ArtSaltのサイドストーリー

音楽、フリーウェア、WEBサービス、食べものなどに関する日記。トラックバック、コメント歓迎。

Watkins at Large

Doug Watkins at Large (Transition)
recorded in Cambridge or Boston, 1956

Tom Wilson (producer) - Wikipedia, the free encyclopediaに、トム・ウィルソン (Tom Wilson) という音楽プロデューサーの経歴が書かれている。そこにあるように、Bob Dylan, Frank Zappa, Simon and Garfunkel 等をプロデュースしたことで知られている。でも、ジャズ・ファンの間では、ウィルソンはTransitionという、短命に終わったけれど、偉大なるレーベルをつくった人物として認知されている。

トム・ウィルソンは黒人だった。黒人が音楽プロデューサーをやり、しかもレーベルまで立ち上げてしまうのは当時(1950年代)としては珍しかった。Transitionが数年でつぶれてしまった背景にはそんな事情もあったかもしれない。
(Transitionを店じまいしたウィルソンはColumbiaというメジャーに移籍し、サイモンとガーファンクルなどをプロデュースする売れっ子になる)

Transition時代のトム・ウィルソンのことにふれた前述のWikipediaの記述には Sun Ra, Cecil Taylor の名前しか出てこない。ジャズのことをあまり知らない人たちが書いたのだろう。

Watkins at Large の写真

ダグ・ワトキンズ (Doug Watkins) というデトロイト出身のベース奏者が生前に残したレコードのうちの1枚がこのTransitionレーベルにある。
それが Watkins at Large.
(ワトキンズは27歳のとき交通事故で死んだので、自己名義の作品は2枚しかない)
これを聴けば、Transitionレーベルの作品がPrestigeとか Blue Note とかSavoyといった有名どころと比べても、なんら劣るところはない、ということがよくわかる。

ベースのギシッギシッという音

で、例によって、音楽以前に音の話。

  • 1956年の吹き込みだから当然モノラル。
  • 中低音重視の録音。よって、バスドラとベースの音が殺人的な大音量となってスピーカーから飛び出てくる。
  • 高音の伸びが不足。よって、シンバルの音が明瞭ではない。

ベースが「ギシッギシッ」という音を出すところがいい。このレコードの名義がベーシストだから、あえてこういうふうに録音したっていう面もあると思う。
でも、ルディー・バン・ゲルダー (Rudy Van Gelder) だったら、こういう音は録れなかったろう。「ギシッギシッ」じゃなくて「ボンボン」になってしまう。「ギシッギシッ」はTransitionだから出せた音。

トップシンバルの音が奥のほうに引っ込んでしまうのは目をつぶる。それを補うにはじゅうぶんすぎる豊かな中低音があるから。

でもって、音楽の話を書こうと思ったけど、「音が良けりゃ、音楽なんてどうでもいいじゃん♪」というのが私の信条なので、少しはしょる。

ブルースが良い

全曲すばらしいんだけど、あえて選べば、A面の1曲目と2曲目 ("Phil T. McNasty's Blues", "More of the Same") が良い。いずれもブルース。
パーソネルを見ると、チャーリー・パーカーのレギュラー・ピアニストだったデューク・ジョーダン (Duke Jordan) は別格として、他はデトロイト出身の若いジャズメンが多い。プロとして音楽をやっていく意気込みが伝わってくる演奏。

  • デューク・ジョーダンだけはこの時点で既に30代。彼のピアノがまた素晴らしいんだわ。この手のセッションで伴奏をやらせたら、この人ほどのハマリ役はいない。A面1曲目のイントロなんて、凡百ピアニストには絶対真似できまい。
  • それからギターのケニー・バレル (Kenny Burrell) 。ちょっと怠惰な感じのゆっくりとしたブルースを弾くときのバレルが個人的にはいちばん好きで、そういうときのバレルをたっぷり堪能できる盤なのだ、これは。
  • ふだんは堅実かつ実直なドラムをたたくアート・テイラー (Art Taylor) が、なぜかここではバスドラを多用して濃密かつ重厚なリズムをつくりだすことに貢献。テイラーはやればできる子。
  • フロントはドナルド・バード (Donald Byrd) とハンク・モブレー (Hank Mobley) 。「若いって、いいなあ」と思わせる吹奏。
Watkins at Large の写真

"Elusive Disc" のサイトに引用されていたトム・ウィルソンの発言を孫引きしとく。
(文中の "pretention" はおそらく "pretension" の誤り)

According to Tom Wilson who produced the session and wrote the notes, " Watkins at Large is one of those rare sessions where everyone falls immediately into the groove from the opening minute. The result of such a 'hang-upless' date is freely constructed, intensely personal jazz without pretention or frills."

DOUG WATKINS/WATKINS AT LARGE 200g MONO LP - elusivedisc
Google
WWW ArtSaltのサイドストーリー
Web site (optional)
Comment - Need to type CAPTCHA, an image of distorted Japanese Hiragana or Katakana afterward.
Password - Not allowed to modify your comment later if password not entered.
On secret mode?
 

http://art2006salt.blog60.fc2.com/tb.php/613-95b827a9

このブログについて

最近のエントリ

カテゴリー
あわせて読みたいブログ

あわせて読みたい

最近のコメント
Internet Explorer
よりも便利です

Opera 9 - Always secure with Opera Firefoxをダウンロード!!

相互リンク