ArtSaltのサイドストーリー

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定冠詞 the を使う理由、使わない理由

定冠詞 the を使いたければ使ってもいいけど、その場合はちゃんと定義しろ

マーク・ピーターセンの「日本人の英語」(岩波新書)に「名詞に冠詞がつくのではない。冠詞に名詞がつくのだ」という名言がある。彼によれば、日本人が書く英語の論文には不要な定冠詞 the がやたらと目立つんだとか。たとえば下の例文なんかがそれ。

Before visiting the United States, you should be sure to brush up on the English conversation.

こう言われるとネイティブは、"English conversation" がどういうものであるか、どこかで定義されているんだろうな、と思ってしまうんだそうだ。その定義づけが見当たらないと彼らは不安になり、いらだつ。逆に言うと、何らかの定義づけがなされていれば上記例文の "the English conversaiton" は不自然ではない。

下は the が必須になる事例。

We have the option to renew the contract at the end of the year.
  • option は直後の to 以下で定義づけされているから the の使用が許される。この場合は "an option" でもOK。意味は変わるけどね。
  • contract は話題になっている contract と想定される。これについては後述。
  • end は直後の of 以下で定義づけされているから the をともなう。この文脈では "an end" も "ends" も普通ありえない。
  • この文脈で "the year" と言ったら普通は「今年」のことに決まってる。これについては後述。

つまり名詞 hoge の直前に定冠詞 the を置くには、「どこの hoge か」「何の hoge か」が宣言されていなければならない。

言わずと知れた…

定義づけや宣言が暗になされている事例もある。上記例文の "the contract", "the year" がそれ。明に宣言するにせよ、暗に宣言するにせよ、the を使うんなら、「どういう contract, year なのか」という問いに応えられないといけない。

I happened to run into my colleague at the grocery.
「どこの grocery だよ」
「うちの近所で grocery と言ったら消防署前に1軒しかないんだから、言わずと知れたことだ」
The United States of America, the Queen
これらの名詞になぜ定冠詞が必要か。"The United States of America" は固有名詞だから? 違う。the を加えることによって「言わずと知れた states, queen に決まってるじゃないか」と開きなおれるんだ。
the earth, the sun
「1個しか存在しないから the をつけるんだよ」は言うまでもなく俗説。the をつけるからその唯一性が生まれるのだ。これについては本エントリの最後に詳述する。
THE TIMES, TIME
新聞の "THE TIMES"。雑誌の "TIME"。the の有無は何に由来するか。前者には「言わずと知れた times である」という新聞社 Times Newspapers Ltd. の自信にあふれた無言の意思表明が感じられる。後者の雑誌出版社にはそこまでの覚悟(?)がない。新聞社と雑誌出版社の考え(あるいは社会的役割)の違いを反映しているのかもしれない。

play soccer, play the piano

The boy plays soccer and baseball every weekend.
soccerbaseball は不可算名詞だから無冠詞が許されるのは当然。
He likes playing the piano and guitar.
pianoguitar は可算名詞。定冠詞 the があるから「play するのはドラムでもボントロでもなく、ピアノとギターなんだ」という感触がある。
He likes playing piano and guitar.
可算名詞をあえて単数形無冠詞表現にする。the がないので「ドラムでもボントロでもない」という感触は失せている。
可算名詞の単数形無冠詞表現について。
I like dog と言ったら日英関係が悪化する

抜き出す、絞り込む

あまたある英語教育ブログはそのほとんどが読む価値のないゴミ知識の集積所と化しているけれど、日向清人の「ビジネス英語雑記帳」は数少ない例外。そこに興味深い例があった。

Eggs which are carefully packed will not break.

which 以下で定義づけされてるのに eggs の直前に the がない。この表現には理由がある。

which I packed yesterday with meticulous care(きのう細心の注意を払いながら包装した)といった限定句と異なり、which are carefully packedというのは、一般的な包装のしかたを言っているだけで、ある区分に属するものを抜き出して、絞り込んでいる筋合いのものではありません。また、この例はうしろの限定句をCarefully packed eggs will not break.というふうに、carefullyというありきたりの区分を示す形容詞に変えることができます。こうしたことで、定冠詞がつかないとされるのです。

ビジネス英語雑記帳(別宅): 英語の定冠詞の使い方:使いこなすための四つの重要パターン】(bold指定は引用者)

日向は明言してないけど、"The eggs which are carefully packed will not break." と言ってもいい。だけど、それは「ほー、大切に包装されない卵もあるわけだな。そういうことですか」という雰囲気になる。

1つに決まる

定冠詞 the は名詞とだけ組み合わさるわけではない。形容詞や副詞の最上級と組み合わせも見られる。たとえば "He was the fastest of the three athletes." のような。

NHK教育テレビで放映されていたスイーツ向けの番組「ハートで感じる英会話」の講師として知られる大西泰斗の唯一の名著「英文法をこわす」(NHK出版)によれば、the の意味は「1つに決まる」である。

He was the fastest of the three athletes.
3人の中の「1つに決まる」。
They are the tallest buildings in New York.
ニューヨークで1番目に高い建築物、2番目に高い建築物、3番目に高い建築物…があって、そのグループ全体が「1つに決まる」。
THE TIMES
「1つに決まる」という重圧に耐えられるからこそ、新聞の名前が THE TIMES になる。
the truth
「1つに決まる」→「言わずと知れた唯一のもの」
"the truth" には宗教的な意味が感じられる。大文字の "the Truth" にはなおさら。
The Japanese are really bad at English conversation, you know.
「1つに決まる」→「多様性と例外を省みない」
アメリカ人が "the Japanese" と言うとき、「日本人というのはご想像のとおり、ああいう人たちだよ」という暗黙の固定した共通理解を言外にほのめかすことがある。

2009年01月16日追記

不定冠詞 an, a に関して書いた。

今年の流行語大賞は I am just an Obama.
an, a複数の中から任意の1個を抜き出す冠詞である。複数の何かが存在し、その中の1個に焦点が当たっている感覚がある。the と違って「唯一性」という感覚はない。
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