ArtSaltのサイドストーリー

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過去形と現在完了形を比較すること自体が誤りである

完了形の文章が今日の形に決まるまでの歴史

英語史の話。ときどき考える。なぜイギリス人は完了形の文章に have という動詞を選んだんだろ。他の動詞(be, get など)でもよさそうなのに。

正確に言うと、過去には have のかわりに be が完了形で使われる事例もあった。概説書にはよく以下のような例文が掲載されている。

  1. He has heard the shocking news.
  2. He has the shocking news heard.
  3. He is gone away.

上3つの文章はいずれも「完了」を表現しうる。結果的に#1の形だけが正しい(?)完了形として残ったわけだけど。

#2の形は動詞の過去分詞の位置が今日の文法とは異なる。この形はいわゆる「使役」の形に置き換わった。ってゆーか大昔のイギリス人は「完了」と「使役」を峻別しない包括的な表現を有していたとみるべきかな。

他動詞ではなく自動詞(go, come など)なら、be を使う#3の形が許された。今日でも他の印欧語(スラブ系とか)では他動詞も許されるらしいけど、詳細は不明。
この形があまり使われなくなっていったのは、受動態とまぎらわしいからかもしれない。ただしこの形は今日でも見かける。大衆音楽の歌詞には "Where is she gone?" のような文章はいくらでもある。be を使う完了形は決して過去の遺物ではないし、特殊な事例でもない。

ここで少し話を脱線

上記3つの例文を見ればわかるように、大昔のイギリス人は「使役」「受身」「完了」を厳密に区別していたわけではないようだ。動詞 be, have と一般動詞をどう組み合わせるか。動詞をどう屈折させるか。語順をどうするか。先人たちのこういう試行錯誤の痕跡と曖昧模糊とした肌触りは今日にいたるまで残っている、と私は思ってる。日本語の助動詞「れる」「られる」が「受身」「自発」「尊敬」「可能」を包括しているのと同じようなものかもね。

「分類」という行為が例外なく例外をつくり出すとしたら、その分類に一体全体どんな意味があるというんだろうねぇ

英語教育の専門家は「過去形」と「現在完了形」を比較して説明することに熱心だ。彼らがよく言う説明に「過去の出来事が現在まで続いていれば現在完了形を用いる」っていうのがある。

でも「過去の出来事が現在まで続いていても」完了形じゃなくて普通の過去形が用いられる事例はゴマンとある。彼らはこういうのを「例外」と称してとりつくろうのが好きだ。例外をつくり出す分類に平然としていられる神経をお持ちなら最初から分類などしないほうがよいと私は思う。

have は地味だけれど、力強い動詞

「過去の出来事が現在まで続いていれば現在完了形を用いる」なんていう法則など英語にはない。過去形と現在完了形の比較は「哺乳類とペンギン、どっちが好き?」と質問するのと同じぐらい不毛なんだけど、いちおうやっとく。

  • 距離感を得たいなら動詞を過去形にする。
  • 「今、ここ」にぐっと引きつけたいなら動詞を過去分詞にして have と組み合わせる。

説明はこれで終了。これだけでじゅうぶん。以下、例文。

  1. He heard the shocking news.
    いわゆる「過去形」。現在まで続いている出来事についてもこの表現は許されるけど、少し距離を置いて出来事を見つめている雰囲気がある。
  2. He has heard the shocking news.
    いわゆる「現在完了形」。過去の出来事を「いま、ここ」に引っぱってきて語っている。「引っぱってくる」ことを可能にするのが動詞 have の力。
    「彼は have する。"heard the shocking news" という出来事を」

一般的に「現在完了形」と称されている#2は普通の「現在形」と何ら変わりない。ようするに have の隣りに動詞の過去分詞をくっつけただけでしょ。過去の出来事を「いま、ここ」に have する。まぎらわしいから「完了形」なんていう用語は廃止したほうがいいかもね。

おまけ

「完了の have は動詞ではなく助動詞です」という文法書の記述は半分正しく半分間違い。言語を学ぶ人はその言語の歴史を知っておいたほうがいいと思います。

関連

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have を「使役の have」「完了の have」「助動詞としての have」「動詞としての have」…と分類するのは愚か。そんなことをやったら have の力強い意味を見失ってしまう。havehave なのだ。
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