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イギリスの地名の大半は第1音節に第1ストレスがある

イングランドにマンチェスターという有名な都市がある。英語の Manchester は何と読むのだろう? ふと疑問に思い、辞書で調べて驚いた。正解は /'mæntʃistə:/ である。ストレスが置かれるのは第1音節なのだ。てっきり第2音節にストレスを置くのだとばかり思っていた。

(注意: ストレスが置かれる場所をアポストロフィー (') で示す)

Manchester
Courtesy of Free Images - Pixabay

言語学的に言うと、アイスランド語、ドイツ語、スウェーデン語などゲルマン系の諸言語は第1音節にストレスを置くのが基本だ。英語はこのグループの中にあって例外的にストレスの位置があっちこっちに移動する。これは、イギリスの教養ある人たちが11世紀に始まるノルマン・コンクエスト (Norman conquest of England) の時代にラテン語やフランス語などから思想または神学に関わる語彙を外来語として大量に英語に持ち込んだ結果だ。

古フランス語やラテン語からやって来た高尚な外来語は当初は教会の祭事や学者の論文や役人の書類や政治家の演説などで使われるにとどまっていただろう。それが次第に庶民の日常会話の中に入って来るようになる。だが人名や地名などの固有名詞は外来語から何ら影響を受けない。結果的にイギリスの地名には古い時代の英語の発音と綴りが化石のように生き残ったのだと思われる。

City Mayors: Largest UK towns and cities というWebサイトに人口が多い順にイギリスの都市が並んでいる。ここから上位100都市の地名を抽出し、すべて辞書で参照し、第1音節にストレスを置くタイプがどの程度あるのか調べた。

結果は以下のとおり。

第1音節にストレスを置くタイプ
91都市
第1音節以外にストレスを置くタイプ
5都市
Carmarthenshire, Kirklees, Northampton, Southampton, Wolverhampton
複数の読み方があって、第1音節にストレスを置くことも、第1音節以外にストレスを置くこともあるタイプ
4都市
Aberdeen, Aberdeenshire, Caerphilly, Dundee

100都市のうち91都市の名前が第1音節にストレスを置いて発音される。これは圧倒的な数字と言っていい。

このうち Leeds とか Fife とか Bolton などは第1音節にストレスを置くのが自明な事例だ。それに対して、冒頭の Manchester のように、第1音節にストレスが置かれることが意外に感じられる事例をいくつかあげてみよう。ご覧のように綴りが難しいものが多い。
Gloucestershire, Renfrewshire, Huntingdonshire, Lincolnshire, Manchester, Macclesfield, Middlesbrough

綴りが難しいだけでなく、そもそも読み方がわからない。いや、それ以前に、「こんな長い綴りの語を第1音節にストレスを置いて発音してしまうと、最後のほうまでリズム的に美しく(?)発声できないのではなかろうか?」という疑問が湧いてくる。だがイギリス人たちはそんなことを気にせずに先頭の音節のみを強く発声し、それ以後は弱い声でダラダラと発声するのだ。

これを言ってしまうと実も蓋もないが、英語と日本語はリズム感が全く異なる言語だ。ストレスが重要な働きをする英語。それに対してピッチ・アクセント (pitch accent) が重要な働きをする日本語。この違いと言ってもいい。日本語ネイティブが英語を習得するにはこの違いを理屈としてしっかりと理解する必要があると思う。(体感的に知るのも重要だけど)。

それから、奇妙な発音と言うか、今日の感覚から見ると綴りと発音が一致しない事例をいくつか。
Edinburgh /'edinbərə/, Derby /'dɑ:bi:/, Leicester /'lestə:/
今日の感覚から見ると綴りと発音が一致しないように思える英語の単語は一般的には15世紀から17世紀にかけて起きた大母音推移 (Great Vowel Shift) で説明できるが、ここに並べた事例はそれ以前の問題だ。イギリス人が実際の発音の変化に合わせて綴りを変えるという面倒な作業を怠ったせいでもある。まあ、普通名詞と違って固有名詞の綴りは安易に変えるべきではない、という素朴な感情は理解できないでもない。
あと、イギリス人がアメリカ人にイギリスの地名を読ませる動画(4分27秒)。綴りと発音が対応していない例がたくさん出てくる。これが面白い。アメリカ人でさえ正しく発音できないのだ。これなら日本人がイギリスの地名を読めないのも仕方ない。英語のリスニングが苦手な人でもこの動画の面白さを理解できると思う。
How to Pronounce UK Place Names - Anglophenia Ep 23 - YouTube

イギリスとは対照的に現在のアメリカ合衆国の大半はかつてフランスとかスペインの植民地だったわけで、地名を表す語がフランス語とかスペイン語由来になる。ゆえにストレスの位置が第2音節以後に置かれることが多い。ただしドイツ系やスウェーデン系移民が多く定住した土地の名はイギリスの地名の綴りと酷似しており、歴史学的に興味深い。

地名の読み方に関しては以下のWebサイトを参考にさせていただいた。

このうちYouTubeの WordBox というチャンネルは人口音声なのか本物の人間が発した声なのか判断できない。それぐらい自然な声だ。

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