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ArtSaltのサイドストーリー

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オーストラリア訛りは大母音推移とは正反対の方向に進化したもの

最近気づいたことがあるのでブログに書いておく。英語のオーストラリア訛り (Australian accent) 。もっと広く言えばニュージーランド訛りを含むオセアニア訛りと言ったほうがいいかもしれない。具体的には以下のような母音の訛り。

  • エイ -> アイ (e.g. day -> die)
  • アイ -> オイ (e.g. bay -> boy)
  • イー -> エイ (e.g. meet -> mate)
  • オウ -> オイ (e.g. row -> Roy)
音声の実例を貼っておく。男性はいわゆるアメリカ英語だが女性のほうはおそらくニュージーランド英語を話している。 "Where shall we meet?" が "Where shall we mate?" のように聞こえてしまう。(この音声ファイルは以前「 EIGODEN 英語伝」に置かれていたが現在リンク切れになっている)。
ニュージーランド英語の例 (MP3)

で、ふと思ったのは、オセアニアの英語の母音変化は14世紀にイングランドで始まった大母音推移 (Great Vowel Shift, GVS) とちょうど正反対であること。

vowel tongue position
Courtesy of Wikimedia Commons

ここで大母音推移を大雑把に整理しておこう。

英語において1350年頃から1600年頃にかけて起きた長母音の変化。最も舌の位置の高い/iː/ /uː/は/ei/ /ou/と二重母音化した。他はそれぞれ舌の位置が一段階高い位置に変化し、/eː/→/iː/, /ɛː/→/eː/, /oː/→/uː/, /ɔː/→/oː/, /aː/→/ɛː/に変化した。

大母音推移(だいぼいんすいい)とは - コトバンク

name, house などの語尾の -e は大母音推移が始まる以前に黙字になっている。言い換えると2音節の語が1音節になり、数百年後さらに大母音推移したわけだ。たとえば name は /na:me/ → /na:m/ → /nɛ:m/ → /neim/ 、 house は /hu:se/ → /hu:s/ → /həus/ → /haus/ とそれぞれ変化。

  • 長母音 [aː] →二重母音 [eɪ] (e.g. name 「ナーメ」→「ネイム」)
  • 長母音 [eː] →長母音 [iː] (e.g. feel 「フェール」→「フィール」, keep 「ケープ」→「キープ」)
  • 長母音 [εː] →長母音 [iː] (e.g. eat 「エート」→「イート」)
  • 長母音 [iː] →二重母音 [aɪ] (e.g. time 「ティーメ」→「タイム」, find 「フィーンド」→「ファインド」)
  • 長母音 [ɔː] →二重母音 [oʊ] (e.g. home 「ホーメ」→「ホウム」, goal 「ゴール」→「ゴウル」)
  • 長母音 [oː] →長母音 [uː] (e.g. fool 「フォール」→「フール」, food 「フォード」→「フード」)
  • 長母音 [uː] →二重母音 [aʊ] (e.g. now 「ヌー」→「ナウ」, house 「フース」→「ハウス」)

大母音推移を表にすると以下のようになる。

Word Vowel pronunciation
Late Middle English
before the GVS
Modern English
after the GVS
bite /iː/ /aɪ/
meet /eː/ /iː/
meat /ɛː/
mate /aː/ /eɪ/
out /uː/ /aʊ/
boot /oː/ /uː/
boat /ɔː/ /oʊ/

Great Vowel Shift - Wikipedia

大母音推移を解剖学的に一言で説明すると、舌の位置が上に少し移動する現象だ。オセアニア英語に見られる母音の変化はそれとはちょうど正反対。舌の位置が下に少し移動するわけだ。もう一度オーストラリアとNZの人たちの母音の訛りを見てみよう。

  • エイ -> アイ (e.g. day -> die)
  • アイ -> オイ (e.g. bay -> boy)
  • イー -> エイ (e.g. meet -> mate)
  • オウ -> オイ (e.g. row -> Roy)

一般的に言って母音が訛って変化するときは舌の位置が下がるほうが自然である。舌の位置を高くするというのは舌の筋肉を緊張させ、酷使することであり、逆に舌の位置を低くするというのは舌の筋肉を弛緩(しかん)させることだからだ。よく知られているように大母音推移は英語の歴史を研究する人たちにとって最大の謎である。というのも、舌の位置が下がるのではなく自然の摂理に反して上がるほうに母音の発音が変化を開始したからである。言い換えるとオセアニアの人たちの訛りのほうが通常の変化なのだ。

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