" と同じで紛らわしい。SE の組み合わせは Z よりも使用頻度が高い。
  • モールス信号の受信者がこの "· · ·   ·" という信号を語の先頭として聞いたときこれが Z なのか SE なのか判断するには語の最後まで聞き取らないといけない。
  • こういう理由で語の最後を聞き取った瞬間に素早くタイプしやすいように E, S, Z は近い場所に置かれた。
  • モールス信号の受信者は送信者と同じ速度で信号を文字に変換する必要がある。仮にショールズが本当にタイプ速度を遅くするためにキーボードの配列を決定したらモールス信号受信者は送信者の速度に追いつかなかっただろう。ショールズがそんなナンセンスなことをしたとは到底信じられない。
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