ArtSaltのサイドストーリー

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英語が奇妙奇天烈な言語になったのはケルトとバイキングが原因

英語は他の印欧語に比べてなぜ異様な姿になってしまったのか? この謎を簡潔に解説した "Why is English so weirdly different from other languages - English is not normal" が面白かったので一部を日本語に翻訳して紹介しつつ自分の感想を添えた。数日前に投稿されたこのエッセイを書いたのは Columbia University で言語学をやっている John McWhorter という人。英語の文法に大きな影響を与えたのはブリテン島の先住民たるケルトとスカンジナビア半島沿岸で漁業と交易業をやっていたバイキングであるという指摘が自分には刺激的だった。なのでそのへんの議論を中心に抽出して引用する。

ケルト神話
ファイル:Cuinbattle.jpg - Wikipedia

英語に近い言語はない。英語圏の人が厳しい訓練を経ることなく話せるようになれる言語は存在しない。互いに簡単に習得できる言語の組み合わせの例はドイツ語とオランダ語だ。あるいはスペイン語とポルトガル語、あるいはタイ語とラオ語がそうだ。英語に一番近いのはフリジア語 (Frisian) と呼ばれる北ヨーロッパの言語だ。フリジア語 tsiis が英語で言うと cheese で Frysk が Frisian であることを知っていれば "Brea, bûter, en griene tsiis is goed Ingelsk en goed Frysk" の意味を理解するのは困難ではない。だがフリジア語は英語よりもドイツ語に近い言語である。

あれ? 英語に最も近い現存する言語は低地ドイツ語だと思ってたけど違うのかな? ちなみにフリジア語というのは日本語Wikipediaの説明によると「オランダのフリースラント州周辺およびドイツの北海沿岸にまたがるフリースラントで用いられる言語」だとか。他方低地ドイツ語は「オランダからベルギー北部、ドイツ北西部、エルベ川よりも東側のドイツ北東部」で用いられる言語らしい。

名詞に性の違い (gender) があるヨーロッパの諸言語は私たちにとって風変わりで厄介だ。たとえばフランス語だと月は女性名詞、船は男性名詞だ。だが実際には風変わりなのは私たち英語話者のほうだ。ヨーロッパの言語は大半が印欧語に属する。その中で名詞に性がないのは英語だけだ。

後述するけど、英語の名詞から性の違いを奪ったのは北欧のバイキングの仕業。ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語など現存の北欧の諸言語の場合いちおう男性名詞と女性名詞と中性名詞があるけど女性名詞は著しく数を減らしているため英語と同様に彼らの言語には事実上性別がないと言ってよいとか。

風変わりな点はまだある。現在時制の3人称単数に限って動詞に特別な接尾辞が付く地球上の言語は英語だけだ。私自身もその文法に従ってこの文章を書いている - "I talk, you talk, he/she talk-s". なぜ現在時制の3人称単数だけなのか? 普通の言語では現在時制の動詞の末尾には何も付かないもしくは非常に多様な接尾辞が付く。スペイン語だと hablo, hablas, habla というふうに変化する。それからもうひとつ。否定の文や疑問の文に "do" のようなものを添える言語を挙げることができるだろうか? それを挙げるのが難しいということがおわかりいただけるだろうか? (Do you find that difficult?) ウェールズ、アイルランド、あるいは北フランスの人でなければそのような例を挙げることは難しいだろう。

よく「動詞変化など英語の文法は難しい」と不満を言う人たちがいるけど他の印欧語に比べたら英語の動詞や形容詞の変化はとてつもなく簡単。たぶん印欧語の中で最も簡単。それと昔の名詞には現代英語の代名詞と同じように対格とか目的格とか主格とか属格とか与格などがあったけど現在では完全に消滅してるし。あと名詞の複数形も昔は複雑に変化していたけど今は child -> children など一部を除けば語尾に -s という接尾辞を付ける決まりに収束したから規則性は明確で単純だ。「1匹、3竿、100個、3,000本…」みたいな複雑怪奇な文法を使いこなしている日本語話者なら「英語は難しい」なんて言っちゃいかんでしょ。

古英語 (Old English) は同じ英語であると認識するのが突拍子もないことだと思えるぐらい現代英語とは似ても似つかない。他方アイスランド語を話す人たちは祖先に当たる古ノルド語 (Old Norse) で1,000年前に書かれたものを読むことができる。

これは本当にそう。古英語は綴りとかわけがわからない。アイスランド語の人たちが1,000年前に書かれたものを容易に読めるということはアイスランド語はあまり変化していないということか。

私たちの言語をこのような姿にした最初の原因は、アングル人とサクソン人とジュート人とフリジア人が自分たちの言語をイングランドに持ち込んだときに全く異なる言葉を話す人々が既にこの島に住んでいたことだ。彼らの言語はケルト系だった。ケルト語派というのは今日でもドーバー海峡の両岸で使われているウェールズ語とアイルランド語とブルトン語だ。ケルト人は征服されたが生き残った。ゲルマンの侵略者はわずか250,000人だったので古英語を話す人たちの大半はケルト人だった。

英語史を習った人はご存知だと思うけど、一般的にはケルト系言語の英語への影響はほとんどないとされる。ケルトの男は虐殺され、女は暴行され、子は奴隷にされた。ケルト人たちがイングランドを去ってウェールズなどに移動したので英語に残っているケルト系言語の語彙はほとんどなく、英語の文法にほとんど影響を与えなかった、とするのが一般に流布している説だ。でもこのエッセイを書いた John McWhorter さんの考えはそれとは少し違う。後述するように、彼の主張が正しければ、ケルトの人たちの言葉は英語における否定と疑問の文に関わる文法の核となる部分に強い影響を与えたのだ。

ケルト系の人たちは全員イングランドを出て行ったわけではない。ケルト系諸言語の影響を計るとき彼らがどの程度の規模でイングランドにとどまったのか知る必要がある。そのためには言語学だけでなく人類学と遺伝子調査による検証が必要じゃないかな。それと「ゲルマンの侵略者はわずか250,000人」と言うけど、当時のブリテン島の人口規模を考えると250,000人というのはかなりの大人数だと思うけどね。

重要なのはケルトの言葉が英語とは全く違っていたことである。たとえば動詞は文の最初に来る。 "The verb came first" ではなく "Came first the verb" 。それだけではない。ケルトの人々は動詞の "do" を用いて奇妙な構文を編み出した。do を使って疑問の文や否定の文を作り上げた。あるいは文の味わいに変化を付けるためにも do は使われた。曰く "Do you walk? I do not walk. I do walk." ケルト人がこのように英語を新しく翻訳し始めたために今日ではこのような形は馴染み深いものになっている。だがそのような構文は当時の元々の英語話者たちにとっては奇想天外だったはずだ。

動詞または助動詞の do を用いて普通の文を疑問の文に変えたり否定の文を仕立て上げるのは今日の英語話者にとってはごく普通のルーティーン・ワークだけど、この文法が固定するまでには紆余曲折と試行錯誤があった。で、 do をくっつけるという非常に簡潔な方法が多くの人たちの支持を得て生き残ったわけだけど、この方法を編み出したのはケルト人である、というのがこのエッセイを書いた人の主張だ。

ケルト人たちに次いでやって来たのは海を渡ってきたスカンジナビアのバイキングである。彼らは英語と同じゲルマン語派の話者だった。彼らの言語は古ノルド語 (Old Norse) だったがイングランドの人々にそれを強制することはしなかった。やがて彼らはイングランドの女性と結婚し英語を話すようになった。イングランドに来たバイキングは子どもではなく成人である。だから言語を新たに習得することは容易ではない。学校もメディアもなかった時代なので新しい言語を覚えるということは読むよりも聴くことに努力しなければならないということだ。仮に私たち英語話者が書かれたものを読まずにドイツ語を学んだらその結果どんなドイツ語を話すことになるのか想像してみるといい。

話は少しずれるけど、スウェーデン語とか英語とかゲルマン語派つまりバルト海沿岸の言語の発音って輪郭がノルウェーのフィヨルドみたいにゴツゴツとしてる。他方フランス語とかスペイン語などロマンス語派つまり地中海沿岸の言語の発音って起伏が乏しくてイタリア半島の海岸線みたいにのっぺりとしていて平滑な感じ。北欧諸言語が全体的に強弱をはっきりとさせる力強い喋り方なのはやはり気候とかが関係しているんだろうか?

このようなわけでスカンジナビア人たちの話す古英語はひどいものだった。彼らの子どもたちはそれを聞いて育った。月日が流れ、ひどい古英語は本当の古英語になった。そして現在に至っている。英語を単純にしたのはスカンジナビア人たちの功績である。

ちなみにバイキング (viking) って実態は海賊というよりも交易業者だったとか。海に出れば漁業で生計を立て、陸に上がれば農業をやる。そんな人たちだったらしい。暴力的な略奪行為って成功すればいいけど失敗することのほうが多いからコスト・パフォーマンス的には良いビジネスではなかったんだろうね。

かつて古英語には今日の正しいヨーロッパの言語がそうであるようにバカバカしいぐらい性の違い (gender) があった。だがスカンジナビア人はそういうことにはとらわれなかった。そのため今日の私たちは英語から性の違いを失った。この言語の奇妙な点はまだあって、さらに良いことに、バイキングが習得したかつての素晴らしき動詞の活用がわずか1種類だったことだ。かくしてフロントガラスに付着した虫のように3単現の動詞の接尾辞 "-s" だけが英語の文に今でもこびりついている。このようにしてバイキングは強い酒をなめらかな味の酒に変えたのだ。

英語の動詞変化を単純な形にしてしまったバイキングに感謝。あと名詞から gender を消し去ったことにも感謝。

スカンジナビアの人々はケルトの人々の先例に倣って英語を自分たちにふさわしい形に変えた。彼らは英語に数千から数十万の新語を与えた。

バイキングが英語に与えたのは語だけではない。文法にも影響を与えた。好ましいことに、「"Which town do you come from?" というふうに文末に前置詞を置く形は誤りであり、正しくは "From which town do you come?" である」なんて教える人は滅多にいなくなっている。このように文末に前置詞がぶら下がるのは全く普通の形だと私たち英語話者は考えている。ところが実際には私たちは自分がずぶ濡れであることに気づかない魚と同じようなものなのだ。普通の言語は前置詞をこんなふうにぶら下げない。スペイン語話者にとって "El hombre quien yo llegué con" (語順を変えずに英語に直訳すると "The man whom I came with") なんていうのはパンツを裏表逆に履くぐらい自然な表現である。ぶら下がる前置詞もまた古ノルド語の影響だ。この形はデンマーク語にもある。

ほお、英語の前置詞が文の末尾に不恰好にぶら下がる形を容認したのは北欧のバイキングたちだったか。ところで英語で前置詞の使用頻度が高まったのは、SVOとかSVOCという語の順列組み合わせが石造りの家のように強固になって逆に名詞から主格とか対格とか目的格などが消失していったことが背景にあるんだと個人的には思っている。

古ノルド語に続いてやって来たのはフランス語だ。10世紀にノルマンディーを征服した古代スカンジナビア人であり、バイキングの末裔でもあるノルマン人がイングランドを征服した。支配は数世紀にわたって続き、英語は10,000の新語をフランス語とラテン語から得た。16世紀になると高い水準の教育を受けた英語話者が英語の語彙の意味を豊かにした。彼らはラテン語から新たな語をつまみ食いして英語に高尚な意味を与えた。

フランス語とラテン語の流入のおかげで英語は crucified, fundamental, definition, conclusion などの語を得た。これらの語は今日の私たちから見れば普通の英語だ。だが1500年代のイングランドの著述家の多くは "irritatingly pretentious and intrusive" というフランス語またはラテン語の並びを忌々しいぐらい気取っていて押し付けがましい (irritatingly pretentious and intrusive) と感じていた。今日フランスの衒学者がフランス語への英語の流入を鼻であしらうようなものだ。これらの高尚なラテン語を従来の英語で置き換えることを提唱する者さえいた。これは crucified, fundamental, definition, conclusion をそれぞれ crossed, groundwrought, saywhat, endsay と言い換えるようなものだ。

crossed, groundwrought, saywhat, endsay なんてのは悪くない造語だと思う。確かドイツ語話者が似たようなことをやってきたんじゃなかったかな? ドイツ語はよく知らないけど。

だが言語というのは私たちが望むようにはならない。賽は投げられた。英語は数千から数十万の新しい語を獲得し、従来の英語で言い表していたものを新しい語でも言い表すことができるようになった。その成果のひとつは3重語(三重語、さんじゅうご, triplet )である。3重語のおかげで物事をさまざまな度合いで表すことができる。英語の help, フランス語の aid, そしてラテン語の assist - というふうに。英語の kingly は嘲るような感じだが、ラテン語の regal は王座のように背もたれがまっすぐな感じ。そしてフランス語の royal はどこか中世の、尊敬すべきだが間違いをしでかしそうな専制君主の感じ。

それから2重語(二重語、doublet )。例としては従来の英語の begin とフランス語から来た commence 、あるいは want と desire など。特に注目すべきは料理に関する語の使い分けの変容だ。私たちは a cow or a pig を殺して beef or pork を生産する (We kill a cow or a pig to yield beef or pork.) 。 cow と pig は旧来の英語で、 beef と pork はフランス語由来だ。なぜこのように使い分けるのか? ノルマンに征服されていた時代のイングランドにあっては食卓についた金持ちのフランス語話者に仕えて屠殺の仕事をやるのは一般に英語話者の労働者だった。肉を意味する語の使い分けは各人の立場を反映していた。階級によってこのように区別する傾向は慎重に私たちの世代に受け継がれたのだ。

cow と beef の使い分けは屠殺業に関わっているか否かの違いが由来? この説も斬新。エッセイなのであっさりとした説明になるのは仕方ないけど文献的な裏づけが欲しいね。

語彙が混濁している言語は珍しくない。だが英語は大半のヨーロッパの言語に比べると混血の規模が大きい。たとえば "To be fair, mongrel vocabularies are hardly uncommon worldwide, but English’s hybridity is high on the scale compared with most European languages." という文は古英語、古ノルド語、フランス語、ラテン語から成る。それからギリシャ語も英語を構成する要素のひとつだ。もしも歴史が別の道に向かっていたなら私たちは photographs を "lightwriting" と呼んでいただろう。19世紀には科学的なものはギリシャ語の名称を与えられるべしという流行の考え方があった。かくして化学の語彙は判読できないものばかりになった。なぜ私たちは monosodium glutamate (グルタミン酸1ナトリウム) を "one-salt gluten acid" と呼んではいけないのだろう?

消防車の放水のような語彙の流入のおかげで語に対するストレスの置き方は2種類になった。 wonder に語尾をくっつけると "wonderful" 。だが modern に語尾をくっつけるとストレスを置く位置は語尾に引っ張られる形で移動する。つまり MO-dern に語尾をつけるとストレスの位置が移動して mo-DERN-ity になる。 MO-dern-ity ではない。WON-der -> WON-der-ful, CHEER-y -> CHEER-i-ly にはこれと同じことが起きない。しかし PER-sonal ではストレスの置き場所が移動して person-AL-ity になる。

何が違うのだろう? -ful と -ly はゲルマン語派の言語で使用されている語尾だ。他方 -ity はフランス語から来た。フランス語とラテン語の語尾はストレスの位置を自分のほうに引き寄せる - TEM-pest -> tem-PEST-uous. 他方ゲルマン語派の語尾はストレスの位置をそのままにする。

CIvil -> CIvilize, maTErial -> maTErialize の場合はストレスの位置は変わりないね。-ize はそれ自体に第2ストレスを置く接尾辞だから強弱を2拍のリズムとする英語の作法に従うと第1ストレスの位置を変えないのは妥当なんだろうけど。

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