ArtSaltのサイドストーリー

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ネイティブはなぜ発音記号どおりに英語を話さないのか?

語学の教材でしゃべる英語のネイティブは日本人向けに美しい発音で話してくれるけど実際の会話ではダラダラボソボソと聴こえることが多い。なぜネイティブは発音記号どおりにしゃべらないのだろう? ここでは実例を出して音変化(おんへんか)していく過程と仕組みを推理してみた。こういう規則性を知っておけばリスニングにも役立つと思う。

2013/12/27追記

(追記ここから)

紹介している音声ファイルは Real audio 。これを再生するメディアプレーヤーは非常に限られているのでMP3に変換し、そこから各例文を短く抜き出し、そのMP3ファイルのリンクを貼った。

(追記ここまで)


ニュージーランドの国旗

英語学習WEBサイトをやっている人たちは「発音記号(国際音声記号)を覚えましょう」みたいなことをよく言う。でも実際の英語ネイティブは発音記号どおりにしゃべってくれるわけではない。

自分はアメリカ英語の発音に慣れてしまったのでイギリスやオーストラリアやニュージーランドの人たちの話す言葉を聴き取るのが苦手だ。彼らが発する meet が「メイト」、perceive が「パセイヴ」、jacket が「ジャカ」、"isn't it?" が「イズナ?」となるような規則性を最近ようやく把握した。彼らの話す英語を発音記号(正確には国際音声記号と呼ぶのかな?)で表すのは簡単ではない。meet が「メイト」になるなら [meit] という発音記号で表記できるだろうか? いや、できない。ニュージーランド人らしき人たちが発する meet はアメリカ人の発する mate [meit] とは全く違う音だ。

meet が「メイト」になるようなお国訛り(なまり)とは別に、英語にはもう少し違う次元での音変化がある。このエントリーでは主として "an apple" が「アナポー」→「ナポー」→「(ン)アポー」 ([ən æpl] -> [n æpl] -> [(n) apl]) になるような一見不可解に見える変化を観察してみたい。

具体論に入る前に一般論みたいなものを並べておく。英語の発音の変化の仕方。

  • 母音の消失または癒合または収斂が起きる。
  • 子音の消失または癒合または収斂が起きる。
  • 無音に近くなる。
  • そのほか。

大事なのは、このような現象が起きやすいのはストレスが置かれない部分である、ということ。強く発音する部分ではこういうことはあまり起きない。

音の「高低」が意味の違いにさえ結びつく日本語とは対照的に英語は音の「強弱」が大きな意味を持つ。そしてリスニングの訓練で重要なのは「強く」発声される部分ではない。逆だ。「弱く」発声される部分をいかに聴き取るかが重要になる。「弱く発声される傾向があるのはどういう語か?」というポイントを押さえておけば訛る部分のリスニングも容易になる。ついでに言えばこういう知識を得ておけばネイティブっぽく話すスピーキングの訓練にも役立つ。

以下は自分用メモ。ここ数ヶ月英語の教材として利用させていただいているWebサイト「英語伝」の「Catch a movie 映画を見よう -EIGODEN-」から実例を引用する。

音声のURLはこちら。再生するには Real Player または Real Alternative が必要。
www.eigoden.co.jp/listening/quiz/sound/quiz030203/quiz030203.rm

ニュージーランド英語(オーストラリア英語?)っぽいものが聴こえてくる。ここから妙な発音をいくつか抜き出してみる。

"Why don't we" [wɑi dount wi:] を [wɑi n w] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「ワエ・ン・ウ」。

最初に取り上げるのがこれ。"Why don't we catch a movie?" ←なぜこれが「ワエ・ン・ウ・ケチュ・イ・ムーヴィー?」に聴こえてしまうのか? この謎を解き明かしたい。

まずは don't の読みが [dount] から [n] になる理由。これは [doun] -> [dn] -> [n] という順で変化したと解釈できる。don't に含まれる3種類の子音 (d, n, t) がいずれも「舌の先端を上顎歯茎の内側に付ける」タイプであることから起きてしまった現象だ。母音 [ou] が消失して [d, n, t] が1個の音 [n] に収斂すれば [dount] が縮まって [n] になる。

そして we の読みが [wi:] から [w] になる理由。これは母音が消失したと解釈できる。

don't が [n] に縮まっても、we が [w] に縮まっても、会話する上で支障はない。なぜなら "Why don't we catch a movie?" という文章で強く発声する必要があり重要なのは why, catch, movie だけであり、"don't we" は聴こえなくてもいい部分または弱く発声する部分だからだ。

"I haven't" [ɑi hævnt] を [ɑi əvnʔ] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「アヴンッ」。

(ここでは声門閉鎖音の発音記号として疑問符みたいな形をした [ʔ] を使うことにする)。

ここで起きたのは I と have の癒合。I は子音が存在しない1個の重母音(じゅうぼいん)。そして hotel を [out'el] と発音する英語ネイティブがいることから察せられるように子音の [h] は脱落しやすい。そのため haven't の先頭の [h] が脱落すると母音 [ɑi] と [æ] が連なるので両者が癒合しやすくなる。haven't [hævnt] が [əvnt] に変化、さらに haven't の最後の音 [t] が声門閉鎖音 [ʔ] になって "I haven't" が [ɑi əvnʔ] に変化する。

already [ɔ:lr'edi:] を ['ɔ:ridi:] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「オリディー」。

注目すべきことはストレスの位置。already は第2音節にストレスを置いて [ɔ:lr'edi:] と発音するのが普通だ。でもこの男性は第1音節にストレスを置く。しかも [l] を脱落させるので ['ɔ:ridi:] になる。

already をこういうふうに発音する人は非常に少ないと思う。しかし似たような例はある。たとえば almond は "l" が黙字 (silent letter) になって ['ɑ:mənd] と発音するのが普通だけど綴りどおりに "l" をそのまま発音して ['ɔ:lmənd] としゃべる英語ネイティブもいる。だとするとちょうど正反対の現象である [ɔ:lr'edi:] -> ['ɔ:ridi:] という変化は不自然ではない。

already のストレスの位置が第2音節から第1音節に移動した謎に関しては、「まあ、人それぞれだよね」としか言いようがない。たとえば「名詞の import は第1音節、動詞の import は第2音節にストレスを置きます」と誰もが学校の英語の授業で教わったと思う。でも実際はそう決まっているわけではない。動詞の import を第1音節にストレスを置いて発音する英語ネイティブだってたくさんいるのだ。already のストレスの位置も同様に考えればいい。

remember [rim'embə] を [rim'em] と発音している。(あるいはそう聴こえる)。「リメン」。

これは子音の [m] と [b] に「唇を閉じる」という共通点があることから起きた現象だろう。すなわち、

[rim'embə] -> [rim'emə] -> [rim'em]

…という順でなまった。まず [m] と [b] が癒合して [m] に収斂し、続いて曖昧かつ弱く発せられる母音 [ə] が脱落したと考えられる。


勘違いする人が出てくるかもしれないので少し補足しておく。私は「"don't we" を [n w]、"I haven't" を [ɑi əvnʔ]、already を ['ɔ:ridi:]、remember を [rim'em] と発音しましょう」と言っているわけではない。実例を出した上で「実際の会話のスピードだとこういう理由でこういう音変化が起きますよ」と事実を指摘しているだけだ。

日本語でもしゃべる速度が早くなれば発音はどんどん変わる。「やると思います」をローマ字表記すると "yaru to omoi masu" だが実際の発音では "yaru to moi masu" というふうに "omoi" が "moi" に変化する傾向がある。これは「"to omoi" に連母音(れんぼいん)が発生し、そこから母音が1個脱落した現象」と解釈できる。英語でも日本語でも似たようなことが起きるわけだ。

結論

  • 英語は弱く発せられる部分をいかに聴き取るかが重要。
  • 弱く発音する部分は母音の消失または癒合または収斂が起きやすい。(例: "a hat and t-shirt" [ə hæt ənd ti:ʃərt] が [ə hæʔ n ti:ʃərʔ] になる)。
  • 弱く発音する部分は子音の消失または癒合または収斂が起きやすい。(例: t, d, l, n などが連なると収斂)。
  • 弱く発音する部分は無音に近くなりやすい。
  • 母音の連鎖は癒合または収斂が起きやすい。
  • ストレスの位置は人により異なる。

(声門閉鎖音の発音記号として [ʔ] を使った)。

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私は言語学を学んでいまして、音韻論並びに音声学には疎いのですが、発話時のアクセントは恣意的に決定するというものがあります。もちろん大方発音されるアクセントは定められていますが、言いまつがうこともあります。
それがそのimportの発話時のアクセントに影響していると考えられます。
2013/12/31(火) 14:29:17 | URL | iwasisolated #-[edit]
なるほど。コメントありがとうございます。
2013/12/31(火) 15:03:02 | URL | ArtSalt(管理人) #-[edit]
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