ArtSaltのサイドストーリー

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different than という形の優位性

"different than" という形は文法違反かもしれないが "different from" よりも便利な場合もある。 from は前置詞なので後ろに節(せつ)が来ない。だが than は接続詞なので後ろに節を置ける。比較対象が節なら than のほうが形としてすっきりしていて理解しやすいのだ。

The Book Of Strange New Things: A Novel

よく知られているように、英語の形容詞 different の後ろには from が来るのが普通だが different than, different to の形もある。ただし文法的に正しいのかどうか議論がある。 different than という形の由来に関しては、 differ の語尾が形容詞の比較級の語尾と同じであることに影響を受けて different の後ろに than が間違って(?)来るようになってしまった、という本当か冗談かわからない噂を聞いたことがある。

この噂の真偽はともかく、 different from, different than, different to という3種類の組み合わせに関しては国によって好みが分かれるんだとか。イギリスやオーストラリアなどに比べてアメリカでは different than の形を認める人が多いらしい。

だが、国によって from, than, to の使用頻度が異なるというトリビアを知っただけで満足してはいけないと思う。というのも different than の形のほうが different from よりも適している事例が明らかに存在するからだ。

最近読み始めた "The Book Of Strange New Things: A Novel" (Michel Faber) という小説の中に different than の形が出てきた。これは地球から遠く離れた惑星に牧師として派遣された男を描くSFだ。(日本語版が出版されているかどうかは不明)。

I once read a Science Ficiton story in which a young man traveled to an alien planet, leaving his wife behind. He was only away for a few weeks and then he returned to Earth. But the punchline of the story was that Time passed at a different rate for her than it did for him. So when he got back home, he discovered that 75 earth years had sped by, and his wife had died the week before. He arrived just in time to attend the funeral, and all the old folks were wondering who this distraught young man might be.

若い男が妻を残して他の惑星に飛び立つSFを読んだことがある。男はわずか数週間後に地球に戻る。だがこの話のオチは、時間が男と妻に対して異なる速度で進んだことだ。男が帰還すると地球では既に75年という時間が経過していた。そして妻は先週に亡くなっていた。男はなんとか葬儀に間に合うものの、そこにいた老人たちは彼を見て戸惑うのだった。この取り乱した若い男は誰なのだろう、と。

The Book Of Strange New Things: A Novel by Michel Faber

"Time passed at a different rate for her than it did for him." という文。これは厳密に言えば文法違反だろう。文法至上主義者は言うかもしれない。 different の後ろには than ではなく from が来るべきである、と。

だがこの文を正規の(?)文法に従って from を使って書き直すとなると意外に厄介であることに気づいた。あえて言い換えるなら下の #2 のように "the way" を使って書き直すしかないと思う。まあ、もちろん他にも言い方はあるんだろうけど残念ながら自分の英語の実力ではこれ以外の言い換えは思いつかなかった。

  1. Time passed at a different rate for her than it did for him.
  2. Time passed at a different rate for her from the way it did for him.

なぜこんな面倒なことになるのか? 理由ははっきりしている。#1 の than が接続詞であるのに対して #2 の from は前置詞だからだ。接続詞は直後に節(せつ)を置くことができるが前置詞はそれができない。前置詞の目的語は名詞または代名詞でなければならない。あるいは「限定詞 + 名詞または代名詞」という組み合わせでなければならない。ゆえにここでは way という万能な便利屋さんの出番となるわけだ。

the way を使って言い換える行為にはある種の強引さがある。この強引さが何かに似ていると感じないだろうか? そう、これは語尾に "-ly" が来る形容詞を無理やり副詞っぽく変えてしまう手法の強引さとそっくりだ。語尾に -ly が来る形容詞というのは具体的に言うと friendly, lively, lovely, early など。これらを副詞のように変えるには "in a friendly manner" のような手の込んだ表現にするしかない。(いや、他にも表現方法はあるのかな?)。そしてこの、居心地の悪さ、あるいはぎくしゃくとした感覚は "Time passed at a different rate for her from the way it did for him." の "from the way..." と非常によく似ていると感じる。

もう一つ事例を出す。

  1. Her behavior was different from what I expected.
  2. Her behavior was different than I expected.

これは単純な文なので different than の形が特に理解しやすいとは感じられない。ただし意味が微妙に違う。微妙な違いだが大きな違いだ。

"Time passed at a different rate for her than it did for him." という文は文法に反しているかもしれないが from を使った形よりも直感的に理解しやすく馴染みやすい。つまり different than の形のほうがはるかに便利だと思われる事例が明らかにあるのだ。だが不思議なことに different than のこの優位性に言及している人を日本語Webサイトの中ではあまり見かけない。

Oxford Dictionary が私の問題意識に応えていた。引用しておく。

It has the advantage that it can be followed by a clause, and so is sometimes more concise than different from: compare things are definitely different than they were one year ago with things are definitely different from the way they were one year ago.

Different than は後ろに節を置くことが可能である点で有利である。そして different from よりも簡潔になることもある。 "things are definitely different than they were one year ago" と "things are definitely different from the way they were one year ago" を比較してみよう。

different | Definition of different in English by Oxford Dictionaries

(日本語に比べて)英語は論理的である、とよく言われるけれど、論理性を追求すると難解で複雑になることもあるんだなあ、というのが私の感想。文法的な正しさ云々よりも理解しやすさを選択したアメリカ人たちに感謝したい。

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