ArtSaltのサイドストーリー

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英語を聴き取るのに役立つ3つの法則

最近何となくわかってきた英語のリスニングのコツ。今回ここで取り上げるのは 1) 声門閉鎖音の発生, 2) 母音の消失, 3) リンキングの曖昧化。これら3つのことを知っておくと英語ネイティブの話す英語を聴き取るのが少し楽になる。ここで言及する現象はアメリカ人の英語に特徴的なことであり、イギリスやインドやオーストラリアなどの地域には当てはまらないかもしれない。


星条旗

英語の音声学(?)とか発音学(?)とかまともに勉強したことがないのでこの記事で使っている用語にはあまり自信がない。それからここに書くことは英語ネイティブっぽくしゃべることを目的とするわけではない。スピーキングに関して言えば村上春樹みたいなひどい発音の英語でもいいのだ。ネイティブっぽく発音するための技巧の話は中二病の人たちにお任せする。だがリスニングは事情が異なる。英語ネイティブの発音を聴き取れなければ話にならないからだ。ここで説明する法則はあくまでも英語ネイティブの英語を聴き取るのに役立つ知識である。

声門閉鎖音の発生

声門閉鎖音 (glottal stop) とは声門(喉の気道?)を閉鎖した状態を言う。耳には聴こえない音だ。

たとえば英語の partner の "tn" の部分は以下のように発音するのが普通。

  • t - 舌の先端を上顎前歯の歯茎の内側に当てたまま息をとめる。この状態が声門閉鎖音。
  • n - 上記の状態すなわち上顎前歯の歯茎の内側に舌を当てた状態を維持して鼻から息を抜く。

つまり [t] から [n] への移行時に舌を歯茎から離さないというのが鉄則だ。これによって partner は「パルトナ」というより「パルッナ」みたいな発音になる。同様に forgotten は「フォガトゥン」ではなく「フォガッン」、hot inside は「ハッインサイ」みたいな発音になる。

声門閉鎖音の例で有名なのがロンドンのコックニー (Cockney) なまりの water の発音。[t] の音が声門閉鎖音になってしまう。

  • アメリカ人の water - 「ワラル」のように聴こえる
  • ほとんどのイギリス人の water - 「ウォータ」のように聴こえる
  • コックニーの water - 「ウォッア」のように聴こえる

母音の消失

以下のような語のつながりで母音の消失現象が頻繁に起きる。
right in front of the office
a hat and t-shirts

"right in front of the office" は正しく発音すると [rɑit in frʌnt əv ði ɔ:fis] だが "in" の母音が消失して [rɑit n frʌnt əv ði ɔ:fis] のような発音になることが多い。つまり「ライ・ン・フロンッ・オヴ・ディ・アフェス」みたいな発音。"right" の [t] は上述した声門閉鎖音になることが多い。

"a hat and t-shirts" は正しく発音すると [ə hæt ənd ti:ʃərts] だが "and" の母音 [ə] と子音 [d] が消失して [ə hæt n ti:ʃərts] のような発音になることが多い。"hat" の [t] は声門閉鎖音になることが多い。つまり「エ・ヘッ・ン・ティーシャルッ」みたいな発音。"black and white" が [blæk n wɑit] になるのと同じ現象。

リンキングの曖昧化

上のYouTube動画で茂木健一郎さんの英語 (TEDxTokyo - Ken Mogi - 05/15/10 - (English)) を聴いてみよう。冒頭のほうで茂木さんが "When I was a child..." と語る場面がある。

普通の人はこの文章を「ウェ・ナ・ワザ・チャエウド…」みたいな発音でしゃべると思う。つまり "when" の最後の子音 [n] と "I" の母音 [ɑi] をリンクさせて「ウェナエ…」みたいにしゃべる。これをリンキング (linking) とかリエゾン (liaison) と呼ぶ。「"an apple" は "アン・アポー" ではありません。"アナポー"と発音しましょう」とか誰もが中学校で教わったと思う。しかし茂木さんは "When I..." を「ウェン・アイ…」のように発音する。つまりリンキングがない。ちょっと気持ち悪い。

「ン」という1種類の文字で表される日本語の撥音(はつおん)は直後に続く音によってさまざまに変化する。直後に続く音がマ行とかパ行なら唇を閉じて鼻から息を抜き、タ行とかナ行なら舌の先端を上顎前歯の歯茎の内側に当てて鼻から息を抜く…などなど。ところが英語の [n] の音は直後に来る音が何であろうと「舌の先端を上顎前歯の歯茎の内側に当てて息を抜く」と決まっている。だから "when I..." は「ウェナエ…」になるわけだ。この大原則は滅多に崩れることがない。

ならば英語では子音の直後に母音が来れば必ずリンキングが発生するだろうか? そう断言していいだろうか? いや、必ずしもそうではない。ここが英語という言語のややこしい点だ。

ひとつ例をあげる。英語学習サイト「英語伝」にある音声を聴いてみよう。(再生するには Real Player または Real Alternative が必要)。
誘いをことわる方法 @ -女性の英会話劇場-

Sharon, I need your help... I got an invite for a party... which I should have declined a long time ago... and it's on tonight.

冒頭の部分。"I got an invite..." の部分。この英語ネイティブの女性はリンクさせずしゃべっている。つまり an の最後の子音 [n] と invite の先頭の母音 [i] がリンクしていないように聴こえる。

もうひとつ同じく英語伝から。(再生するには Real Player または Real Alternative が必要)。
ケータイ語その2。「もっと電波の入るところ」ってなんて言う? @ -女性の英会話劇場-

... I was rummaging through the closet last night and bumped into it.

終わりの部分。"bumped into it." の部分。ここで英語ネイティブの女性が bumped の最後の子音 [t] と into の先頭の母音 [i] をリンクさせていない。あるいはリンクさせていないように聴こえる。

重要なのは、"I got an invite" の an の最後の子音 [n] の部分は舌の先端をちゃんと上顎前歯の歯茎の内側に当てているということ。同様に "bumped into..." の bumped でも最後の子音 [t] の部分は舌が歯茎に当たっている。

つまりここでは、

  • [n] または [t] の部分で舌をしっかり歯茎に付けているにも関わらず直後の母音とのリンキングが起きていない、または起きていないように聴こえる

…という不思議な現象が起きている。正式名称があるかどうか知らないけどここではこれを「リンキングの曖昧化」と呼ぶことにする。

リンキングが明瞭になるか不明瞭になるかは明確な基準があるわけではない。同一人物が話す英語でもリンクしたりリンクしなかったりする。"an invite" も "bumped into" もはっきりとリンクしてもいいのだ。しっかりとリエゾンしてもいいのだ。でもアメリカ人の英語ではリンクしていないように聴こえることが多い。

なぜリンキングが曖昧になるのか。この問いに答えるのは難しいが、英語は強弱の違いが著しいという特徴があり、これがリンキングを曖昧にする理由のひとつだろうとオイラは直感的には考えている。この点は強弱があまりなくて平板なしゃべり方をするフランス語や日本語との決定的な違いでもある。それともうひとつ、冒頭でふれた声門閉鎖音だ。声門閉鎖音が発生すると直後の母音とのリンキングが完全に消滅する。

スピーキングについて少しだけコツを言っておく。強弱をはっきりさせて音節を意識してリンキングを曖昧にすれば、

a brain in an American

…みたいに [n] と母音の組み合わせが3回連続する一見難しそうな発音もなめらかに高速で発声できる。この例だと「American 以外の語はすべて1音節であり、強く発音する箇所は brain と American の第2音節だけであり、それ以外は弱く曖昧に発音する」ということを意識する。[n] と母音をリエゾンして「エ・ブレイ・ニ・ナ・ナメリカン」と発音しちゃうとネイティブっぽさが薄れる。そうではなく「エ・ブラエン・ン・ン・メリクン」みたいに発音する。ただし「ン」は必ず舌を歯茎に当てて限りなく「ヌ」に近い音で弱く発音する。こうすればネイティブっぽくなる。

まとめ

声門閉鎖音の発生、母音の消失、リンキングの曖昧化。この3つの法則というか現象を知っておくと英語ネイティブの英語を聴き取りやすくなる。漠然とした直感だが、これら3つの現象はどこかで深く関連していると個人的には思っている。英語はフランス語や日本語と違って強弱をはっきりさせてしゃべる。あるいは表面的には強弱が明確でなくても心の中で強弱を意識している。これが声門閉鎖音と母音消失とリンキング曖昧化を生み出しているのではなかろうか。

関連

以下のWiki形式のリンクが英語の発音の微妙な部分を詳しく説明していて面白いと思った。やや中二病っぽいところがあるけどね。
Anime Transcripts@アニメで英語 - 口語英語入門>英語の発音の変化 - リダクション、リンキング、フラッピング
Google
WWW ArtSaltのサイドストーリー
いつも興味深く拝見しています。
補足等できる点がありましたので、少々。


本文中で「声門閉鎖音」とされているのは内破音(無開放閉鎖音/unreleased stop)ですね。
言語によって、母音を伴わない閉鎖音(破裂音)を閉鎖後に解放するものと解放しないものがあり、フランス語は前者、英語は後者(すなわち内破音になる)です。

声門閉鎖音は日本語でいうと文尾の「っ」「!」に用いられている音です。
また、中国語では母音から始まる(とされている)語の語頭に付いているので、たとえば天安門(tian an men)は「ティエン・アン・マン」であり「ティエ・ナン・マン」とはなりません。

このように、声門閉鎖音とリエゾンや母音の合流には深い関係があります。
ただ、音素と認めている言語は少ないので、表記上の文字や記号から判別できることはあまりないのですが。

英語のような強弱アクセントの言語では、母音の消失は頻繁に起こりますね。
アクセントの置かれていない母音や機能語の母音は多くが曖昧母音化し、さらにそのなかでも弱いものが脱落していくという流れです。

リンキングの曖昧化について。もともとリンキング(リエゾン)は必須のものではなく、語をつなげて文にしたときに自然発生したものです。
なので、話者による個人差はあるかと思われますし、スピードや息継ぎの関係で現れたり現れなかったりの揺れもあるのではないでしょうか。
語学書付属のCD等で、吹き込みのネイティブが学習者を意識してしまって、逆に不自然なほどリエゾンがされていないのもよくあることですね。
2013/12/10(火) 03:05:48 | URL | Quee #SkZ2TKE2[edit]
コメントありがとうございます。無開放閉鎖音ですか。初めて聞く言葉なので調べましたがよくわかりませんでした。非常に詳しい説明に感謝します。
2013/12/10(火) 18:25:29 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
英語のリスニングの勉強中です。
ネイティブ・スピーカーの映画のリスニングが難しく感じるのは、音が欠落する場合、そしてりんキングする場合だということが分かってきました。
こちらのブログのように一度細かく分析見ることで、次のステップに進めるのではと感じました。
茂木健一郎さんの英語も初めて聞きました。とても興味深いです。
2014/09/04(木) 14:05:29 | URL | ETCマンツーマン英会話 #hfCY9RgE[edit]
ETCマンツーマン英会話さん、コメントいただき、ありがとうございます。
2014/09/04(木) 16:45:49 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
ArtSaltさん、こちらこそ。お返事有難うございました。
2014/09/04(木) 23:42:42 | URL | ETCマンツーマン英会話 #hfCY9RgE[edit]
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