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時制の一致の例外を考察してみる

英語の「時制の一致」とは何か? 大前提として主節の動詞が過去、過去進行、過去完了、または過去完了進行なら従位節の動詞は以下のように変化する。

  1. 現在→過去
  2. 過去→過去または過去完了
  3. 現在完了→過去完了
  4. 過去完了→過去完了

注目すべきは #2 だ。主節の時制が過去なら従位節の時制は過去完了になるのが原則だが、変化させず過去のままでもいい事例があるということ。興味深い問題なので後で詳しく考察する。

時制の一致の例外
不変の真理などを強調する場合
今も当てはまる事実を言う場合
比較を表す場合
歴史上の事実を示す場合

上記のうち、「今も当てはまる事実を言う場合」の具体例。

  • (1 a.) I was told that eventually I would have to have surgery.
  • (1 b.) I was told that eventually I will have to have surgery.

(1 a.) は時制の一致。医者から説明を受けた時点では「将来手術を受けなければいけない」という事実があったわけだ。そして語り手が "I was told…" と語った時点で手術を既に終えているなら、この例文がふさわしい。

(1 b.) は時制の一致の例外。語り手が "I was told…" と語った時点でも「将来手術を受けなければいけない / 手術をまだ済ませていない」のなら、この例文がふさわしい。

以下は最近見かけたロイターの記事。 "will expel" という形が見られる。この記事が書かれた時点では外交官がまだ国外退去していないので記者は時制の一致の例外ルールを適用したのだろう。

Russian Foreign Minister Sergei Lavrov said on Friday Russia will expel British diplomats in response to London's decision to expel 23 staff at the Russian embassy in London.

(Russia's Lavrov says Moscow will expel British diplomats | Top News | Reuters)

上記のうち、「比較を表す場合」の具体例。

  • (3 a.) She said that in the late 1960's crossing the roads of London had not been as perilous as it was then.
  • (3 b.) She said that in the late 1960's crossing the roads of London was not as perilous as it is now.

(3 a.) は、語り手が "She said…" と言った時期と、「昔と違ってロンドンの道を横断するのが危険になった」時期がかなり離れている場合に使う表現。もっと具体的に言うと、語り手の発言が2018年で、彼女の発言が1970年代である場合など。2018年に発言している人から見ると1970年代の発言は "now" ではないので "as it was then" になるわけである。

(3 b.) は、語り手が "She said…" と言った時期と、「昔と違ってロンドンの道を横断するのが危険になった」時期がほとんど同じである場合に使う表現。もっと具体的に言うと、語り手の発言が2018年6月20日で、彼女の発言が2018年6月19日である場合など。2018年6月20日に発言している人から見ると2018年6月19日の発言は "now" なので "as it is now" になるわけである。

時制の一致ルールを適用するべきか否か迷ったら主節の時間と従位節の時間の違いを意識すれば答えを導き出せるかもしれない。

Clocks
Courtesy of Free Images - Pixabay

ここまで例文は「表現のための実践ロイヤル英文法」(綿貫陽、マーク・ピーターセン著)に頼ったが、同書の説明だけでは理解が難しい事例も多いのでさらに考察を続けよう。以下の3つの例文はすべて「ロイヤル」の演習本「表現のための実践ロイヤル英作文法 問題演習」(綿貫陽、マーク・ピーターセン著)に掲載されているもの。すべて文法的に正しい。

  • He told me he bought that car for $18,200.
  • He said that whoever arrives late should be fined twenty dollars.
  • If you were to hear him speak, you might think he's a rich man.

まず以下の例文を考察してみよう。

  • (4 a.) He told me he bought that car for $18,200.

これの直接話法は、

  • (4 a'.) He told me, "I bought this car for $18,200."

…である。これを間接話法にするなら従位節を過去完了にして、

  • (4 a''.) He told me he had bought that car for $18,200.

…とすべきであるのは誰でもわかるだろう。だが (4 a.) でも間違いではない。もちろん (4 a''.) でも構わない。もっと正確に言うと、どちらも意味はほとんど同じだ。なぜか? これを理解するために以下の例文を詳しく見よう。

  • (5 a.) He told me, "I loved her."
  • (5 b.) He told me he had loved her.
  • (5 c.) He told me he loved her.

直接話法の (5 a.) は「以前は彼女のことが好きだった」、つまり「今は違う」(彼女が既に亡くなっている / 嫌いになった)ことを暗にほのめかしている。「今は違う」ということを間接話法でほのめかすには時制の一致が起きる (5 b.) が適切である。(5 c.) は「今は違う」感じが伝わらないが、「今は違う」感じを出さずに済む便利な表現であるとも言える。

上記の (5 a.), (5 b.), (5 c.) を下記の (6 a.), (6 b.), (6 c.) と比較してみよう。

  • (6 a.) He told me, "I bought this car for $18,200."
  • (6 b.) He told me he had bought that car for $18,200.
  • (6 c.) He told me he bought that car for $18,200.

「彼は自動車を18,200ドルで購入した」事実は1秒後も1万年後も変化しない。この点が上記の (5 a.), (5 b.), (5 c.) との決定的な違いである。ゆえに (6 b.) と (6 c.) は意味がほとんど同じであり、(6 c.) は正しい「時制の一致の例外」として認められるわけだ。

この事例は以下に引用する「表現のための実践ロイヤル英文法」の解説で説明可能かもしれない。

過去→過去完了

改まった言い方では、原則として過去は過去完了にするが、口語では、意味が混乱しなければ過去のままでもよい。

表現のための実践ロイヤル英文法

次の例文。

  • He said that whoever arrives late should be fined twenty dollars.

これも時制の一致の例外として認められる。これを、直接話法、時制の一致、時制の一致の例外、の順に並べてみる。

  • (7 a.) He said, "Whoever arrives late should be fined twenty dollars."
  • (7 b.) He said that whoever arrived late should be fined twenty dollars.
  • (7 c.) He said that whoever arrives late should be fined twenty dollars.

まず従位節の中にある "should" に関して言うと、これは広い意味での仮定法であると解釈できる。つまり例文は、主節が直説法であり従位節が仮定法である、という構造になっている。よく知られているように、従位節の仮定法は主節側の時制の一致の法則に支配されない。よって "should" は直接話法でも間接話法でも変わらない。

残された問題は "arrives" なのか "arrived" なのか、である。換言すると、動詞は原形のままなのか、それとも過去形にするのか?

(例文の "arrives" は原形ではなくいわゆる「三単現」だが、話をわかりやすくするためにここでは広い意味で動詞の原形と考える)。

動詞の原形には過去、現在、未来を問わない感覚がある。例文で彼が主張しているのは、「いついかなるときであろうと遅れた者は罰金を払うべきである」ということだ。この感覚を強く出すには (7 b.) よりも (7 c.) のほうが優れている。"arrived" よりも "arrives" のほうがふさわしい。

最後に、仮定法に関係する例文。

  • If you were to hear him speak, you might think he's a rich man.

時制の一致、時制の一致の例外、の順に並べてみよう。アスタリスクを付けた (8 a.) は文法的に間違いかもしれない。

  • (8 a.) *If you were to hear him speak, you might think he were a rich man.
  • (8 b.) If you were to hear him speak, you might think he's a rich man.

なぜ (8 a.) ではなく (8 b.) が適切なのか? 以下の「ロイヤル」の解説で理解可能かもしれない。

仮定法の動詞の後にくる従位節中の動詞の時制を決めるときは、話し手が話している現在から見た時をそのまま表し、前の仮定法とは無関係に決める。

I wish I had the information that you need.
「君が(ある情報を)必要としている」のは現在のことなので、need は現在形のままにしておく。
If I had known that you were ill, I would have gone to see you.
「君が病気である」というのは、話している現在から見れば、過去のある時点での状態なので、直説法の過去形にすればよく、過去完了に一致させる必要はない。

表現のための実践ロイヤル英文法

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