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ArtSaltのサイドストーリー

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ビル・エヴァンズは Blue In Green の印税をほとんど得ていなかった

"Blue In Green" というジャズの名曲がある。初めての出会いはビル・エヴァンズ (Bill Evans) の "Portrait In Jazz" に収録されている同曲だった。感銘を受け、それ以後たぶん300回ぐらい聴いていると思う。このCDのブックレットでは作曲者として "Davis-Evans" とクレジットされている。つまりマイルズ・デイヴィス (Miles Davis) とエヴァンズが一緒に書いた曲と解釈できる。この曲はRiversideレーベルに吹き込まれたエヴァンズ・トリオのスタジオ録音に数ヶ月先駆けてマイルズの有名なアルバム "Kind Of Blue" (Columbia, CBS) でも吹き込まれている。ところが後日知ったのだが、 "Kind Of Blue" ではマイルズ単独の作曲だとされている。

2枚のアルバムが録音されたのはいずれも1959年。当時ではこの種の契約とか権利関係の扱いは杜撰だったのかもしれない。だが曲の権利が両者にあるのか、それともマイルズだけにあるのか、それによって印税を受け取る者が変わるのだ。カネの問題はシビアだ。この謎を解くべくWikipediaで調べたら意外な事実を知ることができた。

Portrait In Jazz by Bill Evans

"Blue In Green" の作曲者はマイルズ・デイヴィスの "Kind Of Blue" でもほとんどのフェイクブックでもデイヴィスの名前のみが記されている。だがこの曲の真の作曲者はビル・エヴァンズであると長らく考えられている。デイヴィスは自伝の中で、この曲は自分一人で書いた、と主張している。1959年吹き込みのビル・エヴァンズ・トリオのアルバム "Portrait In Jazz" はこの曲を "Davis-Evans" とクレジットしている。アール・ジンダーズ (Earl Zindars) はウィン・ヒンクル (Win Hinkle) によるインタビューの中で、 "Blue In Green" は100%ビル・エヴァンズの作曲である、と言っている。1979年5月27日に行われたラジオ・インタビューの中でエヴァンズ自身も、自分がこの曲を書いたと語っている。マリアン・マクパートランド (Marian McPartland) によるインタビューでこの件について尋ねられたエヴァンズは、「本当は(この曲を書いたのは)自分だよ…この件に関しては騒ぎ立てたくないね。この曲が存在して、そしてマイルズがそこから印税を得ている」。エヴァンズによれば、自分もこの印税の権利が欲しいと提案したところ、デイヴィスは彼に25ドルの小切手を切ってくれたという。

Blue in Green - Wikipedia

著作権が続く限り誰かが "Blue In Green" を演奏するたびに印税が著作権者に入る。もちろんCD1枚が売れるたびに、あるいは有線放送でこの曲が流れるたびに印税が入る。ところがエヴァンズの発言が真実だとすると彼への印税は25ドルで終わってしまったのかもしれない。

そして肝心の作曲者。おそらくエヴァンズの証言が正しいのだろう。100%彼の作品。マイルズ・デイヴィスは実際には作曲していない。

2017/11/13 追記

Yahoo!知恵袋にこの件を深く詳細に追求している質問と回答があった。素晴らしい内容なので追記として引用する。
ビル・エヴァンスの曲について。マイルスとエヴァンスとの関係。Kind of Blueの謎 - Yahoo!知恵袋

Affintyという、シールマンスと組んだアルバムがあります。その収録曲でビル・エヴァンスの作曲で、 Blue and Green という曲があるのですが、この曲はマイルスの名盤の Kind of Blue に収録されている、 Blue in Green と同じですよね? and と in の違いで、最初に私は誤植かなと思ってAmazonで確認しましたが、誤植ではないようです。

作曲のクレジットを見ると、Affinty収録の「and」のほうはエヴァンスとマイルスの連名、Kind of Blue 収録の「in」のほうはマイルスです。英語のWikiで調べると、マイルスは自分が作曲したと言い張っていて、エヴァンスはマイルスではなく自分が単独で作曲したと言っています。日本語のWikiは英語を直訳しただけで、特に詳細な見解はありませんでした。

さて。。。

1) 同じ曲なのかどうか?なぜ「and」と「in」と違うタイトルにするのか?
2) なぜ作曲のクレジットが違うのか? マイルスが自作だと言い張る理由は何なのか?
3) 恣意的に「and」と「in」と違うようにしているとしか考えられないのですが、その理由は?

以上よろしくお願い致します。

1)
同じ曲です。

2)
マイルスは「オレの曲」とは言い張っていません。言い張っていたのは、エバンスです。マイルスはエバンスにひと言もいわず、勝手に自分の名だけをクレジットしてしまって以降は、この件については死ぬまでダンマリを決め込みました。怒ったエバンスに、マイルスは数ドルの小切手を渡したといわれていますが、エバンスが納得したとは到底思えません。

3)
>恣意的に「and」と「in」と違うようにしているとしか考えられないのですが…

おそらくそうでしょう。理由は「私の曲」という、エバンスなりの意地と思われます。というのも、エバンスは『Affinity』と『Portrait In Jazz』という作品以外に、『Blue In Green』を生涯にわたって7回演奏していますが、この7回は全てライブかラジオ公開放送です。これらのライブ等は現在、CDで聴くことができますが、全て海賊盤です。つまり、エバンスがスタジオで“公式”に『Blue In Green』を録音したのは、『Portrait In Jazz』『Affinity』2回だけということになります。

ここから先は推測ですが、おそらくエバンスは“公式”に『Blue In Green』を録音したくなかったんでしょう。なぜなら、録音すれば、法的な作曲者としてクレジットされているマイルスに印税が入ってしまうから。『Kind Of Blue』の8カ月後に録音した『Portrait In Jazz』で、そのことが身にしみたのかもしれません。エバンスはそれが許せなかったのではないでしょうか?

ところが、ライブ等で演奏する楽曲の印税は曖昧で済ませられるけど、『Affinity』収録となると、そうはいきません。『Affinity』は大手レコード会社・ワーナーからの発売ですから、法的な問題はきちんとクリアしていないとマズいですしね。でも、エバンスにはマイルスだけに印税を渡したくない意地がある。そこで、クレジットは“共作”にし、タイトルも「And」に変え、“形だけは別の曲を装う”というウルトラCの折衷案が飛び出したんだと思います。

『Blue In Green』というタイトルのままでは、マイルス単独のクレジットでしか使用できず、マイルスのフトコロだけにカネが転がり込む。それでは、エバンスの意地が通らない。クレジットにエバンスの名を載せるため曲名も一部変更し、別の曲を2人で作ったように装えば、マイルス、エバンス双方の顔もたつ…まあ、ワーナーの入れ知恵でしょう。この折衷案をのまざるを得ない弱みが、マイルスにもあったということだと思います。と同時に、エバンスの頑固な性格も、垣間みられるような気がします。

もう1つ、なぜ、『Affinity』に限って、公式にレコーディングしたのかという疑問が残りますが、これは正直分かりません。考えられるのは、生涯もう一度だけ、奪われた名曲を自分の手で録音しておきたかったから。実際、エバンスは『Affinity』録音後、2年も経たずにこの世を去ってしまいました。

『Blue In Green』は、ビル・エバンスの曲です。

少し補足する必要があると感じたのでいくつか補足。

"Blue In Green" の作曲者の名義は長らくビル・エヴァンズのLPレコード "Portrait In Jazz" のライナー・ノーツまたはセンター・レーベルにおいて "Davis" とだけ記されていたらしい。しかしその後のLPとCDでは "Davis-Evans" と記されるように変更されたようだ。記憶が正しければ私が買ったのは2000年ごろにプレスされたCDだ。なので私のCDでは "Davis-Evans" になっていたわけだ。

下の写真はオランダのレコード会社が発売したLPレコードのセンター・レーベルである。発売年はおそらく1960年。録音は1959年だから翌年プレスされたレコード。この時点では同曲が共作ではなくマイルズ・デイヴィス単独の名義になっている。

Portrait In Jazz by Bill Evans, manufactured in Netherland

エヴァンズは1980年に亡くなったので生前に受け取った "Blue In Green" の印税は本当に24ドルだけだった可能性がある。現在は彼の親類が莫大な印税を受け取る権利を獲得しているかもしれない。

上記Yahoo!知恵袋で回答者が、ライブだから著作権と印税は曖昧にすることができる、という趣旨の説明をしているけど、これは大いにありうると思う。RIAA ( Recording Industry Association of America, 日本のJASRACのようなアメリカの団体)の職員が地球上のすべてのライブを監視しているわけではないからね。でもスタジオ録音だと誤魔化しが効かないから2回の吹き込みで終わってしまったのだろう。

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